不思議な薬屋さん現る1
思わず黙り込む五人だったが、軽く息を吐き、真っ先に沈黙を破ったのはヨウサだった。
「まずは、何の術にかかっているかを、はっきりさせるしかないんじゃないかしら? 原因がわからなければ、助けようがないじゃない?」
今回の事件には熱が入っているからなのか、ヨウサが冴えている。
「そうだね。リタさん、なにか術に思いたることはない?」
シンジの問いかけに、リタは表情を曇らせる。
「それが、よくわからないの……。城の魔術師は確かに何かをしたんだと思うけど、捕まった時に呪文を唱えた様子もないし、いつもの術を使った様子も、何か魔力が動いた気配もなくて……ただ……」
「ただ?」
思わず四人が身を乗り出すと、リタは奇妙なことを答えた。
「あの人……カードを投げてきたかな……。少し細長い長方形のカードを……」
「カード……?」
その言葉に四人は顔を見合わせた。
「御札だべか?」
シンの言葉に真っ先に答えたのはガイだ。
「いやあ〜……呪術においても御札だけでは術は発動しないよ〜。何かしらの呪文は必要だもの〜」
魔力を込めた札は、通常呪術で使われる一種の魔法アイテムだ。札にどんな念を込めたか、どんな呪文を書いたかで働きは変わるが、様々な効力を発揮する多様性があるアイテムだ。しかしガイの言う通り、御札で人を操るのだとしたら、何かしら呪文は必要だ。呪文がいらないのは、魔除けや身代わりの類など、種類が限られてくる。
「魔力の動く気配がなかったってのも気になるね。それにカードってなんだろう……?」
少女の仲間に何が起こったのか――たったこれだけの情報では、推測するのも難しい。しかも魔術を学んでいる彼らであっても、術の特定が難しい状況しか聞かされないのだ。これでは解決に向けて身動きできない。
思わず四人が口をつぐんだ時だった。
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