第14話:二つの十字架

 グランシティホテルの屋上には姫島さつきが悲しそうな目で戦いを眺めていた。二人が戦わねばならぬ世界に憂いていたのだ。どちらも平和を願っている。穏やかな日常を愛している。それなのにこうも掛け違う。

 全ては順番が間違っていたのだ。

 彼は間違った存在に出会ってしまった。

 怪異が恐ろしいものである、それを先に知っていればこうは成らなかった。

「大丈夫だよ、ひふみん。私と一緒に、行こう」

 彼女は彼に手を差し伸べる。二人なら距離は関係ない。彼はきっと握ってくれる。互いの手が重なればもっと遠くへ行ける。皆に『普通』を与えられる。

 そして、二人も『普通』の生活を送るのだ。

「私たちは、とても似ているから」

 多くの支えであった彼女もまた心の奥底では支えを欲していたのだ。自分に似た目をしている彼に出会って、とうとう我慢しきれなくなってしまった。

 弱い者同士、支え合う。それはとても尊いこと。

 それを人は家族と呼ぶのではないか、姫島さつきはそう思った。


     〇


「馬鹿な、何、やってんだよ羽佐間ァ!」

 いくら彼が全盛期とは程遠いとはいえ、一介の騎士に敗れるような存在ではない。黒木も分かっているのだ。あの騎士が、限界を超えたのだと。

 人間の限界を、吸血種、最強の眷属である羽佐間一二三を超えたのだと。

「……ふざけんな、あたし以外に負けてんじゃねえよ!」

 轟乙女にとっては信じ難い光景であった。養父以外に負けたことなどなかった。養父は強い、養父のように振舞おう。そう思ってこの地にやってきた。そして出会ったのだ。養父とは真逆のへなちょこの癖に、自分よりも遥かに強い男に。

 自負をへし折られたと同時に、同世代の彼に憧れを抱いてしまった。それを払拭するために努力しているのだ。払拭する前に負けられたら困る。

 何が困るかは、言葉に出来ないのだが。

「……ひ、ひふみさんが、ありえません。そんなの、いやです」

 先ほどまでスパコンをも上回っていた少女は、ただ一人の敗北によって性能の大半を逸してしまっていた。戸惑い、ありえないとつぶやき、何も集中できない。

「は、羽佐間特任少佐、指示を、現場が乱れ始めています!」

 彼女のマンパワーに頼っていた最善も崩壊の兆しを見せ始める。

 たった一人の敗北が、マリス・ステラを機能不全に陥れつつあった。


     〇


「だから言ったのに。ちゃんと血を吸って戦えってさ。吸血鬼が血を吸いたがらないなんて、おかしな話だよ。ヴァンヘルシングに比べればずっと弱いけど、それでもそれ以降では最強の敵だ。さあ、義兄さんはどう捌く?」

 戦いを遠くから見つめる白髪の少年。電波塔の上に立ち、漆黒のコートをはためかせながらしゃがみ込んでいた。結果はどうでもいい。

 勝とうが負けようがどうでもいい。義兄が死んでもそれは仕方がないことである。互いに相反するものをぶつけあった結果、言い訳の余地はない。

「おや、へえ、彼女が動くのか。ハハ、面白」

 少年はくすりと微笑んだ。

「相変わらずの女難。僕、義兄さんのそういうとこが好きなんだよね」

 そう言う少年の顔には見た目相応の笑みがあった。


     〇


 瓦礫に埋もれた羽佐間一二三は敗北を前に選択を迫られていた。

 まだ、あるのだ。最終手段が。すでにこの近辺には一般市民はいないはず。翡翠が其処で抜かることなどないだろう。ならば、近くにいるのは関係者であるはず。ならば、血を摂取しても許されるのではないか。

 勝つための手段。フレッシュな血さえ摂取出来れば――

 貫通してきたビルの奥からあの男の気配がする。剣が伸びる、非合理的であるがそれは間違いなくあった。今の彼なら漫画みたいに斬撃を飛ばすことすら出来るかもしれない。猶予はなかった。近くの、誰かを、人の気配を、掴めば。

(俺は、化け物、か)

 勝利のために、この都市を守るために。

(誰かが近づいてくる。俺は、やる、んだ)

 人の足音がする。今の一二三にとっては福音に等しい。

(俺、はァ)

 ギリ、歯噛みする彼の口の端から血が零れ落ちていた。一度だけ人の血を吸った経験がある。あの時、自分は彼を殺しかけた。親友の血を吸いつくしそうになった。そのおかげもあってあのヴァンヘルシングに勝つことが出来たのだが。

 それでも抗えなかったのは事実。

 フレッシュな血は麻薬を超える快感なのだと一二三の先生は言っていた。熟練の吸血鬼でも吸血量を誤ることは少なくないそうだ。

「ひふみ、君!」

「え?」

 近づいてきていたのは、蛇ノ目式。彼女の眼がいち早く騎士の変貌を知り、生命力で他者を判別する彼女ゆえ、勝てないことを察しここに来たのだろう。

 何のために、一瞬思案する一二三。彼女に戦闘能力はない。

 無いのに、この場に来た。

「私、の、血! お、美味しくないと思うけど、あんまり健康的じゃないから、でも、吸わなきゃ、勝てない!」

「な、んで?」

「わ、私たちはボランティア部の仲間だから。皆、同じこと、する! 絶対」

「……俺は、君を殺すかもしれない。抗えるか、自信がないんだ」

 だから牛乳で、輸血用パックで済ませてきた。

「大丈夫!」

「な、何で、言い切れるんだよ! 俺は現に――」

「貴方が千賀一二三だから! 私は知っている。貴方が苦しみながら、それでも弾いていたことを。貴方の苦しい音が、閉じていた私の心を切り開いた」

 必死に、全力疾走で来たのだろう。眼前の彼女の髪は荒れており、隙間から覗く眼はとても強い色を浮かべていた。

「貴方は、弱くて、でも、だからこそ、誰よりも強い。それが私の、憧れ」

 蛇ノ目式は力いっぱい襟元を引っ張りうなじをあらわにした。

「貴方は私のヒーローだから!」

 国光もそう。どうして彼らは自分なんて信じられるのだろうか。こんなにも意志が弱くて、優柔不断で、逃げてばかりの自分に。

 どうしてそんなに強い信頼を向けられるのか。

「……君は強いね」

「私はそれを貴方の音に貰ったの。だから――」

「君の強さ、分けてくれ」

 羽佐間一二三は人生で二度目の、吸血行為を行った。

「あっ」

 自制を、体に流れる膨大な快楽を征する。征さねば、彼女が死ぬ。仲間である。そして、かつての自分、あんな自分の音を彼女は好きだと言ってくれた。

 もう音楽には未練はないけれど、それでも報われた気がしたのだ。

(彼女と、君くらいだな。あんな音を、好きだって言ってくれたのは)

 自分は凡人である。結局、掲げる思想も主義主張も、誰かの受け売り。指針を失いたくないから、そうしているだけの空っぽ人間。

 でも、そんな自分でも信じてくれている人がいる。

 ならば演じてみよう。演じてやろうじゃないか。

 彼らのヒーローってやつを。

「蛇ノ目、くんか。吸血行為、度しがたいな、怪異、羽佐間一二三!」

 先ほどよりも巨大な十字、天からそれが降り注ぐ。凄まじい速度で、騎士クロスは怪異を滅ぼさんと剣と化して、地面に突き立った。

 衝撃が、コンコルド・シティを揺らした。

「また、救えなかった。私はいつも、遅い」

 クロスは涙を浮かべていた。敵であれ怪異の手から市民を守れなかったのだ。怪異交じりとはいえか弱い彼女を、吸血鬼の魔手から助けられなかった。

「もっと強さがいる。もっと、もっと」

「私には、貴方たちの言葉は、響かない。嘘つきだから」

「……ん?」

 粉塵の奥、羽佐間一二三が蛇ノ目式を抱きかかえていた。彼女の意識は明瞭である。疲労はあるのだろうが、生きている。

「貴方たちは怪異が嫌いなだけ。奪われた相手を拡大解釈して、全部悪いと決めつけているだけ。怪異にだって、人にだって、悪者は、いる。わ、私はどっちにも虐められたから、ふひひ、そして、どっちにも良くしてもらったから、種族で分けない。その人自身を見る。貴方は、ちゃんと見た? この都市の皆を」

「……引きこもりの生徒である君が、皆と来たか」

「くひ、ぼ、ボランティア部登校はしてたから。それに、友達も、出来た」

 彼女の脳裏に浮かぶのはイズミオンで一行を連れ回した二人の女の子。どっちも普通の女の子だった。生まれた場所が、境遇が、ほんの少しだけ違うだけの。

 その内の一人は、あそこにいる。

「わ、私は、ここ、結構好き」

「ふっ、所詮は怪異交じり、か。弱き者の立場など、解せぬか」

「貴方は強い人だけど、ね」

「……御託を――」

「――並べているのはどっちかな?」

 騎士の剣を受け止めているのは、明らかに先ほどまでよりも力強い、生命力に満ち溢れた羽佐間一二三であった。

「ありがとう、蛇ノ目。必ず、勝つよ」

「うん」

 足元から生える骨が騎士に襲い掛かり、咄嗟にクロスは距離を取る。技の鋭さも先ほどまでの比ではない。これが万全の、本当の羽佐間一二三。

 ダブルという特異性を持つ、吸血種最強の眷属。

「話してみないと分からない。同じ地平に立たないと見えないものもある。彼女の願いじゃない。俺自身が、そう思ったんだ。俺の心が、そう言っている!」

 羽佐間一二三は眼を見開いた。彼女の願いだからじゃない。自分がそう思うから、この都市を守るのだと、今は心の底からそう思えた。

 もう一人の、自分の音を好きだと言ってくれた彼女のおかげで。

「……何だ、その眼は?」

「……?」

 自分で自分の眼を見ることは出来ない。ゆえに一二三は自分の変化に気づけなかった。クロスが己の眼の変化に気づいていないことと同じように。

 瞳の朱が網膜全てを包み、中心には金色の十字架が浮かぶ。

「神は――」

「俺がそう思うから、俺がそうするだけだ!」

 羽佐間一二三は突貫する。先ほどよりは速い、速いがクロスに見切れないほどではなかった。突進に合わせて剣を振る。

「――私に剣たれとおっしゃったのだ!」

 完全なタイミングであった。だが、一二三もまた反応する。先ほどまでとは比較にならない超反応で、優しいタッチで剣に触れた。そして、チョンと押す。

 それだけで剣の軌道が、逸れた。

「なっ!?」

「俺にも見えるぞ、お前の動きが!」

 一二三の蹴りがクロスの腹を穿つ。ビルの根元まで吹き飛び、体勢を立て直しながら跳躍、外壁にてひと呼吸置く。明らかに、眼が違う。

 出力はおそらく、彼自身の本領なのだろう。決して届かないものではない。

「逃がさない!」

「羽佐間ァ!」

 重力を無視して、二人の怪物は踊るように戦いながら外壁を垂直に、まるで地面かのように駆け上がっていく。先ほどまでは一方的であった。それは彼に自らの出力を見切るほどの眼が無かったことが大きかった。

 万全の彼であっても今のクロスならば出力で勝る。ならば、勝てるはずだったのだ。今の化学反応によって覚醒した己であれば。

 この眼が、蛇ノ眼と吸血種の血が混じり合った眼が、その出力差を埋めて余りある戦闘力を彼に付与していた。足りていなかった反応速度、物足りなかった要素を長所にしたのだ。見切られている。見切り、いなされている。

 しかも、戦っていく内に見えてくる、羽佐間一二三自身の特性。独特の間合いで、リズムで、緩急で相手を翻弄してくるのだ。

 音の取り方が絶妙で、音の外し方が玄人のそれ。

「ふ、しゅ!」

 戦いにはその人自身の道が滲んでくるもの。彼は戦闘のプロではないが、明らかに人とは違う何かがあった。道を極めんとした者のみに宿る、圧のようなもの。

 それは決して騎士に劣るものではない。

「私は、負けんッ!」

「悪いけど、俺だってそうさ!」

 受け方が変わった。見えているから正面から受けてくれない。斜めに、衝撃を逃がしながら、上手く受けてくるのだ。

 そうなってくると骨で覆われた彼が突然、堅牢なる要塞に見えてくる。

 切れない。傷つけられない。消耗させられない。

 防御を固めた吸血鬼の強さ、騎士クロスは顔を歪める。


     〇


 白髪の少年は少しだけ嬉しそうにその光景を眺めていた。

 今まで呪いのように彼を縛っていた何かが、少しだけ解れた気がしたから。それを成したのが蛇ノ目、蛇姫の系譜であることは少し気に喰わないが。

 それでも少年は嬉しく思う。

「義姉さん。きっと義兄さんはもう大丈夫だ。周りに恵まれているのが、義姉さんとの違いかな? ふふ、もちろん僕も含めてね。こんなに優しい吸血鬼、世界広しと言えども僕くらいのものさ。嗚呼、僕って優しいな」

 自分と同じ戦い方をする白き吸血種、最強の眷属、己と義姉さん共通の繋がり。この世界に残った彼女の生きた証。自分の、証でもある。

「固めりゃ吸血鬼なんて隙一つねえんだ。ハッハ、なら固めるだろ。そうしない馬鹿の気持ちが僕らにゃ分からない。勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあ」

 己が眷属の雄姿を見て、彼には絶対見せない笑みを少年は浮かべていた。


     〇


 勝利に徹した吸血鬼の強さ。

 凄まじい再生力、無尽蔵の体力、全種族の中でもトップクラスの身体能力、挙げればキリがないほど吸血鬼とは優れた種である。

 だが、それゆえに隙はあったのだ。

 攻撃に対する鈍感さ。再生力に自信があるからこそ、種として絶対の自信があるからこそ、彼らは守らない、防がない。そこが突破口、であったはず。

 しかし、この男には吸血鬼に対するセオリーが通じない。

「オオッ!」

 全身を覆う白き骨。関節部には隙間はあるが、そこを狙えば待ってましたとばかりに返しの攻撃が来る。少しずらすだけで受けが成立するのも厄介。

 これがコンコルドの死神である。

 気圧され、気づけばクロスは外壁を登り切り、自らの主が待つ屋上に戻ってきてしまっていた。いや、戻らされたのだ。相手の圧力によって。

 手足のように操る手足以外の骨も厄介極まる。特に尻尾は使い慣れているのか、あれ一つで上手く捌いてくるのだ。

 彼もまた百戦錬磨、この都市を守り続けてきた死神ゆえに。

「……ひふみん」

「姫島、お前を逃がさない」

「あはは、それ、告白?」

「ああ、お前はこの都市に残って、この都市を好きになってもらうぞ! 俺は、お前を諦めない。お前も諦めないんだろ? だから、それで御相子だ!」

「……あー、蛇ノ目さんかぁ。彼女、とても強いよね。だから惹かれる。わかるよ、でも、それはただ眼を焼かれただけ。彼女と貴方は、支え合えない」

「何故?」

「貴方はいずれ、彼女に依存するから。それが私たち」

「はは、でも、それ、たぶん俺たちが一緒にいても同じだと思うぜ。依存するか、共依存するか、たいして変わらないさ。だけど、俺、変わりたいんだ」

 真っ直ぐな眼である。彼女の眼と同じ。

「影響受け易過ぎ」

「自分が影響を与える存在になれるなら、俺は迷わず音楽家になっているよ」

「……ちぇ」

 とても真っ直ぐで、もう彼は迷わない。少なくとも今は。

「聖者様」

「勝てないなら、白旗、上げよっか?」

「……御冗談を。私は、負けません!」

 騎士クロスは初心を思い出す。あの日受けた絶望を、あの日与えられた希望を、忘れ難き日に彼は二つの対極を得た。陰陽交わり、今の己がある。

「ここの教師は悪くなかった。今更だが、一応言っておこう。だが、私は多くの嘆きを見てきた。幼き日から、いつの世も希望より絶望の方が、喜劇より悲劇の方が、多いのだ。だからこそ、私は立ち止まる気はない」

「……そうか」

 クロスは胸の前で十字を切り、剣を担ぐ。

 創世教会が誇る騎士団、そこに所属する者であればそのルーティンの意味、嫌というほどわかるだろう。祈りを捧げ、自らの限界を超えて放つ至高の剣。

「グラン・セイバー、我が全身全霊、とくと味わえ!」

 彼の全身から生命力が溢れ出てくる。そして、その全てが剣に集った。極大の圧が一二三を気圧す。鳥肌が止まらない。眼のおかげで優勢であったが、そもそも万全であっても出力はあちらが上なのだ。力勝負は、分が悪い。それでも――

「……受けて立つとも。ここで逃げちゃ、コンコルドの死神の名が廃る。俺も全部出し切る。素面で打つのは、初めてだが、やってみせる!」

 今の己ならきっとやれる。

 羽佐間一二三は懐から銀のロザリオを取り出す。そして、力いっぱいそれを握りしめ、自らの血が滲ませ、ロザリオを覆う封印を溶かす。

 血によって解放される、吸血鬼最大の弱点。太陽は苦手程度であるが、純度の高い銀は吸血鬼にとって致命的な傷を与える。触れた箇所が焼け、その部分は再生力が凄まじく落ちるのだ。銀の剣でも刺されば一大事であろう。

 案の定、一二三は顔を歪めていた。失血は広がる。

「愛しのマリー、君に我が覚悟を捧げる!」

 白き骨が、失血を抑え込もうと銀のロザリオを握る手の四方を十字に囲む。白き十字架の中では噴き出る血が蠢き、破裂しそうなほどの圧力が間に、溜まる。

「……無理やりだな、羽佐間一二三」

「俺は不器用なんでね、こうでもしなきゃ、血なんて操れないんだ!」

 白き外装を纏いし紅き十字架。

 それが羽佐間一二三の切り札、決死の一撃である。

「征くぞ、クリス・クロス!」

「その名は捨てた。私は、ただのクロスだ。いや、クロス・ハートか。ああ、やろうか。互いに譲れぬ主張がある。私は譲る気はないよ」

「俺もさ。ここは、それをぶつけ合える場所でもある、から」

 一瞬の静寂、至高の剣を担ぐクロスと決死の十字架を掴む一二三。

「神よ、我に力を! グラン・セイバァァァァアア!」

「君よ、俺に勇気を! アヴェ・マリアッ!」

 二つの十字架が、コンコルド・シティの空を焼いた。

 全員がその咆哮を見て、聞いた。

 天が裂けるほどの相反する主義主張を。ただの争乱ではないのだ。これはこの世界が抱える最大の問題についての序章であり、問題提起である。

 別たれるべきか、融和すべきか、すでに互いは互いを知ってしまった。今のままではありえない。必ず分岐点は来る。選択すべき時は来る。

 それは決して遠くない明日の話。

 皆は見た。狂おしいほどの魂の叫びを。双方に共感が出来る。

 双方に理がある。だから、難しい。とても難しい。

 それでもいつか、選び取る日は、来るのだ。

 その時、選択するためにも知らなければならない。お互いを。そのための場所こそがコンコルド・シティ。もっとぶつけ合おう。もっと語り合おう。ここはそれが許される場所だから。そして願わくば、手を繋ごう。

 いつか日の当たる場所で、一緒に、それが『普通』になることを祈る。

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