新たな決意とあやふやな気持ち
ネットで酷評を言われるのにはそれなりに慣れてるつもりだ。なんせ、一年間もコメントと戦ってきたから。それでもリアルで言われるのは初めてだったので胸に突き刺さるものがある。松野は当然正体が俺とは知らないし、ちょっとした会話のネタだったんだろう。
「でもよー、話の作りは結構上手いんだよなー。キャラデザさえ出来たらいいもんになると思うんだよねー。」
「へ、へぇー。」
落としてあげるのを無意識のうちにやっているのだから、将来は女たらしにでもなるのだろうか?松野の期待に添えるようにもう少し頑張らなければ、そう心に強く誓った。
「へい、お待ち!チャーシューメン二つにダブルチャーシューメン大盛り一つ。」
そこからはラーメンを食べそのまま解散になった。
家に帰り、澄香から貰った絵を眺めた。
「しかしまあ、あいつ絵上手いな。」
最近はデジタル絵が主流の中でアナログの絵を見る機会が減ったのでなかなか新鮮な感じだ。
「今度聞いてみるか、なんでこんな絵が上手いか。」
そんな感じで特にやることも無く寝に入った。
チリリリリリン
目覚まし時計のアラームで目を覚ます。夏休みに入って三日目、気温も八月の真っ只中よりは涼しく心地よい風が吹いている。今日は昨日投稿した分の反応などの確認と澄香に言われた頭に浮かび上がってきたものをメモ帳に詳しく書く。
「さて、早速昨日の分の反応を見ていきますか。」
慣れた手つきでマウスを動かしてそのサイトにログインする。そして自分のページに入りダッシュボードを確認する。
「そういえば、今日はここに投稿し始めてからちょうど一年か。俺にしては頑張ったな。」
最初は一日中一桁PVだったのが今ではそれなりに増え一日多い時で100PV以上、大体は70から90PVとまあまあ成長した。感想は最初から一貫してキャラのことが多いのだが。
「まあいつもと変わんないよな。」
そう思いながら見ていると、一年間おめでとうございます。これからも頑張ってください。とコメントがあった。
「この人は、いつも感想くれる人だ。一年前からずっと見ていてくれたのか。」
涙が出そうになった。それ以上に一年間もこの作品を見てくれたことに感謝した。
ピロン
携帯がなった。
「今日もそっち行って良い?」
暇なのだろうか。
「いいけど、今日は京都イオンに映画見に行くんだがそれでもいいか?」
「大丈夫!じゃあ十二時半ぐらいにそっち行くから。」
今日は俺が好きが刑事ドラマの続編の映画を観る予定だった。
「あの刑事ドラマの続編の映画だけどいいか?」
「いいよいいよ、私もそれ見てたから。」
なんとここに仲間がいたとは。
「おっけー、遅れんなよ。」
「大丈夫大丈夫。」
京都イオン、そこは京都駅の直ぐ前という立地の良さから連日人が入り乱れている。待ち合わせ場所は西洞院通りに面する大階段。待ち合わせの十分前には着いたのだが、澄香はもうそこにいた。昨日とはとって変わって、清楚系よりもおとなしいそんな感じのふく服装だった。
「あれ、もう着いてたの待った?」
「遅い、こんなにも可愛い女子を待たせて!」
「待たせてって、まだ十分前だよな?」
「嘘、私も今来たとこ。」
ニコッと笑って返してきた。その瞬間ドキッと胸が高鳴る。
「とりあえず、チケット買いに行くぞ。」
「りょーかい!」
胸の高鳴りを抑えたまま澄香を先導する。
シアターとチケット売り場は五階にある。
「今は十二時半だから一時十五分のやつでいいか?」
「うん大丈夫!」
「チケットの値段は、高校生だから千円か。」
するとすっと澄香が指を差した。
「これ、二人分で千五百円だよ?」
「ああ、これはカップル割だよ。ちょっと安くなるけど、ペアシートになるんだ。」
「ダメなの?今の私たちを周りの人が見たらどっからどう見てもカップルにしか見えないけど?」
すっと周りを見渡す。
「わかったよ。」
「なになに、恥ずかしいの?」
「そんなんじゃないって。」
澄香といると調子か狂う。
邪念は捨てて、チケット購入のためお金を財布から出す。
「え、私も出すよ!」
「いいって五百円増えるぐらいあんま変わんないから。」
「ありがと。」
「後四十五分ぐらいか。澄香、昼食は食べて来たか?」
「ううん、まだ。」
「なら、下のフードコートで食べようか?」
「りょーかい!」
フードコートで時間を過ごし、公開の五分前には着席した。
ペアシートは意外と広く、すらり心地も良かった。
「そろそろだな。」
「うん。」
映画が始まったので携帯の電源を切ってそのまままっすぐ前を向いた。
映画が起承転結の転から結に場面が変わろうとした時ふと澄香の方を向いた。
澄香は泣いていた。僕はそれに釘付けになった。何故だかわからないのにその顔から目が離せなくなった。まだ出会ってから三日、お互いのことを全然知らないはずなのに、俺はなってしまったんだ。俺は澄香に恋をした。
「はぁー、面白かった!私めっちゃ泣いちゃった!」
「うん面白かったね。」
はっきりといて映画の内容をほぼ覚えていない。それと同時に何かを掴みかけた気がした。キャラ作りに置いて大事なものを。
「澄香、多分明日ぐらいに新しい話できると思うから。」
「わかった。できたら連絡してね。バイバーイ清澄!」
「また明日。」
家に帰ってすぐに取り掛かろう。このあやふやな気持ちと感覚を掴むために。
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