第14話 アイシャのぼうけん1
「ここは一体…?」
巨大な白露水晶の起動実験をしていると、私はこれまで見たことのない空間にたどり着きました。
あまりにも巨大な水晶なので、もしかしたら世界一周が可能なほどの距離でも運用可能かもしれないと思い、どこまで遠くに行けるか試していたのですが…
目の前に広がるのは壮大な神殿、こんな立派なもの地上のどこかにあったかしら?
「ようこそ、ほわほわオンラインの世界へ」
突然声がして驚き、思わずその場から飛びのきました。
今なんて…ほわほわ?…慌ててよく聞き取れなかった…
「私は女神ホワナ。あなたの名前を教えてください」
私の頭上から銀髪の女性がまばゆい光と共に降りてきました。
女神ですって!?でも、聞いたことがない名前ですね…
「私の名前はアイシャです。ホワナ…と言いましたね、失礼ですが私は貴女の存在を今まで知りませんでした。よろしければ貴女の担当領域を教えてもらえませんか?恥ずかしながらここがどこか私にはわからないのです」
「アイシャ、それがあなたの名前ですね、ここにたどり着く力を持つアイシャ…あなたにお願いがあります」
私の質問には答えず、ホワナは話を続けてきました。
「今、この世界は崩壊の危機を迎えようとしています。恐るべき力を持つ邪悪な存在が復活しようとしているのです」
「えっ!?そんな報告、私は誰からも聞いていません!初耳ですよ!?」
「私にはもう、彼らに抗う力は残されていません。どうか世界のため…力を貸してほしいのです」
「そ、それは当然、共通の問題として助力しますが…それより彼らということは邪悪な存在は複数なのですか!?もしかしてアレのことを…」
「アイシャ、どうか目覚めてもこのことを忘れないで…」
「私は寝ていませんよ!?それより報告はちゃんとして…あっ、こら!待ちなさい!どこへ行くのです!」
ホワナと名乗る女神はスーッと姿を消してしまいました。
問題をこちらに丸投げして消えるとはなんと失礼な態度でしょう。
「まったく…人の話をちゃんと聞いていないし…私が誰だかわかってないようだしきっと…わわわっ!?」
不満を口にしていると私の視界が突然、光に包まれました。
「よう、目が覚めたかい?もうすぐ街につくぜ」
いつの間にか私はゴトゴトと揺れる馬車の中にいました。
今の声は…前を見て、御者の男が私に向かって言ったのだとわかりました。
転移させられた!?い、いえそれより…
「私の精神体をなぜ認識できているのです!?」
「よく寝てたなぁ、それにしてもアンタ、見たところ冒険者かい?」
「寝ていませんし、違いますよ!?誰が冒険者ですか!失礼な!」
「おっ、見えてきたぜ『はじまりの街ポコタン』だ」
「何を指してはじまり等と言うのですか!意味がわかりません!それより私の質問にちゃんと答えなさい!!」
私の怒りなどまったく気にしていない様子で男は馬を進めました。
いくらたずねてもこの男はもう返事をしませんでした。
先ほどのホワナといいこの男といい何なのですか!
「う、うわぁ!魔物がなんでこんなところに!」
「魔物!?どこです!」
失礼な態度に腹をたてながら馬車の座席に座りなおそうとすると、男と馬の叫びが聞こえ、私は思わず反応して馬車を飛び降りました。
「何だ、ただのピンクラビットではないですか」
馬車を降りて魔物の姿を確認すると私はため息をつきました。
この男はこんな人の子供でも倒せるような魔物に驚いていたのですか?
なんとだらしない。
「数は3匹ですか…本来、私がこういうことに直接手助けをすることはありませんがまあいいでしょう、助けてあげます」
私はあたふたと慌てるだけの男にそう言うと、見た目はかわいらしいピンク色のウサギたちに向き合いました。
「少々過剰かもしれませんが<サウザンド・レイ>」
天から無数の光が圧倒的な破壊となって相手にふりそそ…ぎませんね?
「あっ、そういえば精神体のまま…おや?ちゃんと肉体がありますね」
私は自分が精神体のままだったことを忘れて魔法を使おうとしたため、失敗したと思ったのですが、よく見ると肉体がありました。
少々違和感を感じますが。
『アイシャ!まずは落ち着いて1匹ずつ倒しましょう!』
突然、私の視界に浮かび上がるようにホワナの姿が現れました。
「なっ!?ホワナ!一体どこに…何か小さくなってますね?」
ホワナは手のひらサイズの小さい姿で妖精のようになっていました。
まさか本当に力を失っているのですか?
それにその手に持った文字が書かれた看板は何なのです。
『まずはあなたの特技を教えてねっ☆』
ホワナがくるっと空中で一回転すると看板の文字が変わりました。
媚びるような愛くるしさにわざとらしさを感じます。
「ふざけているのですか?」
しかしホワナは何も言わず動きません。
私が特技を言うまでこのままのつもりですか。
「いいでしょう、どうやらあなたは何も知らない新参の女神のようなので教えてあげます」
私はこの無知で無礼な女神に慈悲をもって告げることにしました。
「私は光の女神アイシャ。特技は当然、光の魔法です」
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