月に行った少年

@musa9

第1話

月に行った少年


あるところに金には不自由しない男がいました。


ある時にはSNSで1億円をばら撒き

ある時には人気女優と付き合ったり

ある時には呟きで炎上させてみたりと、


若くして実業家ライフを満喫していましたが全てが急に虚しくなってしまいました。


このままで良いのだろうか、私の人生の目的はなんなんだ。


彼は思い悩み、全てを投げ捨て途方に暮れていました。


そんな時、ある村でピョンピョン跳び跳ねている少年を見つけました。


彼はその少年を暫く観察し、少年に話しかけて見ました。


少年、キミは一体全体何をしているんだ。


少年は言いました


僕は月に行くんだ!


彼はとっさに少年が見上げている月の方を見かけましたが、


イヤ無理だろう。ジャンプじゃ


と食い気味でツッコミを入れました。


でも少年はそんなことには聞く耳を持たず、ピョンピョン跳び跳ね続けるのでした。


彼はその夜、あの少年のことが気になってあまり眠れませんでした。


明日、あの少年がいた場所にもう一度行ってみよう、きっともう諦めているに違いないが。


翌日、彼は驚きました。なんと少年はまだピョンピョンと跳び跳ねているのです。

更に右手にはコッペパン、左手にはミルクの入ったグラスを持ちながら


なんと少年は食事の時間すら惜しんで跳び跳ね続けていたのです。


なぁ少年、本気でジャンプで月に行けると思っているのかい?


少年はキラキラとした純粋な瞳でこう言った。


もちろんだよ、だってお父さんは夜空に浮かぶお星サマに行ったってお母さんが言ってたもん!


彼は涙を浮かべその場を去った。


数年後、人気女優との破局と復縁を繰り返し、2度目の破局後、彼はふとあの少年を思い出した。


あの少年元気かな、あれから3年さすがに諦めたに違いない。ちょっと見に行ってみるか。


少年は続けていた。

彼はその光景を見てあまり驚かなかった。

なぜならあの時見た少年の曇りのない瞳は私が単身アメリカでミュージシャンとしてメジャーデビューした当時の私の瞳と同じだったからだ、私の目に狂いはなかった。


彼は少年にかけよった


少年、私を覚えているか?


おじさんなんて知らないよ、僕は月に行くことしか考えないことにしてるから


そうか、そうだ、それでいい。

私も単身アメリカで、、


少年、


なぁに?おじさん


その足に付けているスプリングみたいなものはなんだ


これは見ての通りスプリングだよ。

これでジャンプの距離を稼いでいるんだよ。

ひと月前から30センチも高く跳べるようになったよ。


そうか、それは良かったな、頑張れよ


彼は昔の自分と重ね、嬉しそうにセンチネルホテルに帰った。


って待てよ、ひと月前で30センチなら来月には60センチ一年経ったら4メートル近く飛ぶことになるじゃないか!?それはいかん、落下時の計算を少年は忘れている。怪我どころでは済まないぞ!


翌日彼は少年の元に向かった。


相変わらず少年の右手にはコッペパン、それに左手には焼きそばパン


焼きそばパン!?


彼は少年の喉の心配をしながらも少年に聞いた。


少年、仮に月まで届くようなことがあっても宇宙空間はどうするんだい?生身じゃ酸欠で息もできないし、人体に圧力がかかって血は沸騰し電子レンジでチンみたいになるんだぞ?太陽の放射線だって舐めちゃあかんぞ!


少年は少し考えてこう言った


そんなこと知らないよ!

おじさん詳しいんだね。

もっと教えてよ。


そうだぞ、昨日徹夜で調べたんだぞ


彼と少年は寝る間も惜しんで宇宙の神秘について語り明かした。


それから数年が過ぎ、彼と少年は世界ではじめて、民間有人宇宙旅行者になり月へ降り立った。


夢を諦めなかった少年、夢は叶うと信じた彼この2人の功績を讃え、月に行くことを巷では、ゾゾると云われるようになった。


おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月に行った少年 @musa9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る