始まりはバイトにいそしむ姿から。半額の総菜コーナーに行ったり、憂鬱そうに行き交う人々へ視線が向いたり。とても現実的なシーンが展開されます。そして、花屋で花を買う。この一瞬から、花屋との出会いから、シーンに色が咲き始めます。それは華やかではなく、穏やかに。夜の心境に合わせるように。鬱屈した現実からなにかのきっかけで夢の欠片を掴む。主人公の人生が切り替わっていくその一瞬をとらえた、見事な短編でした。