第37話 悪魔貴族出現ポイントの位置推定の原理とアルバイト
ラングは悪魔貴族の出現ポイントの推定に三角測量やGNSS(GPS)の測位原理を活用できると考えていた。
三角測量の原理を簡単に説明すると、三角形の2点間の距離とそれぞれの角度がわかれば、もう1つの点の位置がわかるというものである。
もしよければ皆さんも紙に線分(両端がきちんと止まっている直線)を書いてみてください。次にその両端(三角形の2つの点に相当)からそれぞれ適当に角度を決めて直線を書いてください。そうすると2つの直線は1点で交わります。
つまり相互に位置のわかっている2点から目標の向きがわかれば、その1点の位置が求まると言うことです。
GNSS(GPSはGNSSの一種でアメリカ軍が始めたシステムのことをいう)による測位原理を簡単化するために2次元平面上で考えます。
先ほどの紙とペンを再利用してください。
まず1つ点を描きます。これが知りたい場所の位置とします。
次に少し離れた位置に点を描きます。これを人工衛星1とします。
GNSSの原理は電波を使って距離を測るというものなので、この2点間の距離がわかります。しかし知りたい場所はわからないので、距離だけわかると人工衛星1を中心とした円周上のどこかにいる、ということになります。なので人工衛星1を中心とし、知りたい場所までを半径とした円を描きます。
円周上のどこかだと言われても困ります。
そこでもう1つ、人工衛星2の点を描きます。同様に円を描きます。
するとよほど特別な配置にしたのでなければ、2つの円は2点で交わっています。どちらかが知りたい場所となるわけですが当然、片方は間違いです。
そこでさらに人工衛星3を描き円も描きます。
どうでしょうか。これで3つの円が交わるのは1点だけとなります。
ここまで2次元平面上で考えましたが、3次元だと円は球面になります。
実際にGNSSでは人口衛星との距離を電波の到達時間で求めていて、時計の正確性に依存しています。時計の誤差0とはできないので、誤差を含めて推定する問題になるためにもう1つの人工衛星を必要としています。
これまでに悪魔貴族の確認されたポイントは悪魔貴族の出現ポイントから一定の距離範囲にあると考えられる。すぐ近くではすぐに出現ポイントが見つかってしまうし、あまりにも遠くまで移動するとも考えられない。
悪魔貴族が群れない性質にあることはどうやら正しそうなので、皆ぶつからないようにバラバラの方向へ散らばったと考えても良さそうだ。
とすると来た方向をある程度調べることができれば、出現ポイントをある程度の精度で絞り込めそうである。
ここまで1週間。ラングの引きこもり生活で本から読み取ってなんとか理解するに至った。
これを実践するとなれば次は情報収集である。悪魔貴族の出現情報をできるだけたくさん集めたい。
と考えていたところに扉をノックする音がした。
「ラングさん」
店の親父さんの声だった。
「部屋代は今日までの分でおしまいですよ。延泊するなら追加の支払いが必要です」
「ちょっと待って」
ラングはそう言って財布を取り出した。
「うぅんと」
残っていた路銀はあと3泊分ぐらいしかない。これでは旅に出ることもできない。
この地に留まって路銀を稼がないといけないようだ。
ラングは2泊分を払った。
「後2泊頼みます。それとなにか仕事のありそうなところを紹介してくれませんか」
宿の主人は宿代を受け取るときちんと確認してからいった。
「なにができるかによるね」
「普通のことならたいていのことはできると思うけれども」
「あいまいだな」
主人は腕組みした。
「そういえば、最近はちと物騒でな。ドワーフ王都との交易が止まっちまってるということだった。間にある山脈に相当な規模の盗賊団が潜んでいるという噂でな。それで傭兵を集めてる」
ラングはうなった。それは悪魔のせいだろう。そしてその悪魔たちはラングたちがすべて滅ぼしてしまった。
「それに参加するにはどうすればよいですか?」
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