第36話 英雄の集合、<御子>の邂逅
彼らがルーラルの町へ到着すると町はあちこちが損壊していた。
だが町に住む住人はある意味で普通に生活を送っていた。
「<悪魔騎士>は?」
アイゼンは門番に急いで聞いた。
門番はアイゼンを見ると目を丸くした。「アイゼン様ですか?」
「その通りだ。<悪魔騎士>は?」
「は、はい。<悪魔騎士>は町の総力を挙げて森へと駆逐しました。現在も森の境界線に主戦力が出ています」
「<悪魔騎士>を追い出した?」クッカは目を丸くした。
「幸いにもウィズダム様が我々にはいますし、人間種以外の傭兵も多数いましたので。エルフからの増援もありました」門番はクッカに気づいて説明した。
「なるほどのう」アイゼンはうなった。「確かにこの町は戦力面では恵まれていたかも知れぬな」
ビゴマは肩をすくめた。「なんだか感覚が麻痺してくるわね」
「だがいつまでも抑えておくことはできんだろう」
一行は逆の門を抜けて森へと向かった。
そちらの門は大きく損壊していた。こちらから<悪魔騎士>が来たのだろう。
森へ近づくと大勢が駐屯する臨時のキャンプ地があった。
アイゼンらに気づいて高齢の僧侶がやってきた。
「戻ってきてくれたか」ウィズダムだった。
「ウィズダム様」エリーヌは深々とお辞儀した。神殿関係者にとってウィズダムはことさら特別な存在なのだ。
「こちらは?」ウィズダムはエリーヌを見て尋ねた。
「見ての通りの未来予知の女神プレイフェの神官だ。ラングの友人、じゃな?」
アイゼンが説明する。最後の部分はクッカの方をチラリと見てぼかした。
「ドワーフ王都で働いていてな。<悪魔伯爵>との対決ではラングを支えてくれた。わしらもたいへん助けられた」
「素晴らしい才能が感じ取れる」
ウィズダムはエリーヌに言った。
「ウィズダムです。ラングの育ての親でもあります。ラングを支えてくれたとのこと、大変ありがたく思います」
「とんでもない!」エリーヌはあたふたとした。「私の方が助けてもらってばかりなんです。この王都はラングのおかげで疫病を乗り越えることができたんです。そうでなければ今頃は死の都となっていたかも知れません」
「うむ。ところでそのラングは?」
ウィズダムの問にアイゼンらは顔を見合わせた。
アイゼンが重々しく言う。「<悪魔伯爵>との戦闘の後、失踪した。行方がわからん」
ウィズダムは目を閉じた。「戦闘で亡くなったというのではないのだね? そうですか……。何か思うところがあったのだろうね。彼の人生は常に過酷だ。神の意向を疑うものではないが、あまりにも厳しいように思える」
「我々には計り知れぬほどの重責が奴にかかっていたことは事実だ。わしらで十分に守ってやれなかったことは謝罪せねばならぬ」アイゼンは頭を下げた。「まだこどもなのだよ。保護者代理失格じゃ。すまぬな、ウィズダム」
「いや、そんなことではないでしょう」
ウィズダムは首を振った。
「ラングは何か目的を持っていると思いますよ。だがそれは我々にはわからない。我々は英雄、御子などと言われても大勢に支えられてのことで、たかがしれていました。ラングは必ずしもそういった支援が得られたいたわけでもない。それに今ここにいないのであれば考えてもしようがない。
「皆さんには<悪魔騎士>討伐の支援をお願いします」
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