第35話 引きこもったラング
一方それまでのラングの様子はというと……。
エリーヌらの前から姿を消したラングは数日後、山脈を越えた先にある小さな町の宿屋の一室にいた。
想いを寄せるようになりつつあるエリーヌのこと、ずっとお世話になってきたクッカ、アイゼン、ビゴマらのこと、様々・いろいろと思うところはあった。だがどうしてもじっくりと1人で考える時間が必要だったのだ。
というとなんだか重々しいのだが、それは研究者のそれであって、ラングの様子を単純に言葉にすると次のようになる。
一日の大半を宿のベッドの上に寝転んで過ごす。そのうち半分の時間は本(地球の本)を読んでいる。
残る時間は寝転んだまま目をつぶって考え事をしているか、備え付けの書き物机に向かってなにやら書き出す。
それ以外の僅かな時間のうち、外へ出るのは食事のために宿の1階の食堂に降りていくぐらいだ。
引きこもりの一日といった方がいいだろう。自堕落な生活だ。
ラングは最初、ランダムに本をピックアップして読んでいたが、徐々に算数・数学と理科・物理に絞り込んでいた。特に図形に関わる部分を熱心に読み進んでいた。
書き出す内容も図形をいろいろと書いてみていた。
本来であれば科学に革新を起こすような人物、例えばダ・ビンチが生前、現代地球の教科書を入手したらどうなっていただろうか。彼が生涯をかかって導き出したこと+それ以後の科学進歩の内容が短時間で知識として得られることになる。
もちろんいろいろな可能性がある。かえってやる気を失ったりすることもあるかもしれない。だがもしもその知識を活かすとしたら?
なにしろその頭脳は天才のそれである。理解も早いだろうし、それらを応用したり、その先に科学を進展させることも期待できるのではないだろうか。
ラングはそれほどの天才ではないとしても、得られた知識を活かすのに十分に優れていた。むしろその方面に秀でていた。
そして彼には成し遂げたいことが一つあった。それは悪魔貴族の出現ポイントの発見だ。
今までのように出てきた悪魔貴族に対処していては常に後手に回る。これを続けていけばこちらのミスの度に後退し、いずれは破滅へとつながるだろう。逆転するためには相手の拠点を潰す必要があった。
もちろんこの世界で現状に危惧をいただくものはいずれも悪魔貴族の出現ポイントを見つけ出す必要性を理解していた。だが攻めてくる悪魔貴族への対応もある中、この世界の現有知識では実際に辿る・探索するなどして見つけ出す以外の方法を考える者はいなかった。
ラングは書物にある知識の力を借りて、近隣での悪魔貴族の出現情報を元に出現ポイントを算出・推定できないだろうかと考えていた。
彼が目をつけたのは三角測量やGPS(GNSS)測位の原理だった。
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微力ながらこれまでに4作品を書いています。実はこの作品がもっとも多く見ていただいている(PVが多い)のですが、なぜかこれだけ星を1つもいただけていないという……。ちょっと寂しいので、よろしければぜひ星を押してください。励みになります。よろしくお願いします。
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