第15話 悪魔騎士への奇襲、失敗
アイゼン、ビゴマ、ラングは急いで村へ向かった。悪魔騎士にはっきりと発見されたわけではないから、王都からの偵察兵ぐらいに思われているかも知れないが、既に2回の使者が戻っていない以上、それでも兵士が差し向けられることは間違いない。
アイゼンの作戦はそれとの遭遇は避け、一気に村へ接近、悪魔騎士へ奇襲をかけることだった。正面切った戦いでは非常に分が悪いという判断だ。
気配を察知した悪魔騎士は偵察にオーク鬼を4人差し向けた。
急いで村へと向かったビゴマらはそれを隠れて見送ってから村への侵入を果たした。
予想以上に多くのオーク鬼が出撃した。偵察と言うよりも始末しようと言うことなのだろう。これで悪魔騎士の配下が減ったので一気に悪魔騎士を襲撃することにした。
「<酸素遮断>!」
ラングの魔法でまず悪魔騎士の周辺に残っていたオーク鬼を仕留めた。
この魔法の効果はこの村へ来る途中にラングが報告したので、ビゴマはこれを初手にしたのだ。仮にどこかの建物にいるオーク鬼が他にいたとしてもこれで一気に戦力を削れるからだ。
だが攻撃を仕掛けたのだ。同時にこちらも相手に発見される。
ビゴマとアイゼンは駆け出して一気に悪魔騎士との距離を詰めようとした。
「つまらぬ!」
悪魔騎士が大剣をふるうと衝撃波が放たれ、ビゴマとアイゼンは押しとどめられてしまった。
だがそれはビゴマの戦略の範囲だった。
「<酸性雨>!」
ラングは新たな魔法を唱えた。
この魔法は非常に酸性の強い、塩酸の雨を降らせた。
「グワァァァァ!」
悪魔騎士は悲鳴を上げた。その鎧があちこち溶け出していた。悪魔騎士はこの鎧に悪魔が憑依したものなので生き物ではない。だから酸素遮断の魔法は効果がないとわかっていた。だが鎧が実体であるので鎧の破損は悪魔へのダメージとなると予想したのだ。
鎧さえなくしてしまえば攻撃力はなくなるだろう、というのがビゴマの予想で、それは想像以上の効果を得られた。
「こしゃくな真似を」
悪魔騎士はしかし魔力を放射することで酸性雨を吹き飛ばした。
「あれを連れてこい!」
悪魔騎士が叫ぶと近くの建物からオーク鬼が何かをつかんで飛び出してきた。
「動くな! 殺すぞ!」
オーク鬼はドワーフの子どもを悪魔騎士に渡した。
「ただ殺すのでさえない。魂が失われるぞ」
悪魔騎士は見るからに邪悪な気配のする短剣を突きつけた。
起き上がって突進しかけていたアイゼンとビゴマは足を止めざるを得なかった。
悪魔騎士に首を捕まれたドワーフの子どもは苦しそうにしていた。
「悪魔王様にこの魂を捧げれば、どうなるかわかるか?」
悪魔騎士はこどもを振り回してビゴマらを下がらせた。
「地獄で永遠の苦しみを与えることもできるのだ」
「卑怯な」アイゼンがうめいた。
悪魔騎士は嘲笑した。「それは奇襲を仕掛けるようなドワーフのことかね? 確かに卑怯というべきだな」
悪魔騎士はこどもを更につり上げて見せた。
「そっちの魔法使いも口を動かすなよ」
こどもの顔が青くなった。ラングはうなずいてみせた。
「それでいい」
悪魔騎士は満足げに言った。
「さて」
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