第31話 敵国外患無き者は国恒亡ぶ
数日後、
それを聞き、
更に数日後、
その為、
それを
直に鷹が絵となり、冊子の中へと戻って来なかったことから、無事に王妃の許に届いたのであろうとは考えていたが、
早速、丸まっていた
そこには、注告のおかげで、速やかに宰相一派を追い落とすことが出来、情勢が安定しつつあると言うことが、回りくどく書かれていた。
万が一、
「
−−翌日、溜まっていた業務が一段落ついた
幸い、一命を取り留め、その後回復して行ったが、その時の怪我がもとで、歩行が困難となった。
政務を執るのが辛くなった
ちなみに、その時の戦は、
少しでも旅程を短縮したかった
行きは
いきなり現れた龍に、離宮の警固の男達は、目を見開き、ひっくり返りそうであったが、その背から降りて来た
南東に位置する離宮からは、海が見える。
だが、二人が案内された部屋の窓からは、残念ながら海は望めなかった。
その代わりに、綺麗な花が咲き乱れる庭園が見渡せた。
開けられた窓からは、潮風と共に甘い花の香りが入って来る。
窓の方へと目を向けた
「花と僅かに磯の香りが……」
「二人共、よく来たな。良い場所ところであろう?」
「ええ。暑過ぎず寒過ぎず、丁度良い気候で、過ごしやすそうな場所ですね」
首肯した
一息吐くと、「お身体の調子は如何ですか?」と、
「皆のお陰で、快適に過ごしておる。少しだけ前よりも身体が動くようになった気もする」
「そうですか」
「ならば、良かったです」
「今日は、よく来てくれた」
そう言って、ニコニコしている
「いえ。それで、お聞きしたいことがございまして……」
「霊亀の
「えっ!!」
「どうして分かったのですか?」
ズバリと言い当てられた
「
「それはどういう?」
「天帝が仰っておられたのだ。何れ、孫が霊亀の
「そうだったのですか」
「して、その
「そうですか……」
話して良いものか迷った
それを受けて、
「それは、
「というと?」
「龍を昇天させる為には、
「鳳凰の羽、連理の梧桐の枝で作られた筆と玉の粉、麒麟の
「そのようなものが!?」
伝説の瑞獣の名が並び、
「ええ」
神妙に
「木に縁よりて魚を求むことを、今までずっとして来たと言うことか」
「そう言うことになりますかね」
「或は、
「そうかもしれんのう……」
お茶で口を湿らせ、
「その
「伝え聞いた話では、ある商人が
「そうでしたか……」
皆のお茶が無くなり、
女官は直に新しいお茶を入れ、茶菓を並べてから下がる。
「このお茶は、良い香りがしますね。味も先程のものよりスッキリしているように感じます」
「そうであろう。
「へー」
「新鮮なお茶を飲むことが出来ない、北方へ送るお茶としてどうかと考えておる」
北方では、茶葉が栽培出来ず、南方から茶葉を送っていた。
だが、何日もかかって運ばれた茶葉は、風味が落ち、あまり楽しめるものではない。
そこで、考え出されたのが、このお茶であった。
「このようなことまでお考えになられるとは……」
「我々も見習わなければなりませんね」
先に茶杯を卓に置いた
「ところで、
ちなみに、そう言い出した者が誰であるかは分かっていない。
お茶の話は前振りでこれが本題かと、茶杯を卓に戻した
「恐れながら、私でございます」
「ほう。中々考えたではないか」
為政者の顔で答える
「お褒めに預かり光栄です」
「もう、全ての周辺国に送ったのか?」
「ええ」
「そうか。全ての国から使者は戻っているか?」
「いえ、まだ旅立って然程時は経っておりませんので、殆ど戻っておりません」
「そうか。
「ええ」
「そうか。
「それは、先の戦のことでしょうか?」
「それもある」
「それも?」
「ああ。その戦が終結した折に、かの国の王女を
二人が生まれる前、
「その話は、聞き及んでおります。確か、その王女が身籠り、子が流れた時に亡くなってしまったとか」
「ああ。自然なことであったならば、そこまで遺恨を残すようなことはなかったのだが……」
「故意だったのですか?」
「ああ。愚かな女が後宮に居たのだ。政治のことを何も分からない馬鹿者が、毒を用いて王女を殺してしまった。そのことが、かの国にまで伝わってしまったのだ。直ちに、犯人を見つけ、その者とそれに協力した者達をかの国へと送ることで、取り敢えず怒りを治めて貰ったのだが、な」
「そう簡単ではないのですね」
含みを持たせた
「そうじゃな。……かの国へ送った使者達は、戻らぬことを覚悟しておいた方が良い」
「そう、ですか」
「
「ちと、偉そうなことを言ったかのう。我も自らを律することが出来ず、このような体になってしまったと言うのに。説教臭くなったのも年の所為かのう? ホホホ……」
再び柔和な表情に戻り、そんなことを言って笑う
「そのような……」
笑いを治めた
「其方達の父にも、随分と辛いことを強いて来てしまった。其方達も、色々と辛い思いをしたであろう。それも、我が至らなかったばかりに……」
「いえ……」
「今となっては、我に出来ることは殆どない。ただ、其方達やこの国の安寧を祈ることしか出来ぬ」
そう語った
窓からは西日が差し込み、いつの間にか、日が沈む刻限となっていた。
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※ 敵国外患無き者は国恒亡ぶ……敵国もなく外交の心配もない国は、国民全体に緊張感がなくなり必ず滅亡する。
大旱の
木に縁よりて魚を求む……方法が間違っていれば成功できないことのたとえ。
人必ず自ら侮りて然る後に人これを侮る……自分で自分を侮るようなことをしていると、必ず人からも侮られるようになる。人に侮られない為には、自らを尊重しなければならないということ。
ちなみに、
もともとは品質の落ちた茶葉を無駄にせず美味しく飲む為に茉莉花の香りを吸着させて飲んだのが始まりだとか。
なので、お茶の産地から遠い北方の地でよく飲まれていたようです。
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