第27話 滅火をして復た燃えしむる能わず
辺りが闇に閉ざされた頃、
それによって、その
だが、出来るだけ穏便に済ませるのが今回の目標である。
先ず、
万が一に備えて、直ぐ傍の物陰に
そこよりもう少し離れた場所には、
「王城よりの急使でございます! 至急、取り次ぎ願う!」
「何だ? そなたは?」
「私は、画家の
何故、
残ったもう一人の番人が、ジロジロと
「お前、
「私は十年程前に
その言い様に、番人は面白くないとばかりに、「フン」と鼻を鳴らした。
もう一人の番人が直に戻り、
その際に、さっと身体検査をされたが、
ちなみにこの小刀は
ずっと牢にいた彼が、武器を持っているはずがない。
だが、何故、それを持たせたかというと、王宮からこの
だと言うのに、あまりに軽装備ではそれこそ疑ってくれと言わんばかり。
急使を名乗るからには、それなりの装備が必要であった。
それを、
中へと案内された
「王宮からの使者と言うのはお前か?」
「はっ! どうぞこちらを……」
書状を受け取った男は、さっと目を通し、
「ふむ。ここに書いてあることは誠のことか?」
「はっ! 今、城内は王の葬儀、その後の新王の即位などで慌ただしくしております。こちらへの使者も出せる状況ではなく、私にまでその任が回ってきました。ですので、出来ますれば、一旦こちらの機能を停止して、新王が即位するまで、王城の方の手伝いをお願いしたいとのことにございます」
一息にそう言って、頭を垂れた
「うーむ。直には、回答出来ぬ故、朝まで考えさせてもらおう。国にとって一番の不幸があった時故、もてなしは出来ぬが、朝まであちらで休まれよ」
長の指示を受けて、傍近くで控えていた男が、
「ここだ。入れ」
案内された部屋は、まるで独房のようであった。
入り口で立ち止まっていた
直に、戸を開けようとしたが、びくともしない。
どうやら鍵をかけられたようだ。
「どういうことだ!」
「俺達は、お前を信用した訳ではない。あの書状に偽りがないか判明するまでは、ここにいてもらう。死にたくなければ、大人しくしていることだ」
その言葉を残して、男は去って行った。
「クソッ!」
「あんた、静かにしてくれよ。眠れないじゃないか」
まさか自分以外に人がいるとは思っていなかった
「誰だ!?」
「あんたこそ誰だよ」
「俺は王宮からの使者で、
「ふーん。俺は
「
「ああ」
「もしや、十年程前に
「ああ。その
「ああ。一緒の牢に入っていた画家だ」
「そうか、そうか。また、牢のようなところで再会するとは、どんな奇縁だ。こりゃ、驚いた」
「だが、何故、ここに?」
「まあ、何だ。暫くは、王都の方の鍛冶場で働かされたんだが、そこの奴らと色々と
「苦労したんだな」
「お前さんも、だろ?」
「ああ。色々あった。色々……」
再び、
「ここに入れられたのは何故だ?」
「ああ。俺達、
「そうか……」
−−一方その頃、
恐らく、書状の内容に間違いがないか確かめる為に、王宮へと向かった者と思われる。
だが、それ以外に思った程の混乱が起きているようには、感じられなかった。
「まずいな……」
その独り言に、返事をするように隣に居た
「彼は、捕まったかもしれないな」と。
返答があるとは思っていなかった
「やはり、そう簡単には行かなかったか……」
「強行突破するか?」
「そうするしかない、か」
その顔を見て、
「
「どうやら、作戦は失敗したようだ。これから、強行突破に踏み切ろうと思うが反対意見はないか?」
「こうなっては、行かざるを得ないでしょう。急がなければ、彼の身が心配です」
「ああ。番人は、俺と
皆、
あまりに一瞬のことで、倒された番人達は自分の身に何が起こったのか分からなかったことだろう。
その後、物陰に隠れながらも、敵に出会すと一太刀で伸し、音を立て無いように気を配った。
鍛冶場などの破壊は他の者に任せ、
二人がある建物の外を歩いていると、部屋の窓が開いていたようで、中なら声が
二人は静かに耳を澄ませる。
「……王が亡くなられたと言うことは、この
「そうだな。王太子は、戦争反対派だからな。このままでは、潰されてしまうかもしれないな」
「宰相閣下が黙ってはおりませんでしょう?」
「ああ。既に、王太子一派を排そうと動いておられる。我々は、ここから動かずに、宰相閣下からの勝ち
「なれば、先程の王太子の手の者と思われる使者はどうしますか?」
「彼奴の名は聞いたことがある。王も
「はっ! ……そういえば、
「まぁ、鍛冶屋と女以外は、いなくても問題ないか。好きにしろ」
「ありがとうございます」
中の会話を盗み聞きしていた二人は、険しい表情をして
「
「ああ。彼奴らは、ここで始末しておいた方が良さそうだな」
突如、入り口から表れた二人に、長と側近の男は、驚愕し、慌てて臨戦態勢になった。
「お前達は、何者だ?」
長が二人を
「答える必要があるか?」
「そんな軽口を叩けるのも今のうちだ!」
言い終わると同時に、長は
「口程にもない」
「全くだ」
「これを見せたら、他の奴らも少しは大人しくなるだろうからな」
「そうだな」
部屋を出た二人は、未だ見ていない奥の方の部屋に
そして、隣の建物の方へと潜入する。
二人は、一部屋一部屋確認していった。
どうやら、この建物は下っ端の者達の寝所だったようだ。
皆、
「弱っちい奴らばっかりだな」
「こんなんで
「ああ、全くだ」
「で、こいつらはどうする?」
「戦意のない下っ端は、放っておいても構わないだろう。……やはり、この建物にはいないか」
「そうだな。次へ行こう」
後に二人は、
この時、
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※「天地之性、能更生火、不能使滅火復燃。(天地の
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