第22話 子淡の回想⑤
蒼穹が澄み渡った素晴らしき日に、冠礼の儀は
当初、今回の儀式は
だが、急遽、
静かに涙を流す彼女を見守る皇帝、
その後、直に
あまりの分かりやすさに、周りの者達は苦笑する。
それでも、これで
臣籍降下することになった
その結果、配属される部署が決まる。
緊迫した空気の中、
その実力は一目瞭然で、
後日、
結果的に特別扱いになってしまった
冠礼の大々的な儀式は済み、
この間に、
天帝への拝謁の儀式は、皇族の冠礼の儀以外でも、毎年、元日に執り行われる。
二人の親である
その為、今回も形式的なもので終わるだろうと、
それ故に、天帝は姿を現されなかったのではないかと
天帝の姿は、
すかさず、
それに習って、呆然としていた
その様子を、天帝は目を細めて眺める。
皆、頭を垂れたまま、天帝の御一声を待っていた。
「
天帝は先ず、見知った愛し子である
「
「はっ! 直答をお許し願えますか?」
「おっと、そうであったな。人とは面倒なものだ。皆の者、顔を上げるが良い。直答も許す」
天帝の言い様に、思わず相好を崩した
「有り難き幸せ。
「そうか。なれば、重畳。……その方が
天帝は、
それに
「その方が悪いわけではないのだが、周りの者達の
「そう、で、ありましたか……。ご啓示賜り、恐悦至極に存じます」
天帝の言に、
天帝は、憐れむように
「さて、そこな愛し子よ。こちらへ参れ」
「愛いのう。
天帝は、それは、それは愛おしそうに、
それを見ていた
次に天帝は、
「さて、
「はっ! 私もそのように愚考いたします」
「左様か。そなた、名をなんと申す?」
「はっ!
そして、その後ろに一歩下がって控えていた
「もう一人居るではないか。そなたは?」
「恐れながら、
「そのように、
「仰せの通りに御座います」
「ならばそなたらに、我が子の力を貸そうではないか」
天帝はそう言って、
「
「有り難き幸せ!」
「この力はあくまでも貸すだけだ。自らの力だと
「はっ!」
二人は神妙に首肯した。
「それから、分かっておると思うが、『
これにも二人はしっかりと頭を垂れた。
頭を上げた
「恐れながら、我が身には過ぎたる力と、愚考いたします」
天帝は、慈しむような眼差しを
「
「はっ! 有り難う存じます。彼女のことは、この身を賭して、一生涯お守りいたします」
「うむ。それでは、皆の者達者でな。また会う日を楽しみにしているぞ」
そう言って、天帝は一瞬後に姿を消した。
天帝が去るのと同時に、立ちこめていた雲も跡形もなく消え去った。
すると、壁に描かれている龍が目に入り、次の儀式に移るよう
「さぁ、
「はい!」
その後、
三人は、残念に思いながらも、
その後、
その影で、
無理をして、冠礼の儀式に出席した皇后は、張っていた気が一気に緩んだようで、
その熱は、上がるばかりで、皇后は見る間に衰弱して行った。
そして、一週間後、皇后は
その姿を見て、
お
そして、
忙しくなった為、
ちなみに、二人が成人したのを機に、
その為、
久方振りに休みとなった日、
この時、
そして、誰よりも彼の傍で彼と共にありたいと心の底から願った。
「
「
「
「それは……」
「駄目か? 私のことをそのようには見られないだろうか?」
「違うの。嬉しくて……。私で良いの?」
「
「うっ、ひっく……」
「泣かないで、
「うっ。私、待ってる。ずっと。だから、いつの日か、貴方の妻にして下さい」
「
「……
「『
「うー、
「フフ、良いね。これからはそう呼ぶんだよ」
「……はい」
それから、二人が結ばれるまでには実に八年の歳月を要した。
二年後に
その二年の間でも後宮では、様々な陰謀が渦巻き、多くの者が命を落としていた。
この頃になると
だが、
そして、落ち込んでいた
日々に追われ、気がつけば随分と月日が流れていた。
それでも二人の気持ちは変わらなかった。
むしろその分だけ気持ちが膨らんで、
そして、ついに昨年、少しだけ落ち着いた時期を見計らって、
* * *
「−−……そうして、私は
「へー。
「ふふ。それは二人だけの秘密よ」
「えー」
「何でそんなに聞きたがるの? もしかして、好きな子でも出来た?」
「なっ!? そっ、そんなの、い、いないよ!」
「まぁまぁ。
「だから、違うって!」
「ふふ。そう言うことにしておいてあげるわ」
「意地悪」
その姿を微笑ましく思いながら、
「さてと。随分、話が長くなってしまったわね。いつの間にか、夕食の時間になってしまったわ。
「また、色々話してくれる?」
「ええ。また今度ね」
そう言った
色濃かった彼女の顔の
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※ 殿試……科挙の最終試験で、進士に登第した者が、皇帝臨席の下に受ける試験を言う。試験であるが不合格者は出さず、合格者の最終的な順位を決めるだけのものであった。
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