第21話 子淡の回想④
「
「はい。大体のことは。詳細は
「そうか。まだ、三月ある。それまでに、少しずつ話していこう」
そう言うと、
「
「なんじゃ?」
「皇太子と第二皇子は、その、仲が良くないのですか?」
「ふむ。そうかも知れんのう。二人は、母親が違うことは知っておるか?」
「はい」
「母親同士は、決して仲が悪いわけではないのだが、な。周りが、壁となって立ちはだかり、妨げとなっておる。特に、
「そうなのですか?」
「うむ。
「それでは、本人同士が嫌いというわけではないのですね?」
「嫌いも何も、兄弟と言えども、会ったこともなく、名前位しか知らない他人のような感覚であろう」
いまいちピンと来ない
「そういうものでしょうか? 先程、会ったお二人は、とても
「会われたのか!?」
「はい。画院の前で、ばったりと」
「そうか」
「第二皇子は、あまり関わりたくはなさそうなご様子でした。皇太子は、去って行く第二皇子を悲しそうなお顔で見ておられました。お二人はご兄弟なのに、仲良くすることは許されないことなのでしょうか?」
「そんなわけがない。周りが険悪だからといって、お二人が仲違いする必要があるものか」
「ならば、私はお二人の掛け橋となりたいです」
「そうか、
「分かりました」
「心してかかれ」
「ところで、第二皇子は
「そうだな」
「お話ししては駄目でしょうか?」
「うーむ。
「分かりました」
こうして、
画院からの帰り道、早速、
「あの、
突然の
「どう、とは?」
「えーっと、好きとか嫌いとか?」
考えながらそう言った、
「フッ。何で疑問系なんだ? 正直に言うと、どちらでもないかな」
「えっ?」
「別に皇太子本人に嫌がらせされたとか、可愛がってもらったとか、そういったことは今まで全くなかったからな。兄弟とは言っても、赤の他人と一緒だよ。まあ、彼奴の祖父の
「
「だからかな、さっき、なんの心構えもなく会ってしまったから、どう接したら良いか分からなくなってしまった……。
二人は困ったような顔をして、互いを見遣る。
「迷惑だなんて……。私は、恐れ多いことながら、お二人のことを大切な
「
「先ずは、お互いに思っていることを話すところから始めましょう? 微力ながら、私が仲立ちします」
「ありがとう……。だが、
「そうですね……。とりあえず、一度お二人が話せる機会を作りますので、その時に相談しましょう?」
「ああ」
二人がその他にも色々な雑談をしながら進んでいると、あるお屋敷の周囲が騒がしく、野次馬が集まって来ているところに出会した。
何かあったのかと近くの男性に尋ねたところ、その館の嫡男が武官に引っ立てられているところだということだった。
武官の中に
「
それを聞いて、
昨日の獣が言っていた「
そして、
−−翌日、
「話がしたいから、都合の良い日時を教えてもらいたい」と。
返事は直に届いた。
「次の日の昼頃なら大丈夫だ」と。
その時間に画院を訪れる旨が書かれていた。
「良かった……」
−−その翌日、約束の時間になり、
いつものことながら、従者達は非難がましく
「
「いえ。お忙しいところ、お越し下さりありがとうございます」
「いや、構わないよ。可愛い
お茶の用意をした
「
一つ多く用意された、茶杯湯呑みを見て、
「
「
「ありがとうございます」
中から、
「第二皇子!?」
「先日振りです、殿下。失礼しても?」
「ああ」
それを受けて、
「お二人とも、お越し下さりありがとうございます。私にとっては、お二人とも大切な
「そうか……。そうだったのか……」
「
「殿下……」
「図々しいお願いだとは思うが、私のことを『
「……会うのは構いませんが、『
「そうか……」
「まぁ、それは追々で良いか……」と言って、
「殿下、折角の機会ですので、これだけは言わせて下さい」
「何だ?」
「私は、決して皇帝の椅子地位を欲してはおりません。その所為で、嫌がらせを受けるのも本当に迷惑です。陛下には、冠礼の折に臣籍降下する旨の了承は受けております。ですから、そのことを
「それは構わないが、本当に良いのか?」
「ええ。殿下には申し訳ないと思いますが、皇帝という責務は重すぎて、私には背負えません。それに、その椅子に縛られるのはとても耐えられない。私は、そこから逃げることを選んだのです」
「そう、か……」
「もちろん、臣に下っても、微力ながらこの国の為に尽くすつもりではおります。ですが、出来ればあまり表に立ちたくはありません。私は、ただ平穏な生活を望んでおります。どうか、お許し下さい」
「許すとか、許さないとか、私にそのような大それたことを決める資格はない。だが、兄として弟の願いを叶えたいとは思う。私も微力だが、幾らでも力になろう」
「ありがとう。ありがとうございます……」
その後、
その三度目の時に、
そして、急に
だが、それに
それに伴い、段段と
皇帝はそのことを大変喜び、
当然、
だが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます