第20話 子淡の回想③
二年の間に随分と成長し、
この頃は、そこで陛下からの仕事をすることも増えて来ていた。
この日もそこで陛下の肖像画を描いていた。
廊下からバタバタと足音がしたと思ったら、バタンといきなり扉が開き、
「
ズカズカと
「こちらは?」
「美人だろう?
「何故そのような方の
「実はな、この方は流行病で亡くなったそうだ」
「えっ!?」
「俺に色々と縁談が来ているのは、きっと
「はい」
「俺はこの方の絵を一目見た瞬間に心を奪われたんだ。だが、その思いも報われることはなくなった。……せめて、偽物でもいいから実体化した彼女に会いたいと思ってしまったんだ……。駄目か?」
「そうですか……」
彼に笑顔になってもらいたくて、おちゃらけるように、「分かりました。
この頃には
王女の美しさをそのまま写し出した
廊下で控えていた
「
流行病で亡くなったという王女。
そして、今の
「
そう言った
「この
「はい」
「
「いえ。良ければ、肖像画と一緒に仕舞っていただけないでしょうか?」
「そうか。では、二枚とも持っていくよ」
「はい」
その足取りは、来た時とは違いしゃんとしたものとなっていた。
それから暫く、
そんなある日、画院へと歩を進めていた
ところが、直に追い付かれて、路地へと引きずり込まれた。
力強い手で押さえ込まれ、振り払おうとしても引き
そして、あっという間に手足も縄で拘束されてしまった。
恐怖に支配された
「へへ。泣き顔も可愛いね。こりゃ、
そう言って
「うー、んー、んー」
薄汚い獣はその様子を嫌らしい顔で眺め、舌舐めずりをする。
「こりゃあ、生きがいい。
獣が
そして、獣の手は
「大丈夫か?」
そう言った、声の主が
拘束が解かれた
「
「うわーん。
縋り付いて泣きじゃくる
少しすると、
そして、
さっきよりも少し重みを感じた
「
涙が乾き、安らかに眠る
言い様のない感情を持て余した
「んー?」
「
「
「……! 私……」
ハッとした
「何も心配するな。ゆっくり休め」
「でも、画院へ……」
「はぁ。分かった。画院の方には俺から伝えておく。だから、休んでくれ」
「それから、これから出掛ける時は俺が護衛をする。絶対に一人で出掛けるな」
「えっ!? 流石にそれは……。皇子に護衛してもらうなんて、おかしいです」
「いや、もうすぐ俺は皇子じゃなくなる。そう陛下と約束した。だから、問題ない」
「でも、今はまだ皇子ですよね?」
「
先程、自分から抱き付いた時は、恐慌状態だったこともあり平気だったのだろう。
すっかり平静を取り戻していた
鼓動が跳ね、ドクドクと激しく脈打ち、頭が
「
「それじゃあ、ゆっくり休むんだよ」
真っ赤な顔をした
翌朝、早速、
「おはよう。今日は出掛けるかい?」
「はい。昨日は、行けなかったから……」
「そうか」
「あの、ありがとうございます」
「気にするな。好きでしていることだ」
「はい……」
二人が画院に着くと、後ろから声を掛けられた。
「
振り返ると、心配そうな顔をした
「ご無沙汰しております。昨日は急用が出来て来られませんでした。待っておられたのですか?」
「ああ。頼みたいことがあって、な……。その者は?」
その視線に、
「あの。お二人は初めてお会いされたのでしょうか?」
「えっ?」
「ああ」
「そうですか……」
「それで、
だが、その前に
「えっ?」
「だから、俺の名は『
「まさか……」と、呟いた
「第二皇子か? 何故、
「殿下に御説明しないといけませんか?」
逆に
「いや。それには及ばぬ」
二人の険悪な様子に、
「
その後ろ姿を、悲痛な顔をして
「
「ああ、
「いえ。……中へ入りますか?」
「そうだな。中で話そう」
二人は画院の
「どうぞ」
部屋に着き、
「
「こちらの方も随分と腕を上げたものだ」
お茶を飲み干し、茶杯湯呑みを卓に置いた
「実はな、冠礼の儀式の中で、天帝への拝謁というものがある。それに
「えっ!? 私が、ですか?」
「ああ。
「龍の目?」
「ああ。天帝をお迎えする処を
「えっ!?」
「誰が目を入れても天に昇るわけではない。今までも多くの
「それなら、私もきっと出来ないでしょう」
「そのような気弱なことを言わないでくれ。折角の機会なのだ、もっと強気に挑んでもらいたい」
「分かりました」
「後の詳しいことは
「はい」
「それじゃあ、また茶を飲みに来るよ」
「お待ちしております」
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