第19話 子淡の回想②
母の一番上の兄である
下級武官の子にしては異例な将軍にまで出世し、請われて高官の子息などにも指南している。
「おっ! 君達が、
「……はい」
そんなもじもじとした様子の二人を微笑ましい思いで見遣った
「
「それはどういう意味だ?」
思わず
そして、今度は反対の手を
「
この時まだ十七歳だった
それ以外の者からは、ただ「皇子」や「殿下」だった。
「師匠。止めて下さいよ。師匠の前では同じ弟子。出来れば、兄弟子として接して貰いたい」
「そうですか? 分かりました。ならば、
「はい」
「師匠。お休みのところ、突然来てしまい申し訳ありません。宮でじっとしていることが出来ませんで、
「そうでしたか。私は構いませんが、お一人での外出は看過出来ません。貴方様は一国の皇子です。もし、何かあったら……。必ず護衛と出歩いて下さい」
「師匠、残念ながら今の護衛達は信用出来ません。彼奴等は護衛ではなく監視です。私の周りで信の置ける者は師匠や
「殿下……」
口元に冷たい笑みを浮かべる
既に
その為、
皇后である
そんな皇后がその地位に在るのは、偏に面倒な外交問題を避ける為であった。
「俺は皇子、ましてやそれ以上のものなんて望んでいない。俺は自由になりたいだけだ。こんな籠の鳥みたいな生活は我慢ならない。皇太子がさっさと結婚して、跡継ぎを作ってくれることを願っているよ。そうすれば俺も伏魔殿から解放されるだろう?」
九歳の
「あの。私にも何か御手伝い出来ますか?」
おずおずとそう言った
その熱い視線に
「可愛いな。
それを見ていて
「ぷっ」
「ハハハハ……」
「何で笑うの?」
「悪い、悪い。お前があんまり可愛いことを言い出すから、つい」
「
緩んでしまった空気を直に引き締めて、練習を続けるのは難しいと判断した
「折角、我が家にお越し下さったのですから、歓迎しますよ、殿下。
「ありがとう。稽古の邪魔をして悪いな」
申し訳なさそうに言う
会客室応接室で茶菓を御馳走になった
常に気を張っている彼にとって、久方振りの心安らぐ穏やかな時間であった。
「また来ても良いだろうか?」
帰り際、
それに
「ええ。大したおもてなしは出来ませんが、いつでも歓迎いたしますよ」
「ありがとう」
「
「はい、師匠!」
その後、
それから更に数週間が経った頃、
「この者は
「はっ!」
その場に居た画院の者達は、
それに満足げな顔をした
「
「えっ!
「あの、
「私は
「はい。ありがとうございます!」
そんな時、入り口の方がざわざわし出した。
「
入り口から表れた一人の青年が、
それに
「此れは、此れは、ようこそお越し下さいました、殿下」
「うむ」
傍まで来た青年は、
「その者は?」
「
「名は?」
「
「ふーん」
青年は品定めするように、
「少しこの者と話したい。すまぬが
「……
護衛達は、渋々といった様子を隠すこともせず、退出した。
「彼奴等の無礼、どうか御許し下さい」
青年は
「殿下。臣にそう簡単に頭を下げるものではありませぬぞ」
「いいえ、
「うーむ。そう思って下さるのは大変名誉なことではありますが、ここには
「分かった。だが、この子は『
「それはどなたから聞き及んだのでしょう?」
「陛下だ」
「左様に御座いますか。ですが、殿下、このことは国の機密。表立って
「なれば、是非、同じ師を持つ兄弟子として『
「ほほ。そうですな。
「あの、この方は?」
「おお、そうじゃった。この方は、
「えっ!」
「
「
「その、恐れ多いことながら、宜しいのでしょうか?」
前に
「ああ、もちろん」
「私も『
「はい!」
それから
素直で控えめな
当時、
そうして、歳月人を待たず、あっという間に二年の月日が流れた。
絵と剣を必死に学んでいた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます