第18話 子淡の回想①
天に雷雲がかかるようになったのは、
「
「えっ!?」
そして、理解し出すと、直に顔色無しとなった。
「無事なのか?」
「今のところは。これが送られて来たので」
力を使った者が亡くなれば、
鷹が消えることなくそこに在ることが、
「どうするつもりじゃ?」
「国内が不穏な今、
「そのような
「一時は王女を輿入れさせて、同盟を結ぼうとしていたのです。それに、
「良かろう」
「ありがとうございます。本当は私が行ければ良いのですが……」
戻ってからも、軍の内部調査などで忙しくしていた時に、
「今、お主が都を離れるのは浅慮なことだ」
「はい、その通りです。
「何を仰いますか! 臣が君を支えるのは当然のこと。
顔色の悪いまま、気丈に振る舞う
「臣、か……」
孤独な
* * *
数日前の
「さあ、続きを描きましょうか」と言って、
だが、彼女は心ここに在らずと言った様子で、
見かねた
彼女は驚いた顔で
「
「
「……そうね。そうしましょう」
「今日は僕が入れるから、
「ありがとう、
彼女はお茶を入れる
入れ終わったお茶を持って、
「はい、どうぞ」
彼女は差し出されたお茶を受け取り、「ありがとう」と言って、口を付けた。
渋みの強いお茶に、
その様子を見ていた
「ごほっ。げほっ、げほっ」
「
「
「くすくす。折角、
「僕、もっと美味しく入れることが出来るように頑張るよ!」
赤い顔をしてそう言った
「
「そうなの?」
「ええ。懐かしいわ……」
「ねぇ、
「えっ? でも……」
「お願い!
その熱意に負けた
「そう、ね。聞いてもらおうかしら、昔の私達の話を……−−」
* * *
父の両親は、父が子供の頃に他界していて、兄弟もなく、親戚も遠方に住んで居た。
その為、天涯孤独に近い状態であった。
父の亡くなった父、即ち
その縁で、母の両親は
父に残された物は、慎ましい住処と細やかな金品、それと
その武具を手に、後見人である母の父に教えを請い、自身の父と同じ武官となった。
身寄りが無く孤独だった父を、母は後見人の両親と同様に温かい陽だまりのように包み込んだ。
そんな二人はいつしか恋人となり、父が正規の武官となって一年後に結婚し夫婦になった。
裕福ではなかったが、優しい父と穏やかな母、明るい姉に可愛い弟と
ところが、
その数日後、
母からの報せを受けた祖父母は、
しかし、二人の看病をする者がいなくなると、
心配した祖父母が時々見舞いに訪れたが、「移ると困るから、治るまで来なくて良い」と母が言った為、それ以降は家の中まで来ることがなくなり、玄関先に食料や生活必需品だけが届けられるようになった。
数週間後、看病の甲斐もなく二人は息を引き取った。
二人の遺体は、
知らせを受けた祖父母がやって来た時に、初めて涙を流した。
今まで住んでいた家を引き払って、自分のことを引き取ると祖父母は言った。
幸せな思い出が詰まった家から離れるのは辛かったが、今度は家に残りたいと言うことは出来なかった。
そんな時だった、父の上司だったという人が死者と
それが
冷静になって考えると、確かに上司ではあるが、この時既に
話を聞いた
祖父母は
そもそも、ただの下級武官であった祖父が
さらに、
「
それから、
彼女は、この家に訪れたり、外出したりする際には男装するように祖父母に言われていた。
それだけでなく、政争が続き、治安は益々悪くなっていたため、弟と一緒に祖父に剣術も習っていた。
子供の
なぜ、雲上人である
何か、良からぬことが起こるのではないか?
とても不安に思っていた。
少しでも自衛出来るように、危険に巻き込まれないように、そんな愛情から、祖父は子女である
両親の血なのか、
数週間で、ただの
祖父母は知らなかったが、管理というのは半分建前で、
買い取ってくれた翌日、
「この絵はお主が描いたのか?」
それは、
「ふむ。やはり微かだが、この絵からも『
「!」
確信していて、ただ確認する為だけに訊いた様子の
「やはり、そうか」
あれは、
その日も、
二人に少しでも元気になってもらい一心で、とにかく必死だった。
特に、外で遊ぶのが大好きで明るかった姉が、外どころか布団の上から一切動くことも出来ないくらいに
それでも、妹の
かといって、離れて暮らすのはそれ以上に嫌だった。
看病の合間に字の練習をしていた
描きながら、前に姉が小鳥と
貴重な紙や筆、墨などは、
生まれて初めて描いたその絵を姉に見せると、彼女は笑って、「今にも飛び立っていなくなってしまいそうね」と言った。
そしてその指先が絵に触れた途端、小鳥が紙から浮き出し舞い上がった。
びっくりした二人を尻目に、小鳥はそのまま外へと飛び立って行った。
その小鳥が飛んで行った時に、偶々、
「あれは……」
この時の
直に
そうして、
「何も心配することはない。お主は、天帝から素晴らしい力を授かった。ただ、それだけのことだ。だが、このことは誰にも話してはならん。ご家族にも、だ。誰か一人にでも話したらそこから話が漏れる恐れが増してしまう。そうすると、お主の力を悪いことに使おうとする者がそれを聞きつけて、お主を
「宜しい。ではな、この力を上手く使えるように、
「はい!」
こうして
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