第16話 不義にして富み且つ貴きは、我において浮雲の如し
州軍の訓練場で鍛錬していた
そこは、街道を挟んで、山側の迂回路の反対側であった。
「ここが、『
「笹ばっかりだな」
「ああ。これは確かにものを隠しておくには最適かもな」
途中、
「あっ!
「ん?」
「食事中の
「近くから気配は感じないが、随分先にいるんじゃないか? 離れているのに音だけでそれが分かるのか?」
「はい。半里程先だとは思いますが、
「
「どうでしょうか? そもそもこの場所に近付く者が居りませんから、わかりかねますが、笹が無ければ食べるかもしれませんね」
「いずれ、
「そうですね。生態が分からず、悪夢を払うと言われる
「それはおかしくないか?
「まあ、昔の人間が言ったことですので」
「それにしても、これだけ笹ばかりだと確かに迷うな。方向が分からなくなるのも仕方ない。
「ええ。
「ヘー。
話しながら進んで行くと、資材のある場所に辿り着いた。
「ああ、良かった。そのまま、手付かずで残っていたな」
都から送った時と殆ど変わらない資材の様子に、
それに、
「ええ。まぁ、武官達にひっそりと見張らせては居りましたので……。これでやっと、本格的に工事が進められます」
「良かった、良かった」
「これはとりあえずこのままで、先に村まで案内してもらえるか?」
「はい」
三人は、切り立った
「おっ、見えて来た。確かにこの道だと早いな」
「前に来たことがおありですか?」
「おっと口が滑った。ハハ」
慌てて手で口を抑える仕草をした
「はぁ、実は土砂崩れを発見した時に、気になって、な。あっちの山側の方から
「そうだったんですか。そんな気はしていましたが……」
前に村のことを話した時の
「この
「そこの
「はは。ここに
「その技術者が
「そうですね……」
いや、もしかしたらその倍はあるかもしれない。
常人ならば、これを使ってでも下りるのは
「確かにこれだけの高さがあれば、『
「先に行かせていただきます」
その後を
地面に下り、一歩進んだところで、
「ふー、帰りは遠回りだがあちらから行きたいな」
「何? 怖じ気づいたか?」と、
「元々高い所は得意じゃないんだよな」
「さっ、もう少し歩きますよ」
二人を微笑ましそうに
「着いたー」
少し離れたところで塀の造りを観察していた
「おや。これは陛下に、
「
「
「ところで、
「はい。ここは、元々鉄の採掘の為に出来た村でしてな。今はもう採れなくなりましたが、それでも
そして、再び気を取り直したように話を続ける。
「あとは、竹細工や
「それがこの国で流通していないところを見ると、
「はい」
「はぁ。何とも頭の痛いことだ。その
「そうですね。あれを修復するよりも新しく建設する方が効率的でしょう」
「ならば、この村はこのまま沈めても問題はなさそうか?」
「ええ。これと言って隠されているものはありませんでした。去る時に全て持ち去ったのでしょうな。読み取れる者は全て記録いたしましたし、新たな資源などもございませんでしたので、いつ沈めても問題ありません」
「そうか」
「それにしても、人が居なくなると
前に来たとき以上に、村が荒廃している様子を見て、
ちなみに、この村を調査していた
「この村が、二百年も昔に鉄で栄えていたのが幻のようだな」
二人の様子を見ていた
「そうですね。全ては
「ああ。実際にここは水の中に沈んでしまう。
砂が巻き上がった為に、
だが、次の瞬きの後には、再び
現実に意識を戻した
「それでは、調査の報告書を提出して、工事に取りかかってくれ。それから、
「承りました。ということは、
「ああ。
「はっ!」
「
−−数日後。
「
そのメンバーに目を向けた
「おっ!?
「よっ!
「お前、今、
「ああ。
「それは頼もしい。よろしく頼む」
現在は、
「あと、
「はっ!」
その時、
それに、
「
「ああ」
執務室に二人になったところで、
「
まだ、官吏達の中に
そんな中、安全とは言い難い敵地とも言える場所へ皇帝を連れて行くわけにはいかないと、今更ながらに
「うーむ」
「はぁ。
「はっ!」
「せめて、
「そうだな。
「分かった。そうしよう。では、これを持って行くが良い」
そう言って、
−−翌日。
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※ 「不義而富且貴、於我如浮雲」……人の道から外れた不正な手段で得た地位や財産は、私から見れば浮雲のように頼りなく儚いものである。[論語]
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