第15話 往く者は諫むべからず、来る者は猶お追うべし
−−数日後。
「クソッ! 軍部の不満は今まで、皇后が押さえてくれていたが、亡くなってからは後手に回っていた。そのツケがこれか」
「今まで、どれほど
捕縛した私兵達を尋問して分かったことだが、甘い汁を吸う為に
「
「ああ。目が行き届いて、機転も利く、替えの利かぬ人財だったと、今更ながらに思い知らされたよ」
「だが、だからといって、
「旗印など何でも良かったのでしょう。自分たちの不平不満さえ解消されれば」
「もしかしたら、自分たちの目的の為に、
「そう、かもしれないな。人の欲とはなんと浅ましいものなのか……」
二人の言葉に
「
「俺の使命はなんて重い……」
真剣な眼差しを向けて発せられた
「そうだな。だが、その重荷を共に背負う。それが俺の使命だ。お前は独りじゃない」と。
「それは何とも心強いな」
「微力ながら、私も少しなら背負えますぞ」
「
「さっ、弱音を吐くのはそれ位にして、仕事をして下さい」
「やっぱり、
「ところで、
捕縛した翌日、再び
「いえ。黙秘を続けております。食事も拒否しておりますので、このままでは
「そこまでして、ヤツは何を隠している?」
「王女を捜索していただけなら、そこまでするか?」
「そもそも、あの絵の王女と
「そうなるな」
「もしかして、
「それなら必死に捜す理由も分かるな。隠している理由も」
「もし父親だったら、死なせると
「ああ。ヤツに
「そうだな……」
二人が来ることを聞いていた
「早速だが、お前がなぜ黙秘しているのか知りたい。お前が王女を捜していたのは分かっている。それ以外で何を隠している? それは、お前が死んでまで隠さなければならないことなのか?」
「もしかして、お前は王女の恋人だったのか?」
「ここからは俺の推測だが、お前と王女は恋人だったが、身分違いで結婚を許されなかった。そのため、二人は駆け落ちしてこの国に来た。ところが、どういうわけはお前と王女は
「フッ。随分と俗な考え方をする」
「違うのか?」
「いや。半分程は当たっている。……王女が今どうしているのか、お前は知っているのか?」
「ああ、知っている。と言ったら?」
「そうか……」
男はそう言って、
「このまま黙って死ぬつもりだったが、最期に馬鹿な男がいたとお前達に語るのも悪くない」
「俺は
話しているうちに、男の声が段々と荒々しくなっていく。
「俺は二人を追って、この国に入った。だが、
男は
その姿は、全てを拒絶し、「いや、分かる
次から次へと目から溢れて流れ落ちる雫は、ただ静かに地面を濡らし、シミを作っていた。
愛する者を長い年月ひたすら追い求め、やっと手に入れたと思った瞬間、それがその手から零れ落ちていく。
それは、筆舌に尽くし難い恐怖と悲嘆を男に与えたことだろう。
「お前は、ここでは処罰しない。その身柄を
打ち
少しでも生きる
それが、
男はそれを聞いて、「そうか」とだけ言った。
もしかしたら、王女は既にこの世にはいないのかもしれないと思いながら。
その時、少し上向いた男の顔は
それは、
尋問部屋を後にした
「まさかあの男が、
「ああ。だが、あの口ぶりからして、
「父親は誰なんだろうな?」
「
「お前は、甘いな。まぁ、王族に近い者に下手な対応も出来ないか」
「それにしても、
「ああ。まぁ、連れて来た官吏は繋がっている確信があって、捕縛することになるのは分かっていたが、な。今、
そんな
「新たな
「それについては、考えがある」
窓の外に目を遣った
「もうそろそろ、
「そうだな」
−−トントン。
「おっ!
戸を叩く音を聞いた
「失礼します。
「入れ」
「ご無沙汰しております」
「
「はっ! 都から来られた、
一人荷馬車に残り、
もちろん、
そのため、
彼の拘束を解き、仕事を手伝ってもらうようにお願いしていた。
「そうか。彼に
「申し分無いかと思います」
「ならば、彼に
やんわりと言っているが、皇帝の命令に逆らえる
「それは構いませんが、
「
「
「ああ。似合いだとは思わぬか?」
「そうですね」
そう、
「新しい
「はい。こちらに来られてから、山中の村の調査を、
「そうか」
「資材もそこにあるのか?」
「資材の方は、『
「ほう? そこへ案内してもらえるか?
「はっ!」
そんな三人の姿を、
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※ 往者不可諫、來者猶可追……過ぎ去ったことはどうしようもないが、これからのことはまだ間に合う。[論語]
都事も主事も役職の名前。主事よりも都事の方が役職は上。今でいうと、課長と係長位でしょうか?
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