第4話 虎穴に入らずんば虎子を得ず
それでも、弱音を吐かずに付いてくる
「
「大、丈夫。はぁ、
息を弾ませながらも懸命に答え、足を止めない
「でもお前、あまり食べていなかったんだろう? ガリガリにやせ細って……」
「携帯食で良ければ、食べるといい」
「いいの?」
「ああ。少し、休憩しよう」
三人は近くの岩に腰掛けて、携帯食と水を口に入れた。
「そういえば、
その問いに、
「ないよ。あの村は、なんかおかしかった。
「そうか」
途中から、
——翌朝。
「いやー。昨日の晩飯の肉は、久しぶりだったからか、格別に
「そうだな。この朝飯の
「ああ」
「だけど、早く
「ここから、都までは馬で行くから、直に着くだろ?」
「まぁ、そうだけど。
「うん……」
訊かれて初めて、
「お前が怖がると馬も
そう言って、
「
それを見て、
「おっと、そうだった。
「分かった」
「じゃあ。行くか!」
「おう!」
「うん!」
庁舎が一里程先に見えるところまで来て、
「で、どうするんだ?」
「よし、
「えっ!? お前が行くんじゃないのか?」
「ここはお前の方がいい。いいか、今から俺の言う通りに行動してくれ」
「分かった」
「それじゃあ、………………————」
「なるほどな……」
「俺と
「そんじゃあ、ちょっくら行ってくるわ」
「ああ、頼んだ」
軽い調子で右手を振った
庁舎に入った
だが、暫く待っても、
「失礼する!」
「これは、大変お待たせして申し訳ありません」
男は額の汗を拭き、顔を取り繕って
「あなたが
「いえ。私は、
「そうなのか? いつ戻るんだ?」
「予定では、明日になるかと思います」
「そうか」
「失礼ですが、貴方様は?」
「私は
「なぜ、
「突然来て悪いな。陛下が街道の整備を進めたいと考えておられて、
「分かりました。急ぎ、ご用意いたしますので、こちらでお待ち下さい」
下級の役人にお茶を出され、待っていた
「大変お待たせいたしまして、申し訳ありません。こちらでよろしいでしょうか?」
そう言って、
「ああ。有り難う。助かるよ」
「
「それは知りませんでした。早急に対処します」
「頼むよ。ここだけでは復旧が難しければ、私の方でも力を貸すから、その時は書簡を送ってくれ」
「有り難き幸せ」
「それじゃあ、見させてもらうよ。君達は私に構わず、いつもの業務に戻ってくれ」
「はっ!」
−−
「見終わったよ。ありがとう。参考になった」
「それは良かったです」
「ところで、
「そうですね。とても仕事熱心で、尊敬しております」
「そうか」
「今、
「ああ、頼むよ」
「
「
「いいえ。当然のことをしただけです」
「ところで、
「どんなと言われましても……。とても、真面目な方だと思いますが……」
それにつられて、
「思いますが?」
「少し頑固で、人の話を聞かないところもお持ちで……」
「そうか。それは苦労するな。実はな、陛下も似たようなものだ」
「そうでございますか」
「内緒だぞ」
「もちろんでございます」
「お互い苦労するな。ははは……」
「ははは……」
小声で話すうちに、いつの間にか顔が近くなっていた二人は、空笑いをした後、「はぁ」と
「それじゃあ、失礼するよ。土砂崩れの件、くれぐれも頼んだよ」
真面目な顔に戻り、そう言った
役人達は庁舎の表まで出て来て、
一里程先の建物の影にいた
「どうだった?」
「そうだな。見た感じ、黒に近い灰色だな」
「どういうことだ?」
「
「
「明日まで
「そうか。流石に、
「別行動するか?」
「いや。
「そうだな」
「種は
「
「もう大丈夫だよ」
「じゃあ、馬を飛ばしてもいいな」
「それは無理!」
「ははは」
軽口に反応出来るくらい元気になった様子の
* * *
「行ったか?」
「
「いや、急に来るからさ。向こうが探る気なら、こっちも探らせてもらおうかと」
「何ですか、それ。
「それはそれで、予定を変更して他のところへ視察に行ったことにすれば、問題ないだろう?」
「勘弁して下さいよ。私は、嘘がバレないかと冷や汗が止まりませんでしたよ」
そう言って、
「悪かったな」と言いながらも、全く悪いと思っていない様子の
「はぁ。それで、探れたんですか?」
「ああ。
「そうですか」
「とりあえず、言っていた土砂崩れの調査に行くか?」
「そうですね」
「これに何の意図があるのか。ワクワクして来たわ」
「うわー」
子供のようにはしゃぐ
「そういえば、俺は『頑固で、人の話を聞かない』んだったな」
「何で、それを聞いているんですか! ……地獄耳」
「そうさ。俺は地獄耳なんでな。人の話はよく聞いているぞ。聞く価値がないと判断した話は聞かないことにしているだけでな」
極小の音量で
「うわー。横暴」
「さて、どんな話が聞けるか。調査のついでに、住民に話を聞きに行きますか。
「はぁ。分かりました。行ってらっしゃいませ」
ルンルンと鼻歌を
* * *
三人は今日も途中の街で宿を取った。
「
「何か分かったか?」
「いや、予想通り、あの三人は末端も末端だったようで、助ける間もなく口封じされてしまった」
「そうか……」
「どうやら、
「その商人のことは分からなかったのか?」
「それが、あいつらのやり口は巧妙で、国境を越えられてしまってからは、打つ手がなくてな」
「やはり
「そうだな。やはり、
「まぁ、これだけ
「ああ、頭が痛い」
そう言って、
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この話では、「国>州>県」の設定です。
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