第3話 隣人達とパーティー

 エイラは学校を休んでいてバツが悪いのか、パーティーが始まっても隠れるようにしている。

 そんな彼女に皆が食べ物を皿に載せ、一緒に食べようと声を掛けていく。

 海外出身の人が多いから、見たことがないような色や香りの料理が次々とエイラの元にやってきている。

 最初はおっかなびっくり食べていたようだが、どれも美味しいからやがて口元が緩み自然と会話できているように見える。


 俺の母が作ってきたのは純和風のサトイモの煮っ転がしで、この時期のものはとても柔らかいから皆に好評だ。

 近所のスーパーが後援してくれるカップ麺も人気だ。数種類のものを自由に食べて良い。もちろんお湯もたっぷり用意してある。


 ハイテンションになっているマリエルが『赤いきつね』にお湯を注ぎ、待ちきれないのか蓋をしたら一分もしないうちに麺をかき回し始めた。

 それを持ってエイラの所に行く。

 彼女は物珍しそうにそれを眺め、深呼吸をするように匂いを嗅いでいる。恐らく初めて食べるのだろう。


 お揚げをフォークですくい、ひらひらさせている。

 そんなことをしているうちに三分経った頃、意を決したようにうどんを口に入れた。

 興味、覚悟、驚き、感動・・・・次々と表情が変わるのをチラチラと見ているとマリエルの母、ルイーズさんから声を掛けられた。


「淑哉さん、エイラのことが好きなの?」 


 マリエルよりも外国語寄りのイントネーションだ。それでも言葉がスムーズに出てくるのは相当勉強したんだろう。


「好き、ですか。う~ん」


 エイラのことは嫌いじゃない。可愛いと思うし、仕草を見ていれば庇護欲がそそられる。不慣れな習慣を持つ国で暮らすことがどれほど大変かは自分の周りを見ていれば良くわかる。それでもきっと知らない苦労が他にも山ほどあるのだろうということも想像は付く。

 だから恋愛感情ではなく、見守ってあげたいという気持ちがエイラを目で追うことに繋がっている。そんなことを淑哉は再確認して、


「もちろん好きです。でもそれは一緒にいたいとか、そういうことではなくてエイラを守りたいから」


 好きという言葉を使うのを友達は皆恥ずかしいと言うけど、この団地に住んでいれば他国の人達は割と簡単に好きだと言っている。俺はここの生活に慣れているので違和感なく使える。


「そうなのね。じゃ、マリエルは?」

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