第2話 隣人達はクラスメイト
夏休みが終わり、登校日初日は転校生が来るという話で盛り上げっていた。
俺が通う中学校は生徒数が少ないくせに人の出入りが比較的多い所だと思っている。二年生までに十人は入れ替わっただろうか。それでも三年生のこの時期に転校生が来るとは想定外だった。それも二人。
先日見たエイラとマリエルがそこにいる。
この学校は一学年一クラスしかないから、俺と同学年なら当然クラスメイトになる。とはいえ二人とも同い年だったとは。
エイラはたどたどしく、マリエルはそれよりは多少流暢に聞こえる日本語で挨拶をした。
この学校には日本語が母国語ではない生徒が一定数いるので、誰もそれを気にしない。
数日経つと、マリエルは普段は日本語で、英語が使える人とは英語で結構交流していた。エイラは時折英語で話をしている姿は見るものの、ほとんど一人で席に着いていた。
そして二週間が過ぎた。エイラは学校に来なくなった。
放課後、俺は担任の先生に呼ばれ、一緒にエイラの家に行くことになった。
エイラと特別な関係にある訳では勿論ない。近所だからサポートして欲しいと頼まれたのだ。
所属していた部活動はもう殆ど出席しなくなっていたので、出来ることなら何でも手伝いたいと思っていた。
エイラとお母さんを交えての会話で、やはり言葉の壁が大きいことを実感した。
以心伝心などと言うことは簡単にできないのだ。
うちの学校はそういう子が何人もいるので、この手のトラブルに慣れている。
経験上一番なのは食べ物で懐柔することだ。
早速、自分の母親に相談して、団地の自治会室を借り、小さなパーティーをすることにした。
名目はエイラとマリエルの引っ越し記念。この老朽化した団地には似たような家族が何件もいるため、子供繋がりでそういう集まりは年に何回かある。
パーティーと言っても、皆で何かを持ち寄って食べて話をするだけだから気遣いは要らない。
ただし、一つだけルールがあって、参加者全員と一回は個別に会話をしなくてはならない。
エイラさえ来てくれれば、きっかけは掴めるのだが。
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