世界を一寸だけ平和にする方法 ~言葉に付け足すものは~
睡蓮
第1話 隣人達の挨拶
夏休みがあと三日で終わる。
一人で昼食を食べた終わったらチャイムが鳴った。今日からやっと課題をやり始めたというのについていない。
残暑がとても厳しい上にエアコンの調子が良くないので、勉強の能率は極めて悪い。
そんな時なので、少々不機嫌な様子でドアを開けた。
目の前にいたのは透き通るような白い肌をした女性とその後ろに隠れるように立つ女の子。誰がどう見ても日本民族ではないとわかる銀色混じりのブロンドの髪と熱帯の海のごとく鮮やかな水色の目をしている。
「はじめまして、隣に来ましたアマンダ=ノルリアンと言います。後ろにいるのは娘のエイラです。これからよろしくお願いします」
エイラがちょこんと前に出て、母親と一緒にお辞儀をした。
「よろしくお願いします」
必死に暗記したとしか思えないたどたどしい言葉で彼女は挨拶をした。
「あ、ああ、あ、えっと、俺は
イントネーションがおかしい日本語に調子を崩されて、俺の調子も狂ってしまう。
「淑哉さん、ね。エイラと仲良くしてね」
その時はそれだけだった。ただ、その日はそれだけではなかった。
エイラ達が来てから一時間くらい経った頃、また家のチャイムが鳴った。課題の進みは極めて悪いから、今回も不機嫌そうにドアを開けた。
そこにいたのは黒い肌をした女性と横に並ぶ女の子。もちろん日本民族ではないだろう。特有の縮れた髪をカチューシャで抑え、後ろに束ねている。
「はじめまして、隣に来たルイーズ=エルスです。隣は娘のマリエルです。これからよろしくお願いします」
「はじめまして、マリエルよ。これからよろしく」
「あ、はい、竜石淑哉です。よろしくお願いします」
さっきエイラと挨拶を交わしたことが予行練習になったのかスムーズに言葉が出てきた。
マリエルはエイラよりも随分活発そうで、日本語もかなり聞き取りやすかった。
「忙しいところを邪魔しちゃったかしら」
不機嫌な様子を気取られたか、ルイーズさんはそう言ってドアを閉めようとした。
「ママ、トシヤとちょっとお話ししていい」
「忙しそうだから、またあとにしなさい」
マリエルの願いは届かなかった。
その二人に嫌悪感があった訳ではない。きちんと課題を済ませなかった自分が悪いのだ。
とても情けない気持ちになりながら、「またあとでね」と言い、俺はドアを閉めた。
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