第9話

 五組のコートに飛んできたボールは奈菜ちゃんの腕でバウンドして、そして沙絵ちゃんに渡される。沙絵ちゃんはそのボールを美緒ちゃんにパスして、美緒ちゃんがアタックする。これで女子もゲームを進めていた。

 私は一人ひとりのサーブする瞬間をスマートフォンに収めていった。

 美緒ちゃんの姿勢はかっこいい。いかにも経験者という感じがする。

 沙絵ちゃんはちょっとぎこちない。小柄だから力が弱いのだろう。

 奈菜ちゃんは反対になれた手つきでボールを飛ばす。大柄でしかもテニス部だから、腕は鍛えられている。

 そして茜ちゃん、香鈴ちゃん、七海ちゃん。みんな緊張した様子だ。特に香鈴ちゃんは、この六人の中では一番下手だろう。私がそんなことを言える立場じゃないけど、なんとなく見ててそう思う。


 私は友達がいない。このクラスのなかで一人浮いてしまっていると思う。学年が上がり、新クラスが発表される日、友達を作るために一番大切な日、私は風邪をひいて学校を休んでしまった。そのせいでこの二年五組の中で親しい友達を作ることが出来なかった。広瀬南。みんな私を広瀬さんと呼ぶ。

 美緒ちゃんが私をチラッと見たのが分かった。画面の中の美緒ちゃんがこっちを見た。私は目が合った気がした。

 もう一度、友達になりたいな。ふとそう思った。今の私たちは、きっと友達とは呼べない。

 でも、難しいな。美緒ちゃんは茜ちゃんたちのグループだから。茜ちゃん、七海ちゃんと親しくならない限りは、あの三人のグループに入れてもらうことは難しいだろう。私もクラスの一員になりたい。こんなところで一人スマホをいじるのではなく、あの列の中に入って、バレーに出場している子たちを応援したい。

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