第8話

 七組側のコートから飛んできたボールを七瀬くんが受け止める。そのボールをセッターのポジションについた村田くんがトンっと空中にやわらかく押し上げ、そして白石くんが地面にたたき落とす。その構図は五組のリードを保ったまま第二セットの女子への引継ぎを迎えた。

 全八クラスでトーナメント戦をするので、一種目あたり、三学年すべて合わせて二十一試合行うことになる。よってどうしても時間を節約しながら進行しなければならず、バレーボールは第二セットまでしかない。女子がこのままリードを守れるかが勝負の決め手だ。男子は無敵だとクラスの誰もが信じていた。

 女子にもバレー部のエースがいる。茜ちゃん、七海ちゃんと同じグループを形成している美緒ちゃんだ。茜ちゃんは両親が外国の出身で、少し変な日本語を話す。そんな茜ちゃんの親友が七海ちゃんで、その二人のグループに今年から美緒ちゃんが加わった。

 私は知っている。去年までは友希ちゃんと美緒ちゃんがいつも一緒にいたことを。友希ちゃんは最近いつも一人でいる。ケンカしたという話も聞いたことがないし、なぜ二人は分かれてしまったのだろう。女子の難しさを、私はそこで感じた。

 友希ちゃんは無口な子で、美緒ちゃんもそれは同様。私は、その二人では話題が持たず、美緒ちゃんが茜ちゃんに引き抜かれたのだという風に見ていた。

 かわいそう。なんとか友希ちゃんがこれから一人にならずにいられればいいな、と私は願う。

 一学期も終わりに近づいた夏の日、私は一人で帰っていく友希ちゃんを見た。慌てて追いかけて、走って抜き去るギリギリのとき、私は「友希ちゃんまた明日ね!」と声をかけた。果たしてそれが正解だったのかはわからないけど、あの子がそれをうれしいと思ってくれていたらそれでいい。

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