儚い空に輝く君の姿を見た

柊真

プロローグ

彩葉「いってきまーすっ!」


明るい声と共に、

勢いよく飛び出す彼女。


彩葉「今日は寒いな…。手袋てぶくろ…っと」


彼女の頬を冷たい風が通り過ぎていく。

手袋をしていても、ハンドルを持つ手がかじかんでくる。

吐く息にも白さが見える。


彩葉「はぁ…はぁ…うぅ~、寒い……、あっ…」


ふと、彼女の視界に見慣れた姿が飛び込んできた。

軋むブレーキ音が凍った空気を僅かに温める。


彩葉「おはよ~ございます!」

一輝「……どうも」

彩葉「今日は一段と寒いですね~」

一輝「……そうですね」

彩葉「じゃあ、学校行ってきます!」

一輝「……」


他愛もない会話。

どこにでもある日常の会話。

実りが無いと言えば、確かにそうだ。

当たり前の日常。


彩葉「あの人、私よりも早く起きてるのかな…」


彼女の頭の中は、彼の姿が浮かんでは消えていく。

黙々と作業を進める彼の姿。


彩葉「いけないっ! 遅刻しちゃう! 急がないと!」


いつの間にかペダルを漕ぐ足を止めていたようだ。

冷たい風をかき分けるように、

彼女の髪は前へと進んでいく。


決して止まることのない時間。

儚くも輝く空へ

二人の姿を映し出す物語。

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