第9話〜元勇者、情報を知る〜

さて……この状況をどうすればいいのだろう。一言で言うと、初めてあったエルフの女の子に、母親呼ばわりされてしまったと言う事。しかもこのエルフの少女、リアネの事を睨んでいる。とりあえず私は、この少女に


「えっと、私は……貴方の母親じゃないわよ?」


一応そう言ってみると、この少女は


「嘘!何で忘れちゃったの?ママ? 私……ママにずっと会いたかったんだよ?」


そう言われてもなあ……エルフの子供なんか身ごもった事ないのだけどな……実際に愛の営み、いや……あれは強姦か。そのような行為をしたのは、あの魔王としかしていないから、この子の母親と言うのは、まず間違っていると思う。エルフと営みとかやってないしなあ……


「何度も言うけど、私は貴方のママではないのよ……娘はこのリアネだけだし」


「そんなの信じられない!だってその子、髪の色違うよ!」


このエルフの女の子の言っている通り、リアネの髪の色は黒色をしている。まあ、確かに私の今の髪の色とは、全く違っているしな?

てまも綺麗な黒髪だよ?一応魔王も黒髪だったから、リアネは父親似なのかもしれんけど?


「ママは、私のママなの!そうでしょ? ママ」


リアネがそう言うので、私は


「ええ、この子の言っている事は本当よ?すまないけど……貴方のママではないから、ごめんね?」


私がそう言うと、エルフの少女が


「本当なの……?」


「ええ、ところで……そんなに私が貴方のママに見えるのかしら?」


「…………だって似てるんだもん……」


そう小さい声で言っていた。私に似てるか……つまり、この母親のエルフは、私にそっくりなのだろう。見た目が似てるのかな?

世の中には似たような人物が2、3人いるのか?って思うのだが、いや深く考えない事にした。あと気になった事があったので


「ちょっと気になったのだけど、どうして捕まっていたのかしら?」


そう、この子はバルバさんから奴隷と聞かされていた。元から奴隷だったという事は無いと思ったので、こうなった経緯を聞く事にしてみる。


「……えっと……私とママは一緒に出かけてたの、そしたら……男達がやって来て、なんか変な匂いを嗅がされて気が付いたら、暗い部屋の中にいたの……ママはいなかったし。あとずっと話せなかった。何回も話そうとしたけどその度に手錠が光ってたから……別の部屋から「あのエルフ、上玉だな。これは記憶を消して、売り払おうぜ?」「まあ、売り払う前に味見はするけどな。グフフフ」とか聞こえて来たの……それから別の所に連れ出されて、値段付けられて、私を買い取った人が「違ったか……けど、君はどうする?」って言われたから「ママに会いたい」って言ったら、「そうか、君はエルフだな? なら君の住んでる場所に送り届けるか」って言われて……」


なるほど、そんな事が起こっていたのか。しかし、そうなると……この子の母親のエルフは、とっくに売られてしまったのではないのか? なら……エルフの里に行っても意味が無いように思えるけど、けど……送り届けるって言ってしまったしな?それにバルバさんが、護衛を用意すると言っているし。それにしても味見って……そう言った奴ロリコンなのか?どう見ても幼いでしょこの子?

とりあえず私は、この少女に


「そう、けど……依頼は受けちゃったから、貴方をエルフの里へ届ける事にするわ、えっと……貴方が住んでたのは、エルフの里でいいのよね?」


「ママがそう言っていたから、間違いはないと思う……」


「そう、なら決まりね?準備が出来たら、出発するから、今日は休みましょうか?あ、それと……貴方の名前をまだ聞いてなかったわ、名前は何と言うの?」


「……エリン」


「そう、私はナナよ?宜しく、で、こっちが娘のリアネよ?」


「……リアネです」


なんか……リアネが不機嫌そうな顔をしていたけど、特に気にしない事にした。

自己紹介等が終わったので、私は二人に食事を作る。エリンの口に合うかどうかと心配したけど、「美味しい……」って言ってくれたので、それは問題なかった。食事が終わってから、私は風呂の用意をする。

実はこの家、風呂付の物件だったので、本当にバルバさんには感謝しているのであった。

魔力が使えない私が、風呂を暖めるには、魔鋼石(火)と言うアイテムが欠かせなかった。

この魔鋼石(火)は、水の中に入れると、発熱するように出来ていて、一個で十分な温度、二個で熱湯な程度の温度になるのである。

魔法を使えるなら、火魔法で暖めるとかするのに、私は魔法が使えないからな……本当に魔法が羨ましい。もし魔法が使えたら使いまくるのにな……って思っていたりする。

風呂を暖めた後、私はリアネと一緒に入る事にした。エリンに「一緒に入る?」って聞いたけど、エリンは断って、疲れたから寝るって言ったから、寝る場所を用意して、寝かしつけてから、リアネと一緒にお風呂に行く。

まあいつも一緒に入っているので、すっかりと慣れてしまっているが、自分の体を見ても興奮はしなかった。女になってしまって随分経ってしまったしな?

けど、男の体を見て興奮するかといわれると、それもNOだ。男の体で思い出すのは、あの魔王だし。結構引き締まった身体だったかなあ……魔王って引きこもってばっかりだけど、アレは結構大きかったような……って何を思い出したんだ私は、忘れる事にしよう……うん。

リアネと一緒にお風呂に入った後、明日の準備をして、リアネと一緒に眠る事にした。

それにしても……護衛か……一体誰なんだろうな……? そう私は、思っているのであった。

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