第10話〜勇者、探す〜

俺は旅をしている。

何で旅をしているかは理由があるのだが……とりあえず目的があるので旅をしているのだ。

そんな俺は、ある場所へと辿り着く。そこは、奴隷売買を斡旋している建物だった。

奴隷……奴隷は、普通に認められているので、なってしまった者は、可愛そうだとは思う。

けど俺一人じゃ、奴隷解放などという事が全く出来ない。

奴隷制度が無くなると、困る国々だってあるからだ。

じゃあ何で俺が、その奴隷売買をしている建物にいるのか?と言うと。こんな噂を聞いたからだ。今回の奴隷オークションに「銀髪の女性が、出品される」と言う事を。

銀髪の女性……俺は、その銀髪の女性が俺の好きな彼女かも知れないと思ったからである。

奴隷になっているのだとしたら、救い出してあげたい……。そう思って、この奴隷オークションに立ち寄ったのだ。

時間になり、司会の男が「奴隷オークションの始まりです、今回は目玉商品もありますので、皆様、大いに楽しめると思いますぞ」と、言っていた。良く見ると、俺の他に裕福そうな男や、目をギラギラさせた男などが、集まっている。最初に紹介されたのは、獣人の男だった。

司会者が言うには、この男は、力仕事とか雑用に最適だと紹介している。

買う奴はいるのか?と思っていると、売買成立したらしく、その獣人の男はある女に引き取られて行った。一体何に使うのだ?いや、俺がこんな事を考えても意味が無いよな?目的は違うのだから。続いて司会者が紹介したのは、栗色の髪をした少女だった。

少女の顔は良く見えなかったが、絶望感を漂わせている。まあ……気持ちは分かる。あの少女は自分がこれからどうなるか?分かっているのだろう。

俺はこの子を助けやりたいと思ったが、俺の目的は、銀髪の彼女なのだが……

懐に余裕があったので、この子を助けたら開放しようと思って、この少女を落札しようと思ったが、先に契約成立してしまった。少女を買い取った男は、「よし、私の物になったのだから、たっぷりと可愛がってやるぞ、さあ、来るのだ」と、言って、少女を連れ去っていた。

こうなれば俺に手出しできる筈も無く、俺は少女に、強く生きろ……と、願うしかなかった。

生きていれば希望があると信じる事にしよう……

少女が買い取られた後、司会者の男が「さあ、続いては目玉商品ですぞ、銀髪の女性です」

来た!俺はそう思って、その銀髪の女性を見てみる。後姿しか見えず、顔が全くわからなかったけど、確かに銀色の綺麗な髪をしていた。座らせているので、身長がどのぐらいあるのか? それさえも解らなかった。

司会者の男が「さあ、珍しい銀髪の女性ですぞ、高く値を張った者にお譲りいたしましょうぞ」

そう言うと、何人の男が金額を吊り上げる。

中には金貨を提示する者まで現れた。俺も一応、金貨は持って来てはいる。

手持ちの金で、落札出来るかどうか不安だったが、何とか金貨百枚程度で、俺の物にする事が出来た。しかし……金貨100枚以上か……凄い値段だな。

金貨一枚でも稼ぐのは大変なのに、100枚あったら、小さい家ぐらいは買える値段だぞ。

まあ俺は、結構稼いだから、問題はないけどな……

とりあえず……何とか落札出来たので安心した。

俺が銀髪の女性を買い取った後、顔をよく見る事が出来た。顔をよく見ると、全く違っていた。というか幼すぎる。俺の求めている彼女とは全然違っていた。

この子……子供じゃないか……まあこの子が他の者から救えただけでよしとするか……

俺は困った。この子は耳が尖っているから、エルフと呼ばれる種族なのだと思う。

俺は、この少女に


「そうか、君はエルフだな? なら……君の住んでる場所に送り届けるか」


そう言うと、彼女は無言で頷くだけだった。この少女……話す事は出来ないのか?ふむ……エルフの里に届けたいのだが、俺はまだこの国で探したいしな? なら……俺は、とりあえずこの少女を運んでくれる人を探す事にした。色々な人に聞いて、何とか引き取ってくれる人を見つける事に成功。その男に事情を話すと、男が「成る程、ちょっと気になったのだが、何故そんなに大金を持っていたんだ?私には普通の男にしか見えんがな?」

そう言われたので、俺はこの男にある物を見せる。それは、セレンディア王国から渡された物で、これを持つ者は


「ま、まさか……勇者殿でしたか!?」


どうやら、この男はこれの事を知っているみたいでほっとした。


「ああ、まあそう呼ばれている。で、引き受けてくれないか?もし受けなかったら……どうなるか解るよな?」


ちょっと怒気を込めて脅してみると、あっさりと陥落した。ちょっとやりすぎたか……?とは思うが、まあいいだろう。とりあえず俺は、この男にエルフの少女を引き渡す。引き渡した後、男が


「勇者殿、これからどうするのです?」


そう聞いて来たので、俺は


「まだ、この国に少しだけ滞在してみる。探している人がいるのでな」


「探している人ですか……ちなみにどのような人物で?」


「そうだな……ちょっと聞くが、この国で銀髪の女性を見た事があるか?」


俺がそう聞くと、男が


「ああ、ありますよ」


「それは本当か!で、何所にいる!」


「く、苦しい……首を絞めないで下さい! 話しますから」


この男に聞くと、その銀髪の女性は、ナナと言うらしく、この男の仕事仲間なのだと言う。じゃあ、彼女かも知れないじゃないか!と思っていると、男が


「あ、でもそのナナさん、子持ちですよ? 可愛い娘さんがいます、それじゃあ私はこれで」


な、何だと……娘持ちだと……?じゃあ……相手の旦那がいるのではないか?じゃあ、俺の探している彼女ではないのか?……いや、子供と言うのももしかしたら、養子としてむかえたかもしれない。これは……一度会ってみないと解らないかもな……そう思っていると、少女と男が消えていた。

俺が考えている間に、いなくなってしまったみたいだった。

っく、どの方角に行ったか、解らないな……とりあえず……銀髪の女性がナナと言う名前だと言う事はわかった。なら、その女性に会ってみよう。あの男の仕事仲間だと言っていたから、この国にいる筈。俺は、そう決意するのであった。さて……何処から探せば良いのだろうか?

ここってバイトール王国だよな?

なら、この国には色々な人がいるし、そこから色々探ってみるとするかな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る