7ー②

─ナナの病室


 英雄達は、相変わらずベッドで眠るナナの枕元に立っていた。


「みんな、準備はいいな?……エゲツニウムよ、記憶を解放しろ!!」


 英雄がエゲツニウムの結晶を右手で握り込み念じると結晶は紫色に光り始めた。


「うぉっ……受け取れ、えつ子!!」


 衝撃に耐えながら、左手でえつ子の右手を握る。

「ぬぅぅぅぅっ……ユリーナどの、今でござる!!」


 えつ子は左手でユリーナの右手を握り


「えつ子さんの魂を引き剥がしてナナさんの元へ!!」


 ユリーナは左手でナナの胸に触れる。


「ナナさんの脊髄にある機械はプログラムを書き換えた!今だユリーナ!!」


 シアの両手は細長い針の形状に変わり、 ナナの首元に刺さっている。


「これが上手くいくか、正しいかは解らん!だが未来でセリカが生まれてくる為にはナナを起こさないといけないんだ!!頼んだぞ、えつ子!!」


「ぬわーっ!ッ………」


 えつ子は短い悲鳴を上げると、 気を失った。 引き剥がされた魂はナナの体に送り込まれたのだ。


……

…………



「ほわぁっ!?」


 えつ子は奇妙な声を上げて目を覚ました。


「えつ子!」


「えつ子さん!?」


「おお…拙者は自分の体に戻って来れたでござるか!?」


 体を離れ、ユリーナの魔法で一時的にナナの体へと入り込んだえつ子の魂は、無事、 元の体へと戻った。


「俺は戻るまで3か月も掛かったのに、えつ子は15分で戻れたのか。やっばり獣人ってのは凄いな」


「えつ子さん、上手くいきましたの?」


「大丈夫でござる!ナナ殿そっくりの半透明な人型……おそらくナナ殿の魂に、ヘアピンを渡して来たでござるよ!」


 えつ子が大声で言ったその時だった。


「う……ん…」


 今まで一言も発せず眠り続けていたナナが、小さな声を漏らした。


「ナナ!」


「英雄さん?私、どうして……?」


 周囲を見渡すナナ。その時、えつ子と目が合った。


「あなた、夢に出て来た狐の女の子……そうだわ、私はあなたにヘアピンをもらって……」


「それは、コレかい?」


 英雄はエゲツニウムの結晶を差し出した。


「これは、未来の君がこの時代に送ってくれたんだ。俺達の子供に持たせて」


「未来の私?それに英雄さんと、私の……?」


 少し恥ずかしそうに言うナナが言い終わる前に、 英雄は彼女の手を握った。


「ナナ、君が眠る前、俺は君に伝えられなかった事を3年も後悔していた。だから今度こそ、君に言うよ!俺は君を愛している。地球人とエゲツナー人だとか、そんなものは関係ない!俺の…妻になってくれ!」


「はい……私で良ければ」


「やったぁーー!!!」


 ナナの返事を聞くと、ユリーナ、シア、えつ子はまるで自分の事の様に喜んだ。


「英雄さん、この子達は……?」


「そうだな……君が眠ってから起きた事を、順を追って話していこう」


 英雄達がナナにそれまでの経緯を説明した直後だった。 シアの持っていた小型通信端末が着信する。


「もしもし。こちらシア……どうしたのリックさん?」


「おう、リック!」


「ヒデオ!?いつの間に目が覚めたんですか?それよりも、幻舞が突然起動しました!すぐMMS整備ドックへ来てください!!」

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