7ー③

─???


 何も見えない。聞こえない。匂わない。空気の流れも感じない。今の彼女には、目も、耳も、鼻も、体もないのだから。


「セリカ」


 彼女の名を呼ぶ声がする。そうか、自分はそんな名だった。


「今の貴女は魂だけの存在。産まれてくる可能性すら潰されて、存在が不安定なの。でも大丈夫。あなたのお父さんは、自らの魂を未来に飛ばして、あなたとお母さんの記憶を持って元の時代に帰った……あなたの存在を取り戻すために」


 謎の声の主は、セリカの魂に直接語りかけていた。その声の意味するところは、こうだ。


(ウチは……パパとママの所に戻れるの?)


「そうよ。あなたは生まれるべくして生まれた存在、救星主の娘ムスメサイア。行きなさい、世界を救うために。そして産まれなさい、愛する両親の元へ……」


【待て】


 謎の声とは別の声が、3つ重なりながら聞こえる。


黒鼈タルタルーガの娘よ】


 それは、青い竜、白い獣、赤い鳥の姿をした魂だった。


【そなたは時を駆ける事が出来るのだろう? ならば、我々が護れな かった救星主達を、消える前に連れてゆくのだ】


「死んだメサイア達を生き返らせて、揃えるって事?そんな反則までしなきゃ勝てないほどエゲツナー帝国ってヤバイの?」


 謎の声は3つの魂とは旧知の仲なのだろうか。


【存在が禁忌ともいえる橙龍タンジェロンが何を言う。……セリカよ、黒鼈タルタルーガ蒼竜ドラガォン白獣ライゲル紅禽ケツァールのメサイアを揃えるのだ……】


 そこで、彼女は目を覚ました。そこは見慣れたコクピットの中だった。


「……行こう、幻舞。みんなの所へ、そして平和な未来へ!!」


 セリカの声に答え、幻舞は背中から紫色の光を噴き出し、飛び去った。

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