6ー④
─???
漆黒の闇の中、 英雄は目を覚ました。そして、覚醒しきっていない脳味噌で今に至るまでを思い返す。鳥取砂丘でホアホーマの乗るマウヤケソを鹵獲し、機体から引き抜かれたエゲツニウム炉を何故か触ると、気を失った。そこまでは思い出した。
(状況を整理しよう。今は、何時だ?)
左手首のスマートウォッチを確認する。
2222. 6.15 (SAT) AM02:34
(夜中の2時!?7時間も気を失っていたのか!?っつーかここはどこだ?)
背中の感触は布団の様だ。ベッドではない。という事は、ここは香山の中にあてがわれた船室でも、医務室でもない。そして、嗅覚は古い壁と木材との懐かしい匂いを嗅ぎ取った。英雄はこの場所を知っている。
「英雄さん?どうしたの?」
彼を下の名前で呼ぶ女の声。そんな呼び方をする女など、記憶には一人しかいない。
「……セリカ!?」
「あらら、寝ぼけてるの?」
部屋が明るくなる。 英雄の隣にいた女がリモコンで照明を灯したのだ。
「うなされていたけど、嫌な夢でも見たの?」
その女は、セリカによく似ていた。だが、年齢も体型も髪の色も瞳の色も違う。
「ナナ!?」
英雄の隣で横になっている女は、かつてエゲツナー帝国から送り込まれた刺客であり、現在は富士の研究所で眠っているはずのナナだった。そして、古びた木造建築のそこは、鳥取県鳥取市に所在するはずの実家だった。
「
そう言うと、ナナは胸のあたりまで被っていた薄手の布団をめくると、英雄の右手を取り、自らの腹部に添えた。
「!!」
ナナの腹は大きく膨れている。 妊娠しているのだ。
「わっ!!」
英雄が思わず声を上げる。ナナの腹越しに、胎児が動くのを感じたから。
「芹佳ったら、パパが変な時間に起こしちゃったから怒ってるのかしら?」
静岡でも、広島でもなく、鳥取でナナと暮らしている自分。そしてナナの胎内にはセリカらしき仔がいる……
「あっ……」
「ど、どうした?」
「破水…しちゃったみたい……痛たたたたたっ!」
「ええーーーっ!?」
女体に関する知識が乏しい英雄でも、それがどういう時に起こる現象かは何となくだが知っていた。
「どがしたんね英雄?」
英雄の部屋に入ってきたのは、英雄の母・
「おかあ!ナナが!セリカが!どがぁしたらええんじゃ!!?」
「落ち着きんさい!まずアンタは病院に電話せぇ。運転は出来そうにないけぇ、おとうに任せんさい。 奈菜ちゃん、病院行くけん、ゆっくりでええけぇ支度しんさい」
そう言うと、佳代は下の階で寝る英雄の父・俊雄を起こしに降りてゆく。
「えっと、病院病院……」
英雄はスマートフォンを片手に、反対の手で分厚い電話帳をめくる。慌てるあまり、インターネットで検索するという方法すら思い付かないほど動揺しているのだ。
「ほんに、ウチの息子は世界を救ったんじゃろかねぇ……」
佳代は息子の姿を見て、つぶやいた。
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