第39話 春の入学式、ぴかぴかの一年生3


 次の日の朝。


「あ……あ……あ…………」


 朝のニュースを見て固まるジークちゃん。

 そこへ、起きぬけのたっちゃんが、おおきなあくびをしながら姿を現した。


「ふわぁーあ、ん? どうしたのジークちゃん?」


 青い顔で、ジークちゃんはゆっくりとテレビ画面を指差した。


「ここ、これ?」

「へ?」


 見れば、そこには昨日、入学式で会った女性の顔が大きく映っている。

入学式に侵入した変質者のニュースだ。


『犯人は毎年、複数の小学校に現れては保護者を自称し、子供達の姿を盗撮していたようです。自室からは幼児の写真や記録テープが二〇箱以上も押収され』


「あ、あの人……お母さんじゃなかったんだ……」


 たっちゃんも、肩口からパジャマをずり落としながら口角を引きつらせた。


『ですが、何故犯人を逮捕することができたのですか?』

『何でも、何故か犯人が物凄い剣幕で玄関に走り込んで来たらしく、不審に思った警備員に足止めされると『あたし保護者じゃないんです』と叫んだそうです』

『なんでそんな真似を?』

『さぁ』


   ◆


「はーい、オルちゃーん、ロスちゃーん、ランドセルはどーお?」


 同じ頃、エキドナ達は部屋で、ランドセル姿のオルトロス姉妹を愛でていた。


「うんばっちりぃ♪」

「ママありがとう♪」


 背中に赤いランドセルを背負い、エキドナに抱きつき甘えるオルトロス。

 エキドナは幸せそうな顔で二人をなでる。


「やっぱり学校で本物を見ると出来が違うわねぇ。そっくりに作れたわ♪」


 その時、一緒にいたキマイラとミノタウロスの二人も、うしろからエキドナに抱きついた。


「にゃ~、オルトロスだけずるいのにゃ~」

「わたし達も甘えたいもー」

「ちょっ、あなたたち」


 腰や背中に抱きつかれて、エキドナはちょっと嬉しそうに二人の頭もなでた。


「まったく、しょうがないわねぇ。ふふ、いいこいいこ」





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