第36話 ギリシャ神話、もうひとりの最強! アキレスちゃん登場!4


「ペルちゃーん! くそがっ! こうなりゃあたしの力で! 喰らえ!」

「バルムンク!」


 ジークちゃんはすかさず剣を召喚。


 二人は合図も無しに距離を詰めて切り結んだ。


 互いに最強の防御力を持つ不死身の肉体。


 全身全霊の力で全力で真っ向から斬り合う。


 無限の斬撃が続き、過激な戦いは終わらない。


 ジークちゃんは背中の中央以外は全ての攻撃が効かない。


 アキちゃんは足首以外は全ての攻撃が効かない。


 違うところは、アキちゃんはジークちゃんの背後に回らなければならないが、ジークちゃんは前からでも足首を責められるという事だ。


 普通に考えると、ジークちゃんの方が有利に見える。


 だがアキちゃんは楯を持っている。


 足首への攻撃は全て楯が防ぐ。


 一進一退の戦いは一〇分以上続き、ついに決着がつく。


 アキちゃんがジークちゃんの攻撃を剣で受け止め、楯を突き出しジークちゃんの視界を奪う。


 同時に、アキちゃんは楯と剣から手を離していた。


 視界を奪われたジークちゃんの背後へ流れるように回り込み、


「ふんっ!」


 強烈なエルボーを背中に叩き込んだ。


「ぐっ……」


 ジークちゃんは前のめりに倒れる。


「あたしの勝ちだね! でもこれで一勝一敗。引き分けかよ」

「すっきりしないわねぇ」


 たっちゃんとアキちゃんが消化不良の顔をする、その時だった。


「くはははははは、英雄ガールズ! ラードーンの力で死ぬがいい! やれ!」


 草むらから出て来たエキドナ達に、たっちゃん達が驚く間にラードーンが前に進みでる。

 ほんわかした雰囲気の少女は両手を頬に当てる。


「はぁーい、じゃあいくよぉ」


 ラードーンが二人に増えた。

 そのまま一〇人、三〇人と増えて、ラードーンが一〇〇人まで分身した。

 姿形をそのままに、同じ人間が一〇〇人。

 ただし、表情やしぐさが一人一人微妙に違う。


「はん、そんな幻影に騙されるあたしじゃ」

「実体があるんだよぉ」


 まのびした、ぽわぽわボイスでラードーンは説明する。


「わたしの能力はね、自分のコピーを作ることなの。だから実体があって、それぞれに意思がちゃんとあるの、だから本当に一〇〇の軍勢と同じなの、わかってもらえたかな?」


 えへ♪ と可愛く笑うラードーン。

 絶体絶命だが、むしろたっちゃんとアキちゃんは戦士の笑みを浮かべた。


「アキちゃん、こいつらを倒した数で勝負決めない?」

「OKだぜ! いくぜラードーン!」


 ジークちゃんとペルちゃんも、


「そういうことならばやりましょう」

「エリートの私が殺しつくしてあげるわ」


 一斉に一〇〇人のラードーンが襲い掛かって来た。

 四人の英傑はそれぞれの愛剣を手に奮闘。

 と言っても、ラードーンの肉体は不死身。

 不死殺しのハルペーも、そもそも最初からコピーされたかりそめの命では無意味で、つまりどういう事かと言うと。


「いやぁん♪」

「あ~れ~」

「だめぇっ!」

「えっちぃ」

「あぁん♪」

「見えちゃうよぉ!」

「ばかぁん❤」

「みんな見てぇん」


 体は不死身だが服は治らない。

 よって、服を、下着を切り裂かれて次々全裸になっていく。

 コピーは全員同じ姿だが、性格は違うようで、一〇〇人一〇〇様の反応を見せてくれる。


 エロい。凄くエロい。


 恥じらって必死に体を隠そうとする固体。

 口では恥ずかしそうにしながらちゃんとは隠そうとしない固体。

 むしろ堂々を見せつけ露出狂のように快楽を覚えている固体。

 様々だった。

 うちの一体がヘラちゃんに背後から近付いて、


「マランドーズ!」


 召喚された大剣で全裸にされた。

 あっとう言う間に公園は全裸の爆乳爆尻全裸美少女で埋め尽くされてしまった。

 まだ残っているのは一人だけ、おそらくは本体だろう。


「今んとこ互いに四九人ずつ、あれを倒した方が勝ちよ!」

「おおっしゃあ!」


 たっちゃんとアキちゃんが咆哮しながら斬りかかる。

 が、それより先にヘラちゃんが飛び出した。


「生前同様帰り討ちなのですよ!」


 ラードーンの服が、ブラが、パンティがマランドーズの一撃で粉々に飛び散った。


「あらぁ?」


 自分の、色々とモロ見えの体を見てから一言、


「いやぁん♪ えへへ、裸になっちゃった♪」


 ぺろっと舌を出して、やっぱり柔和な、でもちょっと赤らめた笑顔を見せた。


「この戦いは、引き分けなのですよ」


 ヘラちゃんは振り返り、たっちゃんとアキちゃんに言う。


「わたしは、これからも今の部屋に住むのですよ」

「なっ、なんでだよ!?」


 アキちゃんがショックを受けて涙目になる。

 だから、ヘラちゃんは眉尻を下げて謝った。


「ごめんなのですよアキちゃん。でも、ヘラちゃんは今の生活が好きなのですよ。ジークちゃんの作る洋食や、たっちゃんの作る和食がおいしくて、ジークちゃんとお風呂に入ってたっちゃんと一緒にゲームをして遊んで、そして大好きなマスターのいる今の生活が好きなのですよ。だから、アキちゃんやペルちゃんの事は今日会ったばかりでまだよくわからないし、あっ、でも嫌いじゃないです。むしろこれから仲良くなりたいのです、でも」


 そう言って、ヘラちゃんは笑った。


「わたしの今の家族は、たっちゃんとジークちゃんなのですよ」

「へ、ヘラちゃん……」


 たっちゃんはちょっと感動して笑う。

 ジークちゃんも笑顔を浮かべる。

 ヘラちゃんの無邪気な笑顔に、アキちゃんは悔しそうに涙を浮かべながらも、


「うぅ、わかったよぉ、悔しいけど、ヘラちゃんは任せたぞ!」

「任せなさい、あたしヘラちゃんのお姉さんなんだから。というわけで」


 たっちゃんの目が、一〇〇人の全裸美少女、ラードーンに向く。


「お姉ちゃんが最後にばしっと決めてやろうかね」


 天叢雲剣を振りあげる。

 一〇〇人の全裸美少女達が途端に震えて、本体を除き一斉に姿を消した。

 一人だけになったラードーンはエキドナのそばまで駆け寄る。


「エキドナママ~」

「ひえぇええ! こいつら全然消耗していない~!」


 たっちゃんが笑う。


「と、いうわけでいつも通り」


 天叢雲が振るわれる。


「裸王斬!」


 たっちゃんがエキドナ達の間を通り抜けると、エキドナ、キマイラ、ミノタウロスの服と下着が弾けとんだ。


「あ~れ~」

「にゃにゃ~ん、見えちゃうにゃ~!」

「も~、だめぇ~、えっちぃっ!」


 ラードーンも含めて、裸にされた四人は慌てて逃げ出した。

 たっちゃんは天叢雲を肩にかけて、ヘラちゃん達へ振り向いた。


「いえーい♪」


 たっちゃんは、可愛い笑顔と一緒に、ブイサインを突き出した。

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