第34話 ギリシャ神話、もうひとりの最強! アキレスちゃん登場!2


「貴方は何を言っているんですかぁああああああああああああ!?」


 羞恥のあまり、ジークちゃんは涙目になって抗議する。


「あ、でもマスターの独り占めはだめよ。する時は二人一緒に」ぽっ

「不倫は文化ですか貴方は!?」

「え? あたしの時は一夫多妻制だったよ? ていうかあたしのお父さん美人姉妹を側室にするために呼び寄せて、うぅ、そしてそれが原因でお兄ちゃんはあたしの手で」


 わざとらしく泣く真似をするたっちゃん。

 ジークちゃんは額に青筋を浮かべる。


「父親の言葉を聞き間違えた貴方のせいでしょう……」


「だって『ねぎせ』って言うから遠まわしに殺せって意味だと思ったんだもん! ていうかお父さんの側室を二人も奪って自分のものにしてキズものにしたお兄ちゃんが悪いじゃん! 結婚詐欺の片棒担いだからってお兄ちゃん側に回る気なの?」


「それには触れないでくださいぃいいいいいいいいい!」


 ジークちゃんは頭を抱えながらうわごとにように、


「うぅ、あれは違う、違うんだぁ、私も悪気があって騙したわけじゃ」


 と、ぶつぶつ呟いている。


「ふっ、とにかくそっちが貧乳巨乳でこっちが普乳爆乳である以上、おっぱい戦闘力はあたしらのほうが上よ」

「貧乳言うなぁ!」


 勝ち誇った顔のたっちゃん。

 アキちゃんは途端に涙目になってしまう。

 最初の勢いはどこへ行ったのだろうか?


「一体どうしたのですか?」


 ようやく、部屋からヘラちゃんのご登場だ。

 ほっぺたにクリームが付いているところを見ると、ケーキを食べ終わってもたっちゃんとジークちゃんが戻ってこないので、様子を見に来たらしい。


「こんにちはヘラちゃん。私はペルセウス、貴方を助けに来てあげたわ」


 アキちゃんは涙を拭う。


「あたしはアキレスだ、よろしく頼むぜ!」

「おお、ヘラちゃんと同じギリシャの英雄なのですね。よろしくなのですよ」


 ヘラちゃんは両手を出して二人と握手をかわす。

 すると、


「「じゃあ……」」


 アキちゃんとペルちゃんは、ヘラちゃんと握手した手をそのまま握って引っ張った。


「「今日からヘラちゃんはこっちの部屋に住むんで」」

「「待てい‼‼」」


 たっちゃんとジークちゃんの鋭いツッコミだった。


「なんでそうなんのよ!?」


「おいおい何言ってんだよ、ヘラクレスはギリシャ神話を象徴するギリシャ神話最強の英雄だぜ? あたしらギリシャ組と同じ部屋に住むに決まってるだろうが」


「そんなこともわからないのかしらこの馬鹿共は、どうすんのよあんたら死ぬの?」


「ふざけんじゃないわよ! ヘラちゃんはうちのマスコットなんだからね! あんたら新人のくせに生意気よ!」


「新人古参は関係ねぇーだろが! とにかくギリシャの英雄なんだからヘラちゃんはあたしらと同じ部屋で暮らすんだよ! 文句があるならかかってきやがれ!」


 アキちゃんが腕まくりをして拳を握る。


「上等じゃないの! ヘラちゃんをかけて勝負よ!」


 たっちゃんも腕まくりをしながら拳を振り上げる。

 二人は額をぶつけあい叫ぶ。


「「ヘラちゃんは渡さない!」」


 当のヘラちゃんは、目を点にしながらジークちゃんを見上げた。


「ジークちゃん、二人は何を争っているのですか?」

「せ、説明が難しいですね……」


   ◆


 たっちゃん達は、人気の少ない公園に来ると互いに対峙する。


 ヘラちゃんは全身をりぼんで可愛く装飾されて、おでこに『けいひん』と書かれたシールを貼られてベンチに座っている。


 それを、草むらからエキドナ達が見ていた。


「にゃー、エキドナ様、あいつら仲間割れしている様子なのにゃ」

「しかも相手はアキレスにペルセウス。これは凄い戦いだも」


 エキドナは悪の女幹部風に笑う。


「ふはははは、あいつらが戦い消耗したところを」


 背後に立つ女性を手で指す。


「このラードーンで滅ぼしてくれるわ!」


 背が高く、腰まで伸びたウエーブヘアーの柔和な笑みを浮かべた少女が答える。


「うん♪ エキドナママのためにがんばるよ♪」


 全体的にふっくらとした印象を受けるほど、むちっとしたグラマラスボディを揺らし、ラードーンは優しく笑う。


 ラードーン。九頭龍ヒュドラの姉で、不死身の一〇〇頭龍である。


「くくくくく、貴様らの命運もここまでだ英雄ガールズ。醜い仲間割れをするがいい、貴様らが戦えば戦う程、我らの漁夫の利となるのだ」

  

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