第33話 ギリシャ神話、もうひとりの最強! アキレスちゃん登場!1
「『運勢』とか『運がいい』の『運』ていう漢字さぁ、なんで『運ぶ』と同じなの?」
「「…………」」
ジークちゃんとヘラちゃんの時間が止まること五秒。
ジークちゃんは先程買って来たケーキにフォーク刺して、テーブルに置く。
「たっちゃん、それは私が貴方に聞くことでは?」
ヘラちゃんもリビングのテレビから視線を外して答える。
「ドイツ人とギリシャ人のわたし達に漢字のことを聞かれても……」
「えー、だって気になったんだもん」
「まったく、貴方と言う人は」
その時、部屋のチャイムが鳴って、たっちゃんが立ち上がる。
「ああ、あたしでるよ。はいはーい、どちらさまですかー?」
玄関まで行って、ドアスコープをのぞくこともせずに解錠。
ドアを開けると、二人の少女が立っていた。
一人は中背でスレンダーな体付きで、髪型をツーサイドアップにした元気そうな女の子。
もう一人は背が高く、ジークちゃん程ではないが、発育の良い胸をしている。髪は長いウェーブヘアーで、ちょっと人を見下したような目つきだ。
スレンダーな少女が、平らな胸を張って、
「ギリシャ神話最強の英雄! アキレス様だぜ!」
「ギリシャ神話最強の英雄! ペルセウスよ!」
「へ? え? ええ!?」
「なにやらデジャブですが」
後からジークちゃんと、そしてヘラちゃんが来る。
「また新たな英雄ガールですか。貴女方もマスターに呼ばれたのですか?」
「おう、お前がジークフリートか、デッケェなぁ」
「顔も、それなりに綺麗だと言ってあげるわ」
「そ、そんな、私は」
「こらっ、あたしを無視するな」
たっちゃんが両手を上げると、アキちゃんとペルちゃんの視線が集まる。
「悪いな、日本人ってことは、お前がたっちゃん、とかいうヤマトタケル? 日本神話の英雄だったな、喜べ、このギリシャ神話最強のアキレス様がお前らのチームに電撃参戦してやんぜ!」
「私達、貴方達の向って左隣の部屋に引っ越してきたのよ。ギリシャ神話最強の英雄であるこのあたしが来たのだから、感謝して欲しいわね」
高飛車に見下し、身長の問題で物理的にたっちゃんを見下すペルちゃん。
だがたっちゃんとジークちゃんはイマイチな顔だ。
「え~、ギリシャ神話最強? なんで最強が二人もいるのよ? だいいちギリシャ神話最強はヘラクレスでしょ?」
「アキレスとペルセウスもそれなりの英雄だとは重いますが……」
「はぁっ? フザケんじゃないわよ! あたしらの伝説、日本じゃマイナーなんじゃない?」
「無知蒙昧のバカ共に教えてやるわ、私ペルセウスは、ギリシャ神話最強の武装戦士なのよ。
あらゆるものを封じ込める袋、キビシスの袋。
不死殺しのデスサイズ、ハルペー。
装備者を不可視にする、ハーデスの兜。
アテナからもらった、鏡の楯。
ヘルメスからもらった空飛ぶサンダル、タラリア。
そしてあの怪物ゴルゴンを討ち取ったのよ!」
確かに、武装は相当なものだ。
普通の英雄は一つか二つの伝説の武器を持つのに、ペルセウスは一人で五つもの武装を持っているのだ。
「そしてあたしは物理的に全パラメーター最強よ! イリアス最速と言われる俊足。足首以外は不死身の防御力。優勢だったギリシャ軍を一人で無双したペンテシレイアを一方的に瞬殺する攻撃力。しかもあたしの武装は鍛冶の神ヘパイトスの手製だぜ。最強だろ、つか最強だし」
「へぇ、思ったよりやるじゃん、正直アキレスは足首以外不死身、ペルセウスはゴルゴン倒した人、ぐらいしか知られてないからね」
「ですが、今の話だと前回のクーちゃん同様、かなりの戦力アップですね」
感心するジークちゃんを見て、アキちゃんは得意げに、
「そうそう、それにこれで全タイプの英雄コンプリートだぜ。筋力最強ヘラクレス。防御力最強ジークフリート、武装最強ペルセウス、オールラウンダーヤマトタケル、そしてスピード最強のアキレス様ってわけだ」
「いや、スピード最強ならもうクーちゃんがいるよ」
「へ?」
「ていうかあんた、足首以外は不死身って、ジークちゃんとキャラ被ってるわよ」
「うぐっ!」
「むしろ貧乳だし、胸の差でジークちゃんの勝ちね」
「ぬぐぁ!」
「たっちゃん、貴方は何を!」
ジークちゃんは胸を抱き隠し、顔を真っ赤にして怒鳴る。
「え~、だってエロさならジークちゃんが一番だもん」
凍りついたアキちゃんが、怒髪を突いた。
「そ、そんな胸がなんだっつうの! あたしだってなぁ、ほらあれだ! 脱いだら凄いんだぞ!」
負けじとたっちゃんも、
「あんたあたしのジークちゃん馬鹿にしてんじゃないわよ! ジークちゃんなんてねぇ! 脱がなくても凄いんだから! まだ夏じゃないのに家でも外でもずっとホットパンツにチューブトップで歩くたびごとにブルンブルン爆乳揺らしてお尻もムッチムチで一緒にお風呂に入ったらもう筆舌尽くしがたいエロさなんだからね! この体を将来自由にする男がいると考えたらもうたまんないんだからね! マスターなら許すけど!」
「貴方は何を言っているんですかぁああああああああああああ!?」
羞恥のあまり、ジークちゃんは涙目になって抗議する。
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