第29話 わんわんパニック 忠犬はこの私だ!1
「ええいまたしても英雄ガールズめぇ!」
いつものリビングで、エキドナは握り拳を震わせる。
「次こそは勝利を収めるべく、ただ人外ガールをぶつけるのではなく、もっと綿密な計画を立てるのだ。解ったかキマイラ、ミノタウロス……う?」
ソファに座るキマイラの横には、相方の姿が無い。
「むむ、キマイラ、ミノタウロスはどうした?」
「にゃにゃ? もしかしてまた」
キマイラが周囲を見回す。
すると、廊下の方から、
「も~、部屋から出て来るも~」
「これはミノタウロスの声、どうしたミノタウロス!」
エキドナとキマイラが慌ててミノタウロスの部屋まで行くと、
「あ、エキドナ様、キマちゃん」
ミノタウロスが、自分の部屋の前でおろおろしている。
「ミノっち、一体どうしたのにゃ?」
「うぅ、それがぁ……」
泣きそうな顔で困ってしまうミノタウロス。
ミノタウロス自身の部屋は固く閉ざされて、
「うえーん、いいんだいいんだ、どうせ私なんて役立たずなんだにゃお……」
「スフィちゃん落ち込まないでも! というよりもそこはわたしの迷宮だも、人のひきこもりスポット犯しちゃだめだも!」
エキドナとキマイラは、思わず頬を引きつらせてしまう。
「にゃ~、ミノタウロスの次は……」
「スフィンクスがひきこもりに……」
「エキドナ様、わたしにくれたこの勇気が出るメガネはもうひとつないのかも?」
「えっっ!?」
ただのメガネを指で指すミノタウロス。
エキドナはだらだらと汗を流して、言葉に詰まる。
「えと、ほら、あれよ……それは凄い特別製なものでそうそう作れるものじゃないのよミノタウロス」
「も~、それはざんねんだも」
「ええそうね! 本当に残念だわぁ!」
眉尻を下げるミノタウロス。
せいいっぱい誤魔化すエキドナ。
意味が解らず頭上に疑問符を浮かべるおバカなキマイラ。
引きこもっているスフィンクス。
そこへ、
「フッ、どうやら、またボクの出番のようだね」
いつのまにか玄関に立っていたのは、隣の部屋に住んでいるはずの北欧神話組、ロキだった。
部屋のカギは当然かけているのに、どうやって入ったのか。
「ロキ、貴女いったい」
「おっと文句は受け付けないよ。ボクはあまりに君たちが不甲斐ないから助けてあげるってだけさ」
「助けるって、そういえばロキ。貴女だけまだ仲間を連れてきていないわね」
小柄なロキは、平らな胸を自慢げに張って鼻を鳴らした。
「フフン。ボクは君達と違って量より質を取るのさ」
キマイラとエキドナが、眉間にしわを寄せる。
「それはどういう意味だにゃ!」
「撤回しなさい!」
「そうだも、ひどすぎるも、あっ」
「へっ?」
ミノタウロスが素っ転んで、おっぱいでロキを押しつぶした。
ロキはミノタウロスの超乳に首から上を包みこまれて、苦しそうに腕をバタつかせている。
「イタタ、ころんじゃったも……」
「ぶはぁっ! 死ぬかと思った!」
ロキがミノタウロスの超乳から這い出して、キッと睨む。
「何するんだこのおっぱいおばけ!」
「おっぱいおばけじゃないも! ミノタウロスだも!」
と、言いながらミノタウロスの豊満過ぎる乳房が大きく弾んだ。
少年と見分けのつかない体つきのロキは額を青筋でいっぱいにして、握り拳から血を流した。
ぶちっ
ミノタウロスの服のボタンが弾け跳んで、スイカのようなおっぱいがやわらかく、ぶるるん、とあふれだした。
弾け跳んだボタンは、ロキの額を直撃した。
「やぁんっ、まただもぉ~。うぅ~、ブラのフロントホックが壊れて閉らないも、胸を小さくする方法があったらいいのに……」
ロキが血の涙を流し始める。
エキドナは眉根を寄せて唸る。
「困ったわねぇ、日本じゃKカップまでしか売ってないし、そうだわ、アラクネに頼んで特注のブラを作ってもらいましょう。かわいいデザインのをね♪」
「もー、嬉しいぃもー♪」
ミノタウロスは満面の笑みを浮かべてエキドナに抱きついた。
エキドナも、そんなミノタウロスの頭をやさしくなでて笑顔を浮かべる。
底なし沼のような瞳から血涙を流し、震えるロキの口からは、常に呪詛が漏れ続けていた。
「こいつらコロスッッ」
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