第28話 魅惑のクイズクイーン、スフィンクスさん4


「というわけで始まりました、栄有商店街、春のクイズ大会!」


 商店街のイベントスペース。


 そのステージの上で、四つのチームが席についていた。


 AチームとBチームは一般参加者。

 Cチームがたっちゃん、ジークちゃん、ヘラちゃん。

 Dチームがスフィンクス、エキドナ、ミノタウロス。


 頭の足りないキマイラは客席で応援している。


「みんながんばるのにゃー♪」


 観客に見守られる中、司会者のお姉さんがマイク片手に問題を読み上げた。


「ではラノベからの問題です。二〇一二年発売。鏡銀鉢によるパワードスーツバトル作品『忘却の軍神と装甲戦姫』の主人公、桐生アサトは冷凍睡眠で千年眠りましたが、起きたのはどんな世界? ①男が絶滅した世界 ②女が絶滅した世界 ③人間が絶滅した世界 ④人間以外の生物が全て絶滅した世界」


 四つのチームがそれぞれボードにマジックペンで答えを書く。


「これはマスターが持っているのを読みましたね」

「楽勝なのですよ♪」

「でもなんでもっと有名な作品の問題出さないんだろ」

「では、答えをどうぞ」


 Aチームが③、他は全員①と書いている。


「正解は①です。『忘却の軍神と装甲戦姫』は平成最強の少年兵が男が絶滅した千年後の未来世界に目覚め、地球唯一の男としてパワードスーツに乗り世界大戦に身を投じる作品です」


 Aチームが残念そうに肩を落とした。


「では第二問、歴史問題です。戦国時代、東日本最強の武将と言われたのは本多忠勝ですが、西日本最強と言われたのは誰? ①加藤清正 ②立花宗茂 ③島津義弘 ④長曾我部元親」


 また一斉に答えを書いて、


「では、答えをどうぞ」


 Aチームが①。Bチームが③。たっちゃん達とスフィンクス達は②を選んだ。


「正解は②です。立花宗茂は豊臣秀吉から豪勇鎮西一と称され、本多忠勝と双璧を成す戦国最強の武将です、では問題を続けます」


 司会のお姉さんが、元気よく問題文を読み上げた。


   ◆


 しばらくして、


「一〇問目もCチームDチーム両方正解です! 今まで全問正解! これはどちらが優勝なのか想像できません。と言ってもこれでは勝負がつかないので、ここからは延長戦。早押し問題にします」

「早押し?」


 たっちゃんが問うと、係りの人達がたっちゃん達とスフィンクス達の前に早押しボタンを押した。


 ちなみにAチームとBチームの人達は肩を落として自主退場した。


「それでは皆さん、この問題を先に正解した方が優勝ですよ」


 たっちゃん達と、スフィンクス達の間に緊張が走る。

 司会のお姉さんが、ニヤリと笑った。


「古代インカ帝国初代皇帝の名前は?」


 たっちゃん達の顔が、途端に赤くなってうつむいた。

 ピンポンッ


「これで私の勝利にゃお! マンコ・カパック!」


 会場が凍りついて、それから一気に湧きあがった。


 エジプト風美少女の、突然のエロワード発言に全員大盛り上がりだ。


 スフィンクスは、言ってしまってから顔が耳まで真っ赤になって、口をあわあわさせるがもう遅い。


 司会のお姉さんは大満足顔で、


「大正解! 優勝はDチームです! いやぁ素晴らしい、お姉さん大興奮ですよ。それではスフィンクスさん、今の心境を」


 マイクを向けられたスフィンクスは、ぶるぶると震えてから。


「うわぁああああああああああああああああああああああああああん!」


 頭から湯気を出しながら全力疾走。

 ステージから下りてしまった。


「あ、待ってください、勝利者インタビューが」


 たっちゃん達は大きく嘆息を漏らす。


「結局なんだったの今回?」

「さぁ」

「わけがわからないのですよ」


   ◆


 スフィンクスは一人、顔を両手で覆いながら町を爆走し続けるのだった。


「ひぇええええん、はずかしいよぉ!」

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