第25話 魅惑のクイズクイーン、スフィンクスさん1

『ジャカジャン、それでは皆さん問題です』


 ある日の昼。

 たっちゃん達三人は、リビングのテレビでクイズ番組を、食い入るように見ていた。


 画面の中では綺麗なお姉さんが問題文を読み上げている。


『将棋のカドは全部でいくつ?』

「五つだと思うのですよ?」

「将棋は五角形ですからね」

「何言ってるの二人とも、答えは一〇個だよ」

「「え?」」


 ジークちゃんとヘラちゃんが顔を見合わせると、


『正解は一〇個! 将棋の駒は五角形ですが、立体で上下二つずつあるので合計一〇個なのです!』

「なるほどなのです」

「たっちゃん凄いですね」

「へっへーんだ」

『では次の問題です、スペースシャトルアポロ一三号とジャイアントパンダ。黒い面積が広いのはどっち?』

「パンダさんなのです」

「あっちのが多いじゃん」

「いえ、これはスペースシャトルですね」

「「え?」」


 今度はヘラちゃんとたっちゃんが顔を見合わせた。


『正解はスペースシャトル。問題は面積の比率、ではなく、面積が広い方と聞きました。スペースシャトルとパンダではそもそも体の大きさが違うので当然ですね』


「「ジークちゃんすごーい♪」」

「いえいえそれほどでも」


 ジークちゃんは照れてそっぽを向いた。


   ◆


「今度こそ奴らに勝てるぞ!」


 部屋のリビングで、エキドナはいつものように高らかに叫んだ。


「にゃにゃ、今回はどんな作戦なのにゃ?」

「ヒュドラでも勝てないたっちゃん達とどう戦うも?」

「ふはははは、今回はものすごい特殊能力者を召喚したぞ。いでよスフィンクス!」


 リビングのドアが開き、メガネをかけ、古代エジプトドレスを着た知的美人が姿を現した。

 背が高く、胸も立派で全体的に大人っぽい。


「はっ、ここに控えておりますにゃお」

「にゃ?」


 キマイラは、スフィンクスの頭でぴこぴこ動く猫耳を見つける。そのままじっと見つめた。


「聞いて驚け、なんとこのスフィンクスは、自分が出したクイズを間違えられると一気に戦闘力が上がって敵を倒すのだ!」

「ふっ、筋肉バカ共の英雄ガールズなど、私の明晰な頭脳でイチコロでございますにゃお」


 自信たっぷりに胸の下で腕を組み、それからメガネをくいっとあげた。


「もー、今度は期待できそうだも」

「語尾とか猫耳とかそいつあたしと被ってるにゃ」


 ビシッッ

 ガラスにひびが入る音がした。


「こらキマイラ! お前なんてことを!」


 どさりっ

 人が倒れる音にエキドナが振りかえると。


「うぅぅうううう、どうせ私なんて、私なんて、あんいなキャラ付け猫娘なんだ……メガネに猫耳に猫言葉なんてこんな使い尽くされた古臭いカビの生えたような属性なんてもう流行らないんだ……私なんて死ねばいいんだぁああああ……」

「そんな事ないわよスフィンクスちゃん! 貴方はやればできる子よ!」

「どうしたのにゃ?」

「わたしより落ち込みやすいですも」

「バカ! スフィンクスちゃんは自分のなぞなぞを答えられたという理由だけで自殺するぐらいガラスのハートなのよ!」

「え~、そんなことあるはずがないのにゃ」


 ミノタウロスがキマイラの肩をつっついた。

 ミノタウロスが開いた本のページを一緒に見ると、



 オイディプスがなぞなぞの答えを言うと、正解されたショックでスフィンクスは海に身を投げて自殺した。

 


「メンタル弱過ぎにゃ!」

「こらキマイラ!」

「うえぇええええん! そうです私はメンタルの弱い意気地無しなんですぅ!」


 涙をぼろぼろながしならわんわん泣き叫ぶスフィンクス。


「あー、泣かないでスフィンクスちゃんっ」


 エキドナは彼女の頭とあごの下を高速でなでまわしながら慰め続ける。


「にゃ~、ミノ~、こんなんで大丈夫なのかにゃ?」

「なんだか心配だも」

「うえ~~ん!」

「スフィンクスちゃーん」

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