第20話 お花見後編 怪物ガールズ総攻撃3

 エキドナ、イシュタル、ロキの三人は仲良くすっころぶ。


「え、えと、じゃあフンババちゃん、よろしくね」

「ばおーん」


 長身超乳超尻という究極ダイナマイトボディの美女二人、それも片方はギリシャ系で片方はエキゾチックな中東系で、観客の女性達は鼻息を荒くして見ている。


 ミノタウロスはうわめづかいに、


「あの、フンババちゃんの髪って、凄く綺麗だよね、シャンプーは何を使っているのか知りたいな……それに、すっごく美人さんだし、わたしよりも背が高い分全体的にバランスも取れていてうらやましいなぁ。わたしなんて胸とお尻ばかり大きくて恥ずかしいも」


 実際はミノタウロスの背は高いが、それでも体には不釣り合いな大きさに見えるほど、彼女の乳房は立派だった。


 身長二メートルのフンババは胸のサイズこそ似ているが、驚くほど手足がむちっと、それでいてスラリと長く、モデル体型をさらに強調したようなプロポーションで、胸とのバランスが取れていた。


「ばば、ばおん……」


 フンババが無表情のまま、赤面してうつむいた。

 そして、


「ばおん、ばばおん、ばおばお、ばおーん」

「えぇっ!? そ、そんな事無いも、わたしなんて全然」


 たっちゃん達とエキドナ達は首を傾げる。


「ばおん! ばおばお、ばおーんばおーん! ばおーん! ばおー!」


 フンババが何かを熱弁する。

 ミノタウロスがいよいよ爆発しそうなくらい顔を赤くして、頭から湯気を上げた。


「だめフンババちゃん! はずかしいよぉ、それ以上は言わないでぇ!」

「ば、ばおーん……ばおんっ、ばおばお、ばおーん!」


 ミノタウロスが、ハッとしたようにして顔を上げる。

 顔はりんごちゃんのように赤いが、表情は徐々に落ち着きを取り戻す。

 たっちゃん達とエキドナ達は、頭上に浮かべた疑問符が消えない。

 ミノタウロスは両手を頬に当て、


「本当? 嘘言ってない?」


 すると、無表情棒読み口調のフンババが、笑顔で優しく唇を緩める。


「ばおん」こくり


 ミノタウロスの目に涙が浮かんだ。


「フンババちゃん……うれしいよぉ……」


 ミノタウロスが、フンババの大きくやわらかい胸に身を預ける。

 フンババは優しく抱きとめて、ミノタウロスの頭をなでる。


「ばおーん……」


 そして二人は見つめ合い、その唇が、


「ストォオオオオオオオオオオオオオップ! はい! 次々ぃ!」


 エキドナのカットインで、ミノタウロスとフンババは残念そうな顔でしぶしぶ離れる。

 イシュタルが、


「なんなんですの! さっきからワタクシ達ばかりが酷い目にあっていますわ!」


 ロキが、


「ていうかさぁ、ボク達のほうが数が多い分、王様になる確率は高いけど、命令を聞く確率もボクらのほうが圧倒的に大きいんだよ」

「「あっ!?」」


 エキドナとイシュタルが、そろって声を上げて凍りついた。


「まっ、次は見ててよ、ボクが無能の君達に実力の違いを見せてあげるからさ」


 ロキはぺろっと舌を出してウィンクした。


 四回目。


『王様だーれだ!』

「ボクだね、それじゃあ」


 ロキは透視魔術を使用。

 たっちゃんと、前回自分を殴り飛ばしたヘラちゃんのメモ用紙を透視した。

 たっちゃんが『1』で、ヘラちゃんが『6』のようだ。


「よし、じゃあ一番と六番がキスだ♪」

「えええええええええええ!?」

「何やっているのよロキ!」

「え?」


 たっちゃんと一緒に悲鳴をあげたのは、なんとエキドナだった。

 ロキはまさかと思って見ると、エキドナは確かに『6』と書かれたメモ用紙を持っている。


「じゃ、じゃあヘラクレスのは……」


 ヘラちゃんが用済みになったメモ用紙を置くと、そちらにも『6』と書かれている。

 でもその『6』は、ひげがビシッと真っ直ぐに伸びている。

 対してエキドナの持つ『6』は、ひげがくるんとカールしている。

 ジークちゃんが言う。


「ヘラちゃん、メモ用紙が逆さまですよ、それは『9』ですね」

「あー、本当なのですよ、てっきりわたしも『6』かと」

「ナ、ナンダッテェエエエエ!?」


 凍りつくロキ。


 でもたっちゃんとエキドナはそれどころじゃない。


 周囲からは猛烈なキスコールの大合唱。


 たっちゃんとエキドナは、タコのように赤くなって見つめ合い、唇をキュッと硬くしてしまう。


 でもこれは王様ゲーム。

 今まですっぽんぽんになってしまったミノタウロス。


 ブラとパンツ丸出しで逆立ち腕立て伏せをしたキマイラの手前、自分達はしたくないとは言えない。


 終わらないキスコール。

 止めてくれない仲間達。


「………………っっっっ、や、やるわよ!」

「………………~~~~の、望むところよ!」


 たっちゃんとエキドナの唇が徐々に近づいて、そして、

 

 ちゅっ


 たっちゃんの可愛らしい唇と、エキドナのセクシーな唇が触れ合う。


 周囲が静寂に包まれる。


 優しく、躊躇う様に、決して無理はせず。


 ちゅぱ


 と音を立てて二人の唇が離れる。


 たっちゃんは口を手で押さえて瞳を震わせる。


 エキドナは、


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 急に叫ぶと近くの酒瓶をつかみ一気に飲み干した。


「エキドナ様、そんなに飲んだら体に悪いのにゃ」

「おちつくも」


 仲間の制止も聞かずに一升瓶を飲み干したエキドナは、瓶を投げ捨てると大きく息を吐いた。


「う~……イシュタル、ロキー♪」


 いきなり二人に飛び付いて、エキドナはイシュタルとロキの首に手を回した。


「一緒に飲みましょうよう♪」

「ちょっ、アナタ急にどうしたんですの?」

「気持ち悪いよ」

「え~、別にいいじゃなーい。仲良くしましょうよ~」


 かんぜんに酔っ払い、猫なで声で二人に甘えるエキドナ。

 トップ達が機能しなくなり、人外ガールズは、


「じゃああたしたちも楽しむのにゃ」

「あ、たっちゃん、その卵焼きもらってもいいですかも?」

「う、うんいいけど……」

「ばおーん」

「食べるぴよー♪」

「あはぁん。ジークちゃんセクシーねぇ、お姉さん気に入りましたですわーん❤」

「なっ、やめろこら」

「「ヘラクレス、わたし達とオセロで勝負しよ勝負」」

「負けないのですよ!」


 こうして、英雄ガールズ達と人外ガールズ達のお花見は続いた。


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