第17話 お花見中編 ぴよピヨ 鳥娘はお好きですか?4
「あ、あなたは!?」
「知ってるのヘラちゃん?」
「ええ、気を付けてくださいたっちゃん、あいつは……」
ミニスカートにチビTを着たセイレーンは、腰と頭に手を当て、セクシーポーズをしながら豊かな胸を揺らした。
「あは~ん、わたくしの名前はセイレーンですわー♪ わたくしの歌声で、みなさんをメロメロにしてさしあげますわーん❤」
セイレーンの甘い声に、町の男性陣も大興奮だ。
「またきれいなねーちゃんが来たぞ!」
「今日はなんていい日なんだー!」
「やれやれー!」
男性陣の要望に、セイレーンは胸の下で腕を組み、身を震わせた。
「あ~ん❤ じゃあみんなの期待に応えて、うたっちゃいますわぁ❤」
『いえぇーい!』
セイレーンの美声が、お花見会場を満たす。
ヘラちゃんは慌てて耳を塞いだ。
町の人達は老若男女問わず誰もがセイレーンの歌声に魅了された。
温かくて美しい音色が脳の中で多幸感を生みだす。
天へといざなわれるような心地よさと、熱い興奮が体の中をかけめぐる。
万民が全てを忘れて快楽に身をゆだねた。
セイレーンの歌声に比べれば酒も食事も睡眠も性行為も全てがちりあくたに等しい。
今、お花見会場にいる全ての人は人生の絶頂を迎えていた。
「うわっ、みんなが!? なによこれ!?」
たっちゃんは辺りの人々を見回し驚く。
誰もがトロけきった顔でセイレーンを見つめ、全身を弛緩させている。
まるで酒に酔いすぎて頭がパーになったようにも見えた。
「ふはははは、これぞセイレーンの歌の魔力! この世に存在するいかなる生物も、セイレーンの歌声には逆らえないのだ!」
「ぐぬぬ~」
たっちゃんはエキドナを睨みつけるが、エキドナはちっとも怖くなかった。
「お前の仲間をみてみろ!」
「え? って、ああああああああああああああ!?」
見れば、ヘラちゃんとジークちゃんは膝を折り、アイドルを見るファンの目でセイレーンの歌にうっとりしている。
「どうしちゃったのよ二人とも! 神話最強の英雄が情けない!」
「はーはっはっはっ! バカ者めぇ! セイレーンの歌声はギリシャ神話の英雄達をも虜にしたことを知らないのか! 今だ! 全員でヤマトタケルを袋叩きにするのだ!」
「いい歌声だにゃ~」
「ステキなメロディーだも~」
「癒されるぴよ~」
「いぎゃあああああああああああ! モンスターにまで有効だったー!」
「ちょっとあんた」
「何よもう、こっちは忙しいんだから! あ……」
たっちゃんと向き合って、エキドナは呆然とする。
何度もたっちゃんと、ヘラちゃん達と、ミノタウロス達を見比べる。
今戦闘可能なのは、エキドナとたっちゃんの二人だけだ。
「えっと、その、ほら……」
「にやーり、一体一なら文句ないわよね?」
天叢雲剣を握りしめ、たっちゃんは可愛く笑った。
「いや、ほら、でも私戦闘系じゃないっていうか指揮官だし」
たっちゃんは問答無用で歩み寄って来る。
「せっかくの酒宴を血で染めるのはいかがなものかと」
「だったら新技で片付けてやるわよ! 喰らいなさい! 奥義! 裸王斬!」
たっちゃんの連続斬りがエキドナの全身をなめる。
エキドナの肌を隠す布地を漏れなく切り裂いて、エキドナはすっぽんぽんになってしまう。
「いやぁああああん! だめぇえええええええええええ!」
「あ、エキドナ様まってぇ~ん」
赤面して頭から蒸気を吹き上げながら、エキドナは全力疾走で逃げて行く。
それに気付いて、セイレーンも歌を中断。
正気を取り戻した人外ガールズは一斉に逃げ出した。
「あ、あれ?」
「俺達は一体?」
町の人達も元に戻って、みんな狐につままれたような顔をした。
「やれやれ、今回はたっちゃんに助けられてしまいましたね」
「まったくなのですよ」
ジークちゃんとヘラちゃんにも認められて、たっちゃんは笑顔でピースサインをする。
「えへへー、ぶいっ♪」
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