第15話 お花見中編  ぴよピヨ 鳥娘はお好きですか?2


「頂きますピヨ♪」


 突然ハーピーが音速化。

 重箱のおいなりさんやのりまき。

 卵焼きやハム、きんぴらごぼう。

 そしてからあげや野菜炒めをついばんでいく。

 美少女らしい小さなお口なのに、その口に食べ物のほうから飛びこんで行っているようにも見える。

 みるみる無くなって行くお弁当。

 町の人達は、


「いいたべっぷりねぇ」


 と、やはりのんきだった。

 たっちゃんが慌てて悲鳴をあげる。


「あわわわ、これじゃマスターの分がなくなっちゃうよ!」

「マスターに食べていただきたくて一生けん命作ったのに! 成敗!」


 ジークちゃんの拳がハーピーに襲い掛かった。


「ぴよーっと」


 でも寸前でハーピーが飛翔。

 ジークちゃんの拳は空ぶった。


「くっ、空の敵には攻撃できません、何か投げる物は」


 周囲を見渡すが、投擲武器にできそうなものはない。

 エキドナが得意げに高笑う。


「はーはっはっはっ、どうだジークフリートよ! 空の敵は攻撃できまい。おとなしく降参して」


 がしっ

 ジークちゃんの手が、エキドナの肩をつかむ。


「投げる物あった」

「え?」

「はぁあああああああああああああああああ!」


 ジークちゃんが、エキドナをたかだかと持ち上げる、そして、


「え!? あ! ちょっ!? 待!」

「でりゃああああああああああああああああああああああああ!」

「あーれー!」


 エキドナがハーピー目がけてカッ飛んで行く。

 それも放物線ではなく、直線を描いてだ。


「ハーピーよけてぇええええ!」

「エエエエエエエエエエエエエエキドナさまぁ! ぴよぉおおおおお!」


 ハーピーとエキドナは正面衝突。

 墜落する二人へヘラちゃんが、


「お弁当の上に落ちて来るんじゃ――ないですよ!」


 硬く握った拳が二人をまとめて打ち抜いた。


「ぐえっ!」

「ぴよっ!」


 ハーピーとエキドナは仲良く敷物の外へと弾き飛ばされてしまった。

 地面に尻もちをつき、また二人は悲鳴を上げる。


「ぐ~、おのれおのれ~、キマイラ! ミノタウロス!」

「はいにゃ♪」

「もーっ」


 キマイラの手首の白いシュシュから鋼の刃が伸びる。

 ミノタウロスの手に、巨大なバトルアックスが握られる。

 英雄ガールズ。

 人外ガールズ。

 互いが睨み合う一触即発の中。


「あんたら何怖い顔してんのよ」

「今日はお花見なんだから」

「楽しくやりましょうよう」


 町のお姉さんおばちゃんたちに諌められる。


「いや、でもあいつら、む~」

「仕方ない、酒宴を血で汚すのも気が引ける。エキドナ、今日は血の流れない方法で勝負をしよう」


 ジークの提案に、エキドナは額に青筋を浮かべる。


「そんな方法があるか!」

「そんなら芸で対決しなよ」


 誰かが言って、みんな


『そうだそうだ』


 と同調する。

 本人達にはあまり自覚が無いが、たっちゃん達もエキドナ達も美女美少女揃いだ。

 花見で気分が高揚している連中が調子に乗って騒ぐのも無理は無い。

 みんなが芸で対決するようコールを送って来る。

 たっちゃん達もエキドナ達も少し困った顔になる。

 ジークちゃんも、何かスポーツ的な競技で決着をつけるつもりだった。

 しかし、とうとうみんなの期待に英雄も怪物を押し切られる。


「あーもーわかったわよ!」

「こうなれば、貴様ら相手に芸で勝ってくれるわ!」


 英雄ガールズVS人外ガールズ


「一番キマイラ行くですにゃ! といっても実はわたし何も芸がないのにゃ~。お手とかおかわり以外なら……そうだにゃ♪」


 キマイラはぽんと手を叩く。


「体がやわらかいにゃ♪」


 キマイラは手を使わずにY字バランス。

 そのまま足を首の後ろにひっかけてしまった。

 ミニスカートなので当然パンツは丸見えだが本人は気付いていない。


「おおおおおおおおお!」

「すげぇええ!」


 途端に歓声が起こった。

 それを見て、英雄ガールズからはヘラちゃんが進み出る。


「二番、ヘラちゃんが行くのですよ!」


 ヘラちゃんは余った敷物を近くのベンチに被せた。


「これからこのベンチを一瞬で消して御覧にいれるのですよ」

「おー」

「手品か」

「がんばれおちびちゃーん」


 町の人達の声援の中、ヘラちゃんは敷物をかぶせたベンチに触れる。


「い、いくのですよ」


 緊張した面持ちで、ヘラちゃんは、


「ワン、ツー、スリー!」


一気に敷物をたたんだ。

メキメキバキグシャボキグシャメリゴキッ!

 まるで中には何も無いかのように畳みこまれる敷物。

 明らかに不穏の音がしているし、畳んだ敷物の隙間から木屑が漏れているが、町の人は誰も気づかない。


「わーすごい!」

「本当にベンチが消えたわ!」

「イリュージョンね!」

「いやぁ、それほどでもないのですよぉ」


 照れながら頭をかくヘラちゃん。

 たっちゃんとジークちゃんだけが固唾を吞みこんだ。


「いやすごいっちゃすごいけど」

「完全に女子力で負けてますね」


 たっちゃんとジークちゃんの顔を引きつる。


「よーし、では次! 行けミノタウロス!」

「も!? わたしですかも!?」

「当たり前だ! さぁ行け! そのメガネがあれば勇気一〇〇倍! お前がもうひきこもりではないことを見せつけるのだ!」


 ミノタウロスは物凄く困った顔になる。

 両手の人差し指を突き合わせる。

 さらに目を泳がせる。

 もう誰がどう見てもいっぱいいっぱいだ。

 それでも、当たりをきょろきょろと見回してヒントを探した。

 すると、


「あ、そのテニスボール貸してほしいも」

「これ?」

「別にいいわよ」

「ありがとうも」


 近くの人からテニスボールを借りると、ミノタウロスはグラビアモデルのようにして敷物の上に横たわった。


 スイカ同然の大きさの超乳を持つミノタウロスが横を向いて寝転がると、必然的にみごとなおっぱいが重なりあう。


 重力に合わせてやわらかく潰れる様子は、服の上からでも確認できた。

 おっぱいが重なりだるまみたくなっている上にテニスボールを乗せて、ミノタウロスははずかしそうに頬を染めて一言。


「か、かがみもち、だも……」


『ふぉおオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおふぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいえぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええす!!!!!!!!!!』

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