第14話 お花見中編 ぴよピヨ 鳥娘はお好きですか?1
「イェーイ! みんな今日は楽しもう!」
『おー!』
お花見当日。
満開の桜の木の下で、たっちゃんの周りで商店街のオバチャン達が盃を手に盛り上がる。
栄有町栄有公園には花見のスペースがあり、そこには二〇〇本以上の桜の木が植えられている。
毎年桜の花を咲かせては町の人達が集まり、花見を楽しんでいる名スポットというわけだ。
今日も商店街の人を含め、多くの人でにぎわい、普段はサラリーマンの男性も、今ばかりは大威張りで真昼間からビールを飲める。
たっちゃんは、商店街の人からもらった大量の食材で作った大量のお弁当を広げてご満悦だ。
「まったく、たっちゃんは能天気ですねぇ、もしもエキドナ達が襲い掛かってきたらと思えば、我々は警備役についたほうが」
「まぁまぁジークちゃん、そんな硬いこと言わないでぇ。それにマスターの日頃の疲れをいやしてあげるチャンスだし、ね」
たっちゃんに言われ、ジークちゃんはハタとする。
「そ、それもそうですね、それでは……って、マスターは?」
「あれ? さっきまでそこにいたのに。マスター、一緒に遊ぼうよう」
重箱のおいなりさんを食べるヘラちゃんが、
「もぐもぐ、ましゅたーなら、もぐもぐ、商店街のおじさんたちに連れて行かれたのですよ」
「「な、ナンダッテー!?」」
ガビーン、とたっちゃんジークちゃんの二人が膝を折る。
「いいもん、こっちはこっちで楽しむから!」
「うぅ、マ、マスター……」
◆
ところかわって、
「く、あいつらめぇ、楽しそうにしおって~」
歯ぎしりをするエキドナ。
横ではキマイラとミノタウロスが指をくわえている。
「あの重箱弁当おいしそうだにゃ~」
「もー……」
「エキドナ様~、キマイラ達もお花見したいのにゃ~」
猫なで声をするキマイラに、エキドナの視線が突き刺さる。
「何を言うかキマイラ! 我々はこの八百万の神々が住み、もっとも神の力が強い龍の形をする国日本を滅ぼす為にやってきたいわば魔王軍! 花見などしていられるかぁ!」
「ごめんだにゃ~」
しゅん、としてしまうキマイラ。
エキドナはその姿にちょっと心を痛め、唇を噛んでから気を取り直す。
「さぁ行くぞ!」
◆
「おいお前達!」
「ん?」
たっちゃん達と、商店街のお姉さんおばちゃん達が一斉に顔を上げる。
目の前には蛇柄のドレスを着た女性。
猫耳にドラゴンの羽をつけた少女。
メガネをかけた、スイカのように大きな胸の超乳少女。
異様な取り合わせに、誰もが頭上に疑問符を浮かべた。
彼女達を知るたっちゃん達だけが立ち上がる。
「あっ、あんたらまた来たわね!」
「勝負なら受けて立つぞ!」
「また帰り討ちなのですよ!」
だがエキドナも負けない。
「ふん、いつまでそんな口が聞けると思うなよ! 今回連れて来た怪物ガールはこいつだぁ!」
ピィーーーー
「これは、笛?」
たっちゃん達が頭上を見上げると、まるで笛の音色のような音を耳が拾う。
ジークちゃんが気付く。
「これは笛ではありません、鳥の鳴き声です」
「まさかっ!?」
ヘラちゃんが声を上げると、それは現れた。
空から巨大な影が落ちてくる。
ソレは大きな背中の翼をはばたき、減速しながらホバリング。
突風でたっちゃんは、ミニスカートがめくれないよう慌てて押さえる。
ソレがたっちゃん達の目の前に姿を現した。
その姿に、たっちゃんとジークちゃんが目を見張る。
「ブルマ?」
「体操着?」
「にひ、ハーピーでーす♪ ぴよぴよ♪」
背中から翼を生やしたブルマ少女が、裸足でふわりと敷物の上に着地した。
商店街のお姉さんやオバチャンたちは、
「あらこの子可愛いわね」
「羽が生えているなんて変わった子ねぇ」
などとのんきに言っている。
「お前は、ハーピー! さっさと帰るのですよ! フー!」
急にヘラちゃんが、怒った猫のように威嚇する。
「急にどしたのヘラちゃん?」
「たっちゃん! ジークちゃん! いいから早くこいつを追いだすのですよ!」
必死なヘラちゃんの意図が、たっちゃんとジークちゃんはいまいち理解できない。
「えー、でもハーピーってただの鳥人間でしょ?」
「戦闘力は低く、我々が慌てるような相手では」
「そうではありません! ハーピーはただの鳥人間ではなく、人の食事時に現れて食事を食い散らかすという特性があるのです!」
「「え?」」
ハーピーの目が、キラリーンと光る。
「頂きますピヨ♪」
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