第13話 お花見前編 超絶可愛い双子姉妹 キュートなわんちゃんオルトロス3
ミノタウロスがたっちゃんにつかみかかり、二人はリング中央で組み合うプロレスラーのように手を合わせて力比べを始めた。
「うぉっ、なにこいつ強い!?」
「もー、力では負けないもっ」
たっちゃんの腕っぷしは日本神話最強だが、ギリシャ神話最強の獣人ミノタウロスも筋力一点では負けていない。
「それで、私の相手はまた貴女ですか?」
ジークちゃんの冷たい視線の先で、キマイラがセクシーな雌豹のポーズで臨戦態勢を取っている。
ミニスカートなので、うしろから見るとショーツがモロ見えだろう。
商店街のオヤジ達が無駄に盛り上がっている。
「にゃにゃーん♪ この前の借りを返してやる、メェ~!」
キマイラがヤギのような突進力でスタートダッシュをキメる。
「またゴートヘッドですか。私に頭突きは」
キマイラの体が落ちて、ジークちゃんの股下をくぐる。
「何!?」
背後は回られて、ジークちゃんは奥歯を噛んだ。
英雄ジークフリート最大の弱点。
神話最強の防御力を誇る彼女だが、実は心臓の裏側だけはドラゴンの血を浴びられず、無敵の防御力を得られなかったのだ。
弱点である背面を取られて、ジークちゃんは急いで振りかえろうとする。
「とったメェ♪」
「しまっ」
キマイラの手が、ジークちゃんの胸に巻かれたチューブトップにかかった。
「え?」
「それだメェ!」
キマイラの手が一気に下ろされる。
「やめろぉおおおおおおおおおおお!」
チューブトップがずり落ちそうになって、ジークちゃんは必死に自分のおっぱいを押さえる。
だがチューブトップは背中の方が伸びて、ブラ紐が商店街の皆様に丸見えだった。
鼻の下を伸ばしたオヤジ共が、
『赤いぞ』
『派手なのつけてるんだねぇ』
とひたすら盛り上がりまくる。
「やめろヤギ娘、見える! 見えてしまう! これ以上は、これ以上はぁ!」
その様子に、エキドナは高笑う。
「はーはっはっはっ、いいざまだな英雄ガールズよ! 行け貴様ら! このまま英雄ガールズ共を一気に」
「「ふにゃぁ~」」
オルトロスが鼻血を流しながら倒れる。
ヘラちゃんは腰に手を当てて、
「わたしと殴り合いで勝てるはずがないのですよ!」
「えぇええええ!?」
エキドナが悲鳴を上げる。
続いて、
「おりゃっ!」
たっちゃんの頭突きが、ミノタウロスの顔面にクリーンヒット。
メガネがどこかへ飛んで行ってしまう。
「あー! あ、あれがないとわたしダメだも~」
途端に目尻を下げて弱気になるミノタウロス。
その場に座り込み、頭を抱えながらメガネを探してしまう。
「めがねめがね~」
「あたしの勝ちね!」
「えぇええええええええええ!?」
さらに続いて、
「そんなに脱ぎたきゃ」
たっちゃんは、ジークちゃんを脱がせようとするキマイラに近づいた。
両手がキマイラのミニスカートにかかり、
「自分で脱げぇえええ!」
手を下ろすと、キマイラのぷりん、としたお尻がさらされた。
どうやらスカートどころかショーツの中に指がかかっていたらしい。
「にゃにゃ~~ん!!? こ、これはダメだメェ!」
ジークちゃんのチューブトップから手を離し、キマイラは涙目になりながら両手で股間を押さえてしゃがみこんでしまう。
ジークちゃんの両目が、ギラリと光った。
「よくも皆様の前で恥ずかしめてくれましたね」
両手の指を鳴らすジークちゃんに、キマイラは悲鳴を上げる。
「まま、待つにゃー! せめてパンツくらいはかせ」
「問答無用!」
ジークちゃんの鉄拳がキマイラの顔面にメガヒット。
キマイラは鼻血を流して目を回しながらエキドナの足下に吹っ飛んだ。
「えぇええええええええええ!?」
さっきまでの優勢が嘘のようだ。
エキドナは開いた口が塞がらず、たっちゃん達三人が並んで近づいてきてようやく我を取り戻す。
「みみ、みんな起きて、退散! 退散よぉ~!」
メガネを見つけたミノタウロス。
目を覚ましたオルトロス。
ショーツとスカートを慌ててはくキマイラ。
全員そろってたっちゃん達に悲鳴を上げてから、死に物狂いで逃げ出した。
「まったく、あの人達はいつもろくな事をしませんね」
まだ恥ずかしさで顔の赤いジークちゃんとは違い、たっちゃんはちょっと上機嫌だ。
「あたしはバトれたからOKかな」
「あう~、オルトロスに気付けないとは、自分が情けないのですよ」
ヘラちゃんは、額に手を当てて気を落とした。
「まぁいいじゃん、それより早く明日のお花見の買い出ししちゃお♪ えーっと今日買うものはと」
たっちゃんがおつかいのメモを出した途端、周辺から商店街のオヤジ達が集まって来る。
手には、自分達の店の商品が乗っている。
「今日はいいものを見せてもらったよ!」
「是非受け取ってくれ!」
「見物料としては安いもんだ!」
「本当!? いいの!? やっりー♪」
「うれしいのですよ♪」
こうして、鼻の下を伸ばし鼻の穴をふくらませたエロオヤジ達の貢ぎ物により、たっちゃん達はタダで目的の倍の食べ物を手に入れたのだった。
ただ、ジークちゃんだけは、
「私のブラ紐を披露することでマスターのお役に立てたのなら本望か、いやでもマスター以外の人にブラ紐を、だがしかし肌は見せてないし、下着はアウトなのかセーフなのか、そもそも騎士がこんな理由で食べ物をもらうなどあっていいのか」
真っ赤な頬に手を当て、いつまでも悩むジークちゃんなのであった。
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