第12話 お花見前編 超絶可愛い双子姉妹 キュートなわんちゃんオルトロス2
そうしてたっちゃん達はオルとロスの母親を探した。
商店街の店に片っ端から顔を出した。
店の親父さんやおばさんにも聞いた。
オルとロスの親である以上、親も西洋人なので目立つはず。
だからすぐに見つかる、とたっちゃんもジークちゃんもヘラちゃんも思っていたが、そんな事は一切なかった。
そのうしろをずっと付けているのは当然、
「エキドナさまぁ。一体今回の目的はなんなのにゃあ?」
「ふふふ、こうしてあいつらは可愛い双子姉妹の親探しに時間を潰し、明日の花見の準備ができないのだ」
「も? そうなるとどうなるも?」
メガネミノタウロスが、不思議そうに小首を傾げた。
「ふふふ、わからないか? 双子にかまって買い物ができない。明日の花見ができない。マスターに怒られる。あいつらは泣く。これであいつらをぎゃふんと言わせることができるのだぁ! はーはっはっはっ!」
「エキドナ様、さすがですにゃあ! にゃーはっはっはっ♪ にゃーはっはっはっ♪」
「…………こんなんであいつらを倒せるのかも?」
ミノタウロスは、一人で肩を落とした。
◆
「う~ん、オルちゃんとロスちゃんのママいないねぇ」
「日本人ばかりです」
たっちゃんはオルを、ジークちゃんはロスの手を握り、姉妹のようにして商店街を練り歩く。
ヘラちゃんが携帯電話で時間を確認する。
「もう随分時間が経ってしまったのです。そうです。そういえば今までママさんの特徴を聞いていませんでしたね」
「え~、そんなの聞かなくったって西洋人探せばいいだけじゃん」
たっちゃんは眉をひそめる。
だがジークちゃんは、
「いえ、一理ありますね。もしも彼女達がハーフで母親が日本人なら我々はとんだピエロです」
「オルちゃんロスちゃん。お二人のママさんは日本人なのですか?」
ヘラちゃんの問いに、オルとロスは可愛らしい顔で首を振る。
「「うーうん、違うよ。ママはねギリシャ人なの♪」」
「そうなんだ、じゃあさ、じゃあさ、他になんか特徴ない。着ている服とか髪型とか」
「「うんとね、うんとね、髪はすっごく長くて、おっぱい大きくて、いつも蛇柄のドレスを着ているの♪」」
たっちゃん達三人の頭の中には、共通の人物が浮かんだ。
「髪が長くて?」
「胸が大きくて?」
「蛇柄のドレスを着ている?」
「「「それって…………」」」
「「あ……」」
オルとロスが『しまった』とばかりに硬直した。
ヘラちゃんが声を上げたのはその時だ。
「あ!? 双子姉妹のオルちゃんとロスちゃん! オルとロス! オルトロス! あなた達はもしかして!」
ヘラちゃんにびしっと指を指されて、オルとロスは手を合わせて二歩下がる。
「双頭犬オルトロス!」
「「なぁっ!?」」
たっちゃんとジークちゃんが驚愕して目を丸くする。
オルとロス。
いや、オルトロスはてへっと舌を出して、帽子を脱いだ。
そこには、可愛らしい犬耳が生えている。
「バレてはしょうがないな!」
物陰からエキドナが登場。
続いて、キマイラとミノタウロスも姿を現した。
「にゃーにゃにゃーん♪ この前の借りを返すのにゃー♪」
「こんどは……まけないも」
たっちゃん達はミノタウロスのメガネを見て、小首を傾げる。
「ねぇあんた、なんでメガネなんてしているのさ?」
「ふふ、これはエキドナ様がくれた勇気の出るメガネだも。これをかけているとどんなヒッキーちゃんでも外に出る勇気が出るんだも!」
スイカのように大きなおっぱいを揺らして、ミノタウロスはただのメガネをくいっと上げた。
「ふーん」
「ふーん」
「ふーん」
たっちゃん、ジークちゃん、ヘラちゃんが疑惑のジト目でエキドナを見る。
エキドナはそっぽを向いて、汗を流しながら口笛を吹いている。
「「ヘラクレスっ。生前はよくも殺してくれたわね、怒っちゃうんだから!」」
可愛く眉をあげるオルトロスに、ヘラちゃんも可愛く頬を膨らませる。
「しょうがないじゃないですか! わたしだって十二の試練でゲリュオスの飼っている牛達を連れて行かないといけなかったのですから!」
「「それにしたって殺すことないでしょ!」」
「音速の壁越えながら噛みかかってこられたら手加減できないじゃないですか! しかもなんだかんで結局わたし噛まれましたし」
「「でも無傷だったじゃないですか!」」
「生涯無傷の鉄壁ボディで悪かったですね!」
「「むむむ~っ」」
「むむむむ~っ」
オルトロスとヘラちゃんは睨み合い、そしてぶつかり合った。
ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか
「「そっちが悪いのそっちが悪いのそっちが悪いのそっちが悪いのぉ!」」
「わたし悪くないもんわたし悪くないもん私わるくないもんわたし悪くないもぉん!」
たがいにぐるぐるパンチでぽかすか殴り合う三人。
商店街のみんなは『かわいいねぇ』と子供の喧嘩をほほえましい顔で見守っていた。
「わたしも行くも!」
ミノタウロスがたっちゃんにつかみかかり、二人はリング中央で組み合うプロレスラーのように手を合わせて力比べを始めた。
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