第8話 いたずらっ子? トリックスターロキちゃん!1


 ある日の朝。


 ジークちゃんは今日も朝風呂に浸かっていた。


 頭から全身にシャワーを浴びて、ジークちゃんの扇情的な体を水滴が流れて行く。


 生前から神の血を受け継いではいたが、まさしく女神の曲線美に溢れたカラダは見事としか言いようがない。


 ギリシャ彫刻も逃げ出すような美と、性欲をかきたてる魅力を共存させた裸身をなで、シャワーを止めた。


「ふー、やはり朝に浴びるシャワーは気持ちがよいですね。目が覚めて頭がスッキリする」


 身を軽く振って水滴を飛ばすと、大きく豊かに成長した胸がやわらかく揺れ、持ち前の弾力で元の形に戻る。


 ハリと弾力溢れる爆乳は、大きさに反して下着も無いのに、見えない何かに支えられているように綺麗な形を保っている。


「では……」


 ジークちゃんはうっとりとした目で湯船を見下ろし、止まる。


「…………」


 周囲に気を配り、まだたっちゃんとヘラちゃんが寝ている事を確認。


「こ、こほん、たまには……いいでしょう」


 自分に言い訳をすると、ジークちゃんは子供のように湯船へダイブ。

 程良く大きな、丸いお尻から湯船に落ちて、一気に浸かった。


「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 湯船に張られていたのは……氷水だった。



「ウップップ」



   ◆


「なんで水なんか入れているのさ」

「私はちゃんとお湯を入れました!」

「いただきますなのです」


 三人で朝ごはん中。やはり話題はジークちゃんの悲鳴だった。

 たっちゃんは目玉焼きにかけるべく醤油さしを手に取った。


「ていうかさぁ普通、足入れた時に気付くよね。足が水に触れただけであんな悲鳴あげたの?」

「う、いや、それは……」


 ジークちゃんは気まずそうに目を逸らした。

 たっちゃんは目玉焼きを口に運んで……渋い顔をした。


「これソースじゃーん……」

「そんなはず……うっ、私がかけたソース、こっちが醤油ですよ」

「からぁーーい! ヘラちゃんの目玉焼き変なのですぅー!」


 ヘラちゃんが口から火を噴いた。

 ジークちゃんが『まさか』とケチャップを指先にとってなめる。


「これは、唐辛子ペースト? なんでこんなものがうちに、買った覚えがありません」

「でも誰がこんなことするのさ。マスター?」

「いえ、マスターはおとといから用事があるとかで家にいません」

「ごくごく うぅ、水吞んでも辛いのですー!」


 ヘラちゃんは台所で、涙目で水を吞んでいた。


「ウププププ」


   ◆


「さーんじーのおーやーつーはだーいふーくだーっと。いただきまーす」


 たっちゃんはリビングで、大きな大福にかじりついて、頭に疑問符を浮かべた。


「あれ? 甘くない? あれ?」


 見ると、大福の中がからっぽで、あんこがはいっていない。


「きき、生地しかないじゃんこれぇ!」


 ガガーン

 と、脳天に雷でも落ちたような顔でショックを受けるたっちゃん。


「だれだー! 誰があたしの大副にこんなことをー!」


 お猿さんのようにきーきー怒る。

 何事かと自分の部屋からでてきたジークちゃんとヘラちゃんは当然知らない。



「あひゃひゃひゃひゃ」



   ◆


 夕方、ヘラちゃんはリビングでテレビゲームをしていた。


「えーっと、今が五時半だから、アニメまであと三〇分はあるですね」


 それから、だいぶゲームをしてから時計を見る。


「あれ? なんでまだ五時半なのですか? ……あっ、この時計止まっているのです! 一体いつから止まっていたんですか! ということは今は!」


 ヘラちゃんは携帯電話を開くと時間は六時一五分、アニメ前半が終わっている。


「うわわわわ! テレビテレビー! え!?」


 ヘラちゃんは、何度もテレビのリモコンでチャンネルを変えようとする。

 しかしテレビ画面はゲーム画面のままだ。


「な、なんで、なんでリモコンが効かないのですか? 壊れちゃったですか?」


 ヘラちゃんはリモコンの重みから、まさかと思ってフタを開く。


「あー、で、電池が入っていない!?」


 昭和のテレビと違って、昨今のテレビはテレビ本体にチャンネルを変えるボタンが無いのが多い。

 こうしてヘラちゃんはお気に入りアニメを見逃した。

 

「うひゃひゃひゃひゃ」

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