第7話 凄いぞ? 偉いぞ? 立派だぞ? 僕らの英雄ガールズ4


 たっちゃんはフンババの胸を見て目を血走らせる。


「でで、デカイ!? この前のミノタウロスもだけど、こいつもめちゃデカイよ!」

「フフン、この子こそ、このゴージャスでエクセレントなイシュタル様に相応しいビッグでエレガントなセクシーメイド! そして最強の英雄ギルガメスとエンキドゥが二人がかりでも倒せなかった、メソポタミア神話最強の大怪物フンババでしてよ! オーホッホッホッホッホッ!」


 英雄ガールズが顔を突き合わせる。


「神話最強っていうと、ヤマタノオロチくらい?」

「テュポンくらい?」

「いえいえ、ニーズヘッグ級かもしれません」

「でも」


 っとたっちゃん、続いてヘラちゃんも愛剣を召喚してフンババに構える。


「そっちが最強の怪物ならこっちは最強の英雄! しかも三人よ!」

「この前同様、かえりうちにしてやるのですよ!」

「さっきはよくも騎士である私を恥ずかしめてくれたな。覚悟!」

「その威勢、どこまで続くかしら、フンババ!」

「ばおーん!」


 巨大メイドが綺麗な顔を無表情のまま、機械的に突進してくる。


「わたしと真っ向勝負なんて甘いのですよ!」


 ヘラちゃんが大剣マランドーズを一気に振り下ろす。


「ばおんっ」


 それを、フンババはあろうことか両手で真剣白刃取りをした。


「なっ!?」


 ヘラちゃんが驚きの声をあげた。

 ギチギチと音を立てて押し合う二人。

 だが体重差の問題か、フンババはマランドーズを真上に持ち上げた。


「ばおーーん!」


 ヘラちゃんの足が地面から離れて大きく投げ飛ばされる。

 弧を描き宙を飛ぶヘラちゃんは姿勢を直して、やわらかく地面に着地。

 入れ替わるようにしてジークちゃんが突撃する。


「ふん、デカブツ相手なら悪龍ファヴニールの時で慣れている!」


 ジークちゃんが連続してバルムンクを振るう。

 その美しく華麗な剣技には誰もが見とれるだろう。

 だがフンババは全ての攻撃を腕と拳でガードする。


「バルムンクが効かない!? この女、何でできている!?」


 フンババのボディブロウ。

 ジークちゃんは反射的にバルムンクでガード。

 顔を苦悶に歪め、地面で靴底を削りながら後方へ飛ばされた。


「つ、強い……」

「おーっし、とうとうあたしの出番ね!」


 鼻息を荒くして天叢雲を振り回すたっちゃん。


「待てたっちゃん、油断は」

「うおりゃあああああああああああああ!」


 意気揚々と飛びかかり、真っ向からフンババと打ち合った。

 ジークちゃん戦の焼き直しのように、たっちゃんの剣技は全てフンババに防がれる。


 ジークちゃんは焦る。


 ――くっ、一体どうすれば……


「加勢するのですたっちゃん」

「あ、待つんだヘラちゃん、作戦を、んぁっ」


 背後から二本の手が伸びて来たのは、その時だった。


「アーラ、ワタクシを忘れてましてぇ?」

「イ、イシュタル!?」


 またイシュタルの卑猥な手が、ジークちゃんの爆乳を揉みしだく。


「や、やめ、そこは……」

「ウフフ、でも本当にアナタ、いい胸しているのねぇ。この量感、やわらかさ、弾力性、どれをとっても一流よ。アナタが乳技を覚えれば落ちない男はいないわぁ」


 イシュタルの手が高速化。

 それでいてジークちゃんの弱い部分を完全に把握しきっている。


「あっ、ああ、やめ……ほんとに……んっ……ちゃうから」

「え? きこえなーい、どうなっちゃうのぉ?」


 チューブトップとブラの中に直接手を入れられ、乳首を指でこりこりとつままれる。

 ジークちゃんの顔の緊張が限界に達する。


「うふふ、バルムンクはもう出しているから、もう変身の衝撃で弾くことはできなくってよ!」

「あ、あ、あ……あぁあああああああぁああぁぁああああああああああああああ!?」


 ジークちゃんの顔が、花弁を散らせるようにして弛緩していく。


「ふっ、北欧神話最強の英雄も意外とあっけな」


 ジークちゃんの全身からマグマのような殺気が湧きおこる。


「え? あれ? ちょちょ、アナタ今、え?」


 振り返ったジークちゃんの殺意に満ちた眼光に、イシュタルは悲鳴をあげてフンババのうしろまで逃げる。


「ひぇえええ! フフフ、フンババ! 早くやっておしまい!」

「二人ともどいてください!」

「「へ?」」


 たっちゃんとヘラちゃんは、ジークちゃんの状態を見て顔を青ざめさせる。


「「どど、どうぞどうぞ!」」


 ジークちゃんは一歩一歩、地響きを起こすような力強い足取りでイシュタルに迫る。


「よくも……よくも騎士の誇りを……戦闘のさなか……」

「行きなさいフンババ!」

「ばおーん!」


 ジークちゃんの目が、ギラリと光る。


「む、胸だけで逝くなんていう恥ずかしめをおおおおおおおおお!」

「ばおん!?」

「はぁああああああああああああああああああああああああああ!」


 裂帛の気合と同時に始まる無限斬撃。


 そのバルムンクの猛攻に、フンババは思わずたじろいだ。


 今まで通り、フンババの皮膚は刃を弾くが、服までは違ったようで、腕の防御をかいくぐり胸にヒットした剣で、メイド服がびりびりに破けてしまった。


 どたぷんっ


「ばお?」


 メイド服から零れ、やわらかく跳ね揺れる超乳。褐色の肌の中央で、コーヒーミルク色の乳首と乳輪が空気にさらされている。


「ば、ばおぉーーーーん!」


 フンババは褐色の肌でもわかるほど頬を染め、自分の胸を抱き隠しながらどこかへと走り去ってしまう。


「ちょっ、フンババ、このワタクシを置いて」

「今度は貴様が相手か?」


 悪鬼のような目で睨んで来るジークちゃんに、だがイシュタルは退かない。


「フッ、ワタシをエキドナと一緒にしないでほしいわね、軍神たるワタクシは自身が最強」


 たっちゃんと、ヘラちゃんがジークちゃんの横に並ぶ。


「え? あの? 三人がかりは正義の味方としてどうかとぉ」

「「「だまれ!!!」」」

「いんぎゃああああああああああああああああああああああ!」


 ドカバキグシャメキ ドカバキグシャメキ ギタギタメタメタズタボローン!


   ◆


 栄有町西部、マンションのとある一室にて、ミイラ状態のイシュタルが一言。


「え、英雄ガールズめぇ~、この借りはきっと返して……ガクッ」


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