第6話 凄いぞ? 偉いぞ? 立派だぞ? 僕らの英雄ガールズ3
「おそらく、日本神話最強の英雄としては大柄な方が見栄えがよかったのでしょう」
図書館の自動ドアをくぐり、たっちゃん達は外へ出た。
ジークちゃんがフォローするも、たっちゃんは機嫌が悪い。
「最初は身長以外はだいたい合っているからいいかと思ったけど、あらためて考えるとなんかすっごくムカついてきた!」
頬を膨らませぷりぷり怒る。
英雄の生まれ変わりであるたっちゃん達には前世の記憶があるため、神話の知識は深い。
当事者なのだから当たり前だ。
だがそれだけに、今まで自分の本を読んだことが無い。
だが昔書いた日記を読むような感覚で、あるいは自分達の事がちゃんと後世に正しく伝わっているのかを知るべく図書館に来たのだが、このザマだ。
「う~、マッチョいや~」
ジークちゃんが、ヘラちゃんの頭をナデナデした。
「我々の価値観は二十一世紀女子なのに、古代英雄男子の人生経験がついて回るのは、確かにショックな時もありますね」
「あー、わかるわぁ、あたし悪は滅すべしと思って幼稚園の時、ガキ大将が遊んでいる草むらに火をつけたもん」
「貴女は何をやっているんですか!?」
「いや火攻めのつもりだったんだけど、幼稚園の時って常識が身についてないから古代の常識で倒しちゃったよ」
遠い日をなつかしむようにして目を細めるたっちゃん。
ジークちゃんとヘラちゃんは、そろってまた溜息をつきつつ、実は二人も似たような経験がある。
その時。
「オーホッホッホッホッホッ!」
「何この頭の悪そうな声!?」
驚くたっちゃんの前に、露出狂ギリギリの女が現れた。
「ワタクシの名前はイシュタル! メソポタミア神話の性愛と戦いの女神ですわ!」
乳首と乳輪以外ほぼ丸見えの爆乳。
スカートのスリットから見えるムチっとしたふともも。
歩く公然わいせつに、たっちゃん達は開いた口が塞がらない。
「何あれ……ジークちゃんの知り合い?」
「わ、私があんなものと関係があるはずがないでしょう!」
「えー、だってジークちゃんいっつもホットパンツにチューブトップだしー。谷間とおへそと太もも丸出しの人に言われても説得力が」
「違う、私は最強の守備力を持つが服は破れてしまうので肌で攻撃を受け止められるよう、あえて肌を出しているのだ!」
「下着だってハイレグやTバックばっかじゃーん」
「ホットパンツでも隙間から見えないように配慮しているのだ!」
「たっちゃんたっちゃん、Tバックってなんなのですか?」
「ほら、あのうしろが紐になってる」
「ワタクシを無視するんじゃありません!」
歯を剥き出しにして怒るイシュタル。
たっちゃんは得意げにジークちゃんのうしろへ回り、彼女の胸を下からわしづかむ。
「うっさい露出狂! おっぱいの大きさも露出度もうちのジークちゃんが負けないぞ!」
「ひゃんっ、こらたっちゃん、貴女はどこをつかんで」
「ズルイのですたっちゃん。ヘラちゃんもぽよんぽよんしたいです」
「よしじゃあ二人で揉もう」
「はい!」
「やめろぉおおおおお!」
「いい加減にしろぉおおおおおおおおおお!」
お嬢様のような気品を捨て去り、乱暴な口調でイシュタルは激昂する。
「このメソポタミア神話の軍神イシュタルをさしおいて盛り上がってどういうつもりですの! だいいち!」
イシュタルは鬼の形相でジークちゃんに駆け寄ると、両手を突き出す。
「おっぱいの揉み方は……こうですわ」
途端に艶然と笑い、甘い声でささやくイシュタル。
女神の両手がジークちゃんのチューブトップの中に入り、ジークの胸を直揉みする。
「ふあぁ……あっ」
ジークちゃんの頬が染まり、口からとろけるような声が漏れる。
ドラゴンの血を浴び皮膚は最強の強度を誇るも、攻撃以外には無力だった。
やわらかく弾力溢れるジークちゃんの爆乳を手の中で千変万化させ、時には激しく時には優しくでも常に繊細な手付きでジークちゃんの胸をシェイクする。
「すごっ、流石性愛の神!?」
「いや、あ……らめぇ……」
「うふふ、えっちでワタクシに勝てる者などこの世にいませんわ、さぁ、さっさと逝ってしまいなさい!」
凶悪な笑みで両手を暴走させるイシュタル。
耳まで真っ赤にしたジークちゃんの顔が限界まで緊張して、
「いい加減にしろぉおおおおお! バルムンク!」
溢れだす光の粒子が衝撃波となり、たっちゃん、ヘラちゃん、イシュタルの三人をまとめて弾き飛ばした。
小さな悲鳴をあげて転ぶ三人の前で、ジークちゃんが柳眉を逆立てる。
「いいでしょう女神イシュタル……主神オーディンの末裔たるこのジークフリートが」
羞恥で真っ赤に染まる顔で、バルムンクを天高く掲げる。
「真っ二つにしてあげます!」
「アラ怖い、でも」
イシュタルは一度に一〇メートルも後ろへ跳躍。
「ワタクシも勝算があるから来たのですわ! フンババ!」
図書館の横に停めてあった大型トラック。
その影から、巨大な人影が姿を現した。
「ばおーん!」
褐色の肌をした女性が、棒読み口調で現れた。
二メートルはあろうかという長身。
ボリューム溢れる黒髪は腰まで伸びていて、そして何故か、メイド服姿だった。
ヘラちゃんはフンババを大きく見上げて目を丸くする。
「おっきぃ……」
たっちゃんはフンババの胸を見て目を血走らせる。
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