第4話 凄いぞ? 偉いぞ? 立派だぞ? 僕らの英雄ガールズ1
我らが英雄ガールズ。
ヤマトタケルの生まれ変わりのたっちゃん。
ジークフリートの生まれ変わりのジークちゃん。
ヘラクレスの生まれ変わりのヘラちゃん。
この三人はここ、栄有町東側のマンションに住んでいる。
そして町の西側のとあるマンションでは……
「くやしぃ! なんなのよあの小娘達はぁ!」
エキドナは両手を握りしめ、リビングの天井に憎き三人の顔を浮かべる。
「ムキー、次こそは絶対の絶対に」
「にゃにゃー、エキドナ様ぁ!」
キマイラの登場に、エキドナは悪役顔になる。
「ふんっ、どうしたキマイラ?」
「ミノっちが部屋から出てこにゃいにゃー」
「えぇええぇええええええ!?」
威厳も無く、素っ頓狂な声を上げてエキドナは走った。
『ミノちゃんのおへや』
とエキドナが描いたプレートが紐でドアにかけられている。
それがひっくり返されて、ミノタウロスがマジックで書いた『ミノタウロスのめいきゅう』という方が表になっている。
「のわぁあああああああああ! せっかく説得に三カ月もかかってやっとの思いで出撃したのにぃいいいいいいいい!」
「正直、ミノっちがしっかりしてればあたしらすぐあいつら襲えましたね」
たっちゃんが待たされた理由は、ミノタウロスにあるようだ。
「う~、だからわたしの事は放っておいてください! どうせわたしなんて役に立たない、迷宮の奥に閉じこもっているのがお似合いの陰険野郎なんですぅ……」
「やべ」
「ちょっとキマイラ! 余計傷つけてどうするのよ!」
「だだ、だってぇ……」
その時、エキドナの背後に派手な気配が近づいた。
「オーホッホッホッ! 無様ねエキドナ!」
声の主には、すぐ思い至った。
「この無駄に自信過剰で不遜で耳につく声はまさか!?」
冗談みたいな黒髪縦ロール頭で、白いドレス姿の女がアゴに手の甲を当てて高笑っている。
「イシュタル!?」
エキドナもドレス姿だが、エキドナ以上に豊満な胸でありながらさらに露出度が高いドレスのせいで色々とギリギリ、むしろスレスレだ。
大きくスリットの入ったスカートから生足を見せて、イシュタルは艶然とほほ笑む。
「小娘三人程度も始末できないなんて、ギリシャ神話の底が知れるわね」
「なんですってぇ~」
エキドナは歯を食いしばって、イシュタルと睨み合う。
「まぁ、今度はこのメソポタミア神話の女神、イシュタルに任せてもらおうかしら、怪物の女王様?」
イシュタルは、あくまで挑発的な態度だ。
「ぐぐぐ、ふんっ、言っておくが連中は手ごわいぞ! 何せ仮にも我が精鋭たるキマイラとミノタウロスを簡単にあっさりけちょんけちょんにのしたのだ。そう簡単に」
「簡単にあっさりけちょんけちょん……やっぱりわたしなんてー! うえーん!」
部屋の中から聞こえる喚き声。
エキドナは慌てて部屋のドアを叩く。
「あー違うのミノちゃん。今のはこの高慢ちきなたかびー女を攻めるのにあいつらを持ち上げる必要が合ってそれで誇張表現として、機嫌直してミノちゃーん!」
「そうにゃ、出て来るにゃミノっちぃ!」
「うえーん!」
三人のやり取りを、イシュタルは鼻で笑った。
「キマイラにミノタウロス? 我がしもべをそんな雑魚と一緒にしないで頂きたいものですわね」
エキドナとキマイラは、自分達に落ちた影に気付いた。
ふと天井を見上げて、目をまんまるに開いた。
イシュタルは妖しくほほ笑む。
「英雄ガールズ、貴女方の命運もここまででしてよ、オーホッホッホッ!」
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