第3話 登場! 勇気と正義だ英雄ガールズ3


「「「ひえぇえええ!」」」


 エキドナ達は悲鳴を上げて抱き合った。


 各神話を代表する世界最強の聖魔剣と妖精剣と破壊神剣。


 その三本の輝きに恐怖で腰が震える。


 ヤマタノオロチの体内から出て来た魔剣でありながらアマテラスに捧げられ、後に地上に与えられた魔剣にして聖剣、天叢雲剣。


 ドラゴン、ファブニールを一撃で突き殺したニーベルング族の至宝、バルムンク。


 エクスカリバーすら効かぬ巨人族のリア王を斬り殺した破壊神剣、マランドーズ。

 その三本がエキドナ達を睨んでいた。


「たた、戦いは勢いだ大事だにゃー! ゴートヘッド!」


 キマイラがジークちゃんのお腹目がけて突進。

 頭を打って脳しんとうを起こした。


「あにゃにゃにゃにゃ~」

「ん? それで終わりか?」

「にゃにゃー!? ドラゴンブレス!」


 全身をあますところなく業火に吞みこまれて、だがジークちゃんは無傷だった。

 服が少しこげているが、それぐらいだ。


「……で?」

「にゃー! レオンクロー!」


 両手首のシュシュからサーベルのような爪が五本ずつ飛び出して、クローとして装備しジークに突き出す。


「フンッ!」


 バルムンクの閃きが、キマイラのツメを切断。

 細切れになった破片がアスファルトに落ちて金属音を鳴らした。


「にゃにゃーん!?」


 キマイラは、ハンマーで頭を殴られたような顔で固まった。


「こここ、こうなったらもうヤケだもー!」


 ミノタウロスが巨大なバトルアックスをヘラクレス目がけて振り下ろす。

 長身のミノタウロスがちっちゃなヘラクレスに襲い掛かる様はどう見てもいじめだ。

 しかし、自慢のブル・アックスは水平に構えられたマランドーズに止められる。


「も!?」


 大斧と大剣が鍔ぜりあう。

 火花を上げながらぶつかりあう得物の下で、ヘラちゃんの足元にヒビが入る。


「もー、これはいけるかもしれないも」

「っ、ヘラちゃん負けないのですよ!」

「もも!?」


 かつて、巨人アトラスのかわりに天界を支えた超常の筋力が爆発。

 ブル・アックスが弾かれて、勢い余りミノタウロスの手から飛んでった。


「もー!?」

「えいっ!」


 大剣を小枝のように振り、白刃のラインがミノタウロスを襲う。


 ぱっちーん。


 ミノタウロスの服全体に切れ込みを入れると、とうとう胸とお尻の圧力に耐え切れなくなった服と下着が弾け跳んでしまった。


 一糸まとわぬ全裸になったミノタウロスは、顔どころか全身を真っ赤にして震えた。


「うえーん、やっぱり迷宮にひきこもるもー!」


 両手で局部と胸を隠しながら背を向けてエキドナもとへ逃げるミノタウロス。

 といっても胸が大き過ぎてほとんど隠せてない。

 彼女が走ると、形の良い肉厚なヒップがゼリーのように揺れている。


「え? あ! ちょっ!?」


 泣きながら帰って来る二人に、エキドナは戸惑い慌てふためいた。


「何をやっているの貴女たちは! まだ負けたわけじゃ」

「それでぇ? あたしの相手はあんたがやってくれるの?」

「はえ?」


 エキドナが振りかえる。


 目の前には、地獄の閻魔も逃げ出すような顔で嬉々として天叢雲を振りあげるたっちゃんが立っていた。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ! ばけものぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「誰が化物じゃあああああああああああああああああああ!」


 たっちゃんの連続斬撃が吼える。


 エキドナのドレスは、肩ひもが切れるとあっさり落ちた。


 ノーパンだったらしく、ミノタウロス同様エキドナも全裸になった。


「いやぁん、見ちゃだめぇ!」


 エキドナは最初の悪役風口調はどこへやら、恥ずかしそうに手で体を隠した。

 周囲に人はいないが、もしも誰かが来たらたまったものではない。


「カーッカッカッカッ。さぁいくわよエキドナ。こんどはこのタケル様のスーパーミラクルデンジャラスギャラクティカ必殺技で!」

「いやでもその私は司令塔であって非戦闘員というか」


 エキドナは全身に汗を流し、全身を使ったジェスチャーと身ぶり手ぶりで必死に無力をアピール。


 体は隠さなくていいのだろうか。


「問答無用! 罪を憎んで人を怨む! 覚悟ぉ!」

「「「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」」」


 エキドナ、キマイラ、ミノタウロスの三人は死に物狂いで逃亡。

 みるみるその背は小さくなっていく。


「待てやゴルァッ! まだ戦いは終わってないわよ!」


 たっちゃんは歯を剥き出しにして地団太を踏んだ。


「もどってこおおおおおおおおおおおおおおい!」

「たっちゃんたっちゃん、逃げる人を追いかけたらかわいそうなのですよ」

「なんだとぉ!」


 たっちゃんの怒りはまだ収まらないようだ。


「それとジークちゃん、ジークちゃん」

「む、なんですかヘラちゃん?」


 ジークちゃんが見下ろすと、ヘラちゃんがミノタウロスのブル・アックスをつまみあげている。


「これ、返してあげたほうがいいよね?」

「ええ、まぁそれは……」

「うん」


 ヘラちゃんは投擲体制に入る。


「ミノタウロスちゃん、これ、わすれも、のっ!」


 ブル・アックスが、音の壁を突き破りながらカッ飛んで行く。

 エキドナ達同様、見えなくなってしまうが……


「「「いぎゃああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」」」


 断末魔の叫び声のような悲鳴が、遥か彼方から聞こえて来た。


「あれ? ジークちゃん、今のは何?」

「え、えーっとぉ……あはは」


 ジークちゃんは普段の涼やかな口元をひくつかせ、指で頬をかいた。


「って、あたし結局エキドナの服斬っただけじゃん! ずるいずるいずるい! あたしだって鍔ぜりあいとか武器破壊とかしたかったのにぃ!」


 たっちゃんは、アスファルトに寝転がって手足をバタつかせる。


「まぁまぁたっちゃん」

「奴らもいずれはそのうちきっとまた来るかもしれないし」

「う~~っ」


 跳ね起きて、エキドナ達が逃げた方へ、


「覚えてろよ! ばかぁああああああああああああああああ!」

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