第4話
マオとアンリに店の前で待っているように言われた魔王は、店先で雨やどりをしていた。
「人間界の魔王……あの小娘が、どんな力を隠しているのか分からぬが……余は絶対に屈しぬぞ……」
だが、二日間何も食べていない状態で一人で戦闘を挑むなど無謀だ。
「余は賢いからな。万全の状態で挑み、勝利を掴んでやる!」
ブツブツと独り言を言うびしょ濡れのオジサンを見た通りすがりの人間たちは逃げるように走って行った。
「マオウさーん、ハンバーガー食べれるっけ?聞いてなくてごめんよ」
アンリがハンバーガーを手渡してくれた。
「人間の……食べ物など……余は……」
「まぁまぁ、マオウさんがシャチョーかコウチョーか知らないけどさ。どんなに偉い人でもお腹は減るって」
「む……」
たしかにお腹が空いている。それに、包み紙の中からする匂いは……。ごくりと唾を飲み込み、袋を破く。
「あ、マオウさんって袋破く派?」
「ウケんね。そんな食べ方する人初めて見たわ」
「うちも」
「むぐっ、はむっ……」
「あれっ」
マオとアンリが顔を見合わせる。
「「食べんの早っ!」」
「……ぬ」
「え?」
「足りぬ!これをあと百個持ってくるのだ!!!!!」
「そんなお金ないよー」
「ってかそんなに気に入ったんだ。良かった」
二日間の飢えはハンバーガー一個は満ちることはなかったが、やっと食べ物にありつけたことはたしかに彼の気持ちを落ち着かせた。
「……ふん、礼を言ってやろう。魔王直々の礼など、貴様らには勿体ないくらいだが」
「でもさー、普通のハンバーガーってたしかにめちゃくちゃ美味いよね」
「たまに食べたくなるよねー」
「貴様らぁ!聞いているのか!!」
「で、マオウさんの家ってどこ?シャチョー?なら大きい家なんでしょ?」
「当然である!余の城は魔界で一番大きい!」
得意げに胸を張る。自身の強い魔力で結界を張って守っていた立派な城。そこから魔界の真っ赤な月を見るのが魔王の夜の日課であった。
「映えスポットじゃん!行ってみたい!」
「うちも行きたいー!」
「バエ?虫一匹入れぬ城だぞ」
「あ、でもマオの家とどっちが大きいかな」
アンリの言葉に固まる。
「マオの家、ここら辺で一番大きいじゃん?」
「あー……まーね。でもうちの部屋は狭いよ。後は父さんが使ってるからー」
「余の城の方が大きいに決まっている!!!」
「わっ、急に大声出さないでよ」
「余をそこに案内するのだ!!!」
自分よりも立派な城を持っている魔王など許せない。そもそも魔王はたった一人でいいのだ。魔王はそう思って、マオの家に着いて行くことにした。
「やっぱホームレスだったんじゃない?」
「うーん、変なの拾っちゃったかもね」
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